表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀の瀬異聞録  作者: こうた
第七章「失われた三つの石」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/174

第七話「藤富家の罪」

藤富家へ戻った真之介たちを待っていたのは。



---


戦いではなかった。



---


沈黙だった。



---


屋敷を覆っていた怪異たちは。



---


門の前で止まっていた。



---


入ろうとしない。



---


襲おうとしない。



---


ただ。



---


見ている。



---



---


何百もの怪異が。



---


藤富家を見上げていた。



---



---


その光景は。



---


まるで。



---


裁判だった。



---



---


「なぜ入ってこない」



---


宗一郎が呟く。



---



---


真之介も同じことを考えていた。



---


怪異なら襲うはずだ。



---


しかし。



---


彼らは待っている。



---



---


何かを。



---



---


その時だった。



---


屋敷の奥から。



---


鈴の音。



---



---


チリン。



---



---


チリン。



---



---


誰も鳴らしていない。



---



---


だが確かに聞こえる。



---



---


榊原清十郎が顔色を変えた。



---



---


「まずい……」



---



---


「どうした」



---



---


老人は唇を震わせた。



---



---


「開いてはいけない部屋がある」



---



---



---


地下へ続く階段。



---



---


藤富家の最も古い区画。



---



---


当主ですら入らない場所。



---



---


そこへ向かう。



---



---


宗一郎も。



---


綾乃も。



---


榊原も。



---


全員の顔が強張っていた。



---



---


真之介は気付く。



---



---


みんな知っている。



---



---


何かを隠している。



---



---



---


地下最深部。



---



---


分厚い扉。



---



---


表面には。



---


八つの石の紋章。



---



---


しかし。



---


その中央には。



---


見たことのない印。



---



---


三本線。



---



---


それが刻まれていた。



---



---


「これは何だ」



---



---


誰も答えない。



---



---


真之介は宗一郎を見る。



---



---


「説明しろ」



---



---


宗一郎は長く沈黙した。



---



---


そして。



---


ようやく口を開いた。



---



---


「藤富家は」



---



---


「守っていたわけではない」



---



---



---


空気が止まる。



---



---


「何?」



---



---


「少なくとも」



---



---


「最初は違った」



---



---



---


宗一郎の声は重かった。



---



---


「初代藤富家は」



---



---


「石を作った側だ」



---



---



---


真之介の思考が止まる。



---



---


守っていた一族ではない。



---



---


作った?



---



---


「馬鹿な……」



---



---


「守り石は」



---



---


「封印の道具じゃなかったのか」



---



---



---


宗一郎は首を振る。



---



---


「違う」



---



---


「最初の役割は」



---



---


「奪うことだった」



---



---



---


「何を」



---



---


「人間の記憶を」



---



---



---


咲が息を呑む。



---



---


第九。



---


記憶。



---



---


全てが繋がる。



---



---


「昔」



---


宗一郎は続けた。



---



---


「ある事件が起きた」



---



---


「人々は忘れたかった」



---



---


「苦しみを」



---



---


「悲しみを」



---



---


「後悔を」



---



---



---


だから。



---


石を作った。



---



---


負の記憶を封じるために。



---



---


しかし。



---


結果は違った。



---



---


記憶は消えなかった。



---



---


怪異になった。



---



---



---


「それが今の怪異……」



---



---


綾乃が呟く。



---



---


宗一郎は頷く。



---



---


「怪異は」



---



---


「忘れられた記憶そのものだ」



---



---



---


その瞬間。



---


外から。



---


無数の声。



---



---


『返せ』



---



---


『返せ』



---



---


『返せ』



---



---



---


屋敷全体が揺れる。



---



---


怪異たちが叫んでいる。



---



---


理由が分かった。



---



---


彼らは。



---



---


怒っているのではない。



---



---


自分たちの記憶を。



---


返してほしいだけだった。



---



---



---


咲が涙を流した。



---



---


「ずっと……」



---



---


「忘れられていたんだ」



---



---



---


その時。



---


閉ざされた扉が。



---


ゆっくりと開き始めた。



---



---


ギギギ……



---



---


誰も触っていない。



---



---


しかし開く。



---



---


中から。



---


冷たい風。



---



---


暗闇。



---



---


そして。



---


誰かの声。



---



---


『ようやく思い出したか』



---



---


真之介たちは凍りつく。



---



---


その声は。



---


男でも女でもない。



---



---


老人でも子供でもない。



---



---


まるで。



---


何百人もの声が重なったようだった。



---



---


そして。



---


その存在は言った。



---



---


『藤富家は罪を忘れた』



---



---


『だから私は待っていた』



---



---


『返してもらうために』



---



---


暗闇の奥で。



---


何かが動く。



---



---


人影のようで。



---


人ではない。



---



---


怪異のようで。



---


怪異でもない。



---



---


第七章 第七話

「藤富家の罪」



---


次の第八話で、


扉の奥の存在の正体


三つの石と藤富家の本当の関係


怪異たちが集まった理由



が大きく明らかになり、第7章後半の核心へ入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ