第八話 封印の主
門の亀裂から覗く巨大な目。
それは生き物の目ではなかった。
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人間の目とも違う。
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獣の目とも違う。
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例えるなら。
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「闇そのものが目の形をしている」
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そんな存在だった。
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その瞳が庄吉を見つめている。
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いや。
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見透かしている。
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身体ではない。
心の奥まで。
魂の底まで。
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全てを覗き込まれている感覚。
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庄吉は刀を構えた。
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武士として。
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恐怖に屈する訳にはいかない。
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だが身体は正直だった。
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足が震える。
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額から汗が流れる。
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本能が理解していた。
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目の前にいるものは。
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人間が戦う相手ではない。
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その時だった。
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少女――さくらが庄吉の前へ立つ。
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小さな身体を広げるように。
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まるで守ろうとするかのように。
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「見ないで!」
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彼女が叫ぶ。
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その瞬間。
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巨大な目が閉じた。
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地下神殿の空気がわずかに軽くなる。
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庄吉はようやく息を吐いた。
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「今のは……何だ」
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さくらは震えていた。
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「名前を知らない」
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「誰も知らない」
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「でも」
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彼女は門を見る。
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「みんな、あれを神様だと思った」
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庄吉は眉をひそめる。
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「神ではない」
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即座に答えた。
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さくらも頷く。
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「うん」
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「神様じゃない」
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「でもみんな信じた」
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「だから始まった」
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生贄。
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供物帳。
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失踪者。
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全て。
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庄吉は静かに理解し始めていた。
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最初から神など存在しなかった。
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ただ恐怖があった。
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山崩れ。
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地震。
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飢饉。
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人々は理由を求めた。
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そして。
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目の前の存在を神と呼んだ。
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その時だった。
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奥の闇から足音が聞こえる。
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コツ。
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コツ。
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コツ。
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庄吉は振り返る。
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誰かが歩いてくる。
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怨霊ではない。
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足音がある。
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実体を持っている。
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やがて暗闇から姿が現れた。
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男だった。
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黒い装束。
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年齢は五十代ほど。
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顔は青白い。
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しかし最も異様なのは目だった。
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瞳が真っ黒だった。
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白目が存在しない。
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まるで闇が人間の形を取ったような男。
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庄吉は刀を向ける。
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「何者だ」
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男はゆっくり笑う。
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「久しぶりだ」
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庄吉の顔が険しくなる。
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その言葉は自分に向けられたものではない。
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もっと別の誰かに向けられている。
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男は祭壇を見つめる。
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そして。
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さくらを見た。
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「まだ残っていたか」
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さくらの顔が青ざめる。
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「来ないで」
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男は笑う。
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「何故だ」
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「お前達は役目を終えた」
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庄吉が割って入る。
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「答えろ」
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「何者だ」
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男はようやく庄吉を見る。
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そして。
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少し驚いたような顔をした。
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「生きた人間か」
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まるで珍しいものを見るような口調。
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男は名乗った。
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「久世宗景」
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庄吉は聞き覚えがない。
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しかし。
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さくらが震え始める。
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明らかに知っている反応だった。
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宗景は微笑む。
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「安心しろ」
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「私は敵ではない」
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庄吉は刀を下ろさない。
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「信用できるか」
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宗景は肩をすくめる。
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「当然だな」
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そして門へ視線を向けた。
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「だが」
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「お前達は勘違いしている」
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「勘違い?」
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宗景は頷く。
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「この封印は人々を守るためのものではない」
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庄吉の眉が動く。
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宗景は続けた。
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「逆だ」
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「封印は奴を守っている」
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地下神殿が静まり返る。
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庄吉は言葉を失った。
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宗景は門を見上げる。
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「人間は弱い」
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「恐怖に耐えられない」
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「だから神を作る」
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「そして神に捧げる」
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その声には感情がなかった。
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まるで事実を語るだけ。
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「藤富家もそうだ」
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「仏生堂もそうだ」
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「この国もそうだ」
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庄吉は問い詰める。
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「お前は何を知っている」
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宗景は笑う。
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「全てだ」
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その瞬間。
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門の向こうから再び声が響く。
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> 「宗景」
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男は振り返る。
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まるで主に呼ばれた犬のように。
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> 「時が近い」
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宗景は静かに頭を下げた。
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その姿を見て庄吉は悟る。
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この男は崇拝者だ。
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信者だ。
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封印の主に仕える者。
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宗景は庄吉へ視線を戻す。
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「武士」
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「お前は死ぬ」
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庄吉は睨み返す。
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「断る」
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宗景は笑う。
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「そう言った者を何人も見た」
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「だが皆、供物帳へ記された」
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その言葉に庄吉の拳が握られる。
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宗景は最後に言った。
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「お前が最初ではない」
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「そして最後でもない」
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そう言うと。
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男の身体が崩れ始めた。
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砂のように。
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黒い灰のように。
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そして。
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完全に消えた。
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残ったのは沈黙だけだった。
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庄吉は門を見る。
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巨大な亀裂。
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その奥にいるもの。
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そして。
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久世宗景。
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初めて姿を現した黒幕の一族。
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この呪いは怪異だけではない。
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人間が関わっている。
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それも何百年も前から。
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その事実が明らかになった時。
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地下神殿のさらに奥から。
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別の音が響いた。
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ガコン。
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石が動く音。
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隠された何かが開いた音だった。
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第九話へ続く。




