第十話「人間の答え」
第六章
「九番目の神」
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「第十の石」
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その言葉が。
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真之介の中で響いた。
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八つの守り石。
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そして第九。
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それだけだと思っていた。
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しかし。
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藤富家の最深部には。
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もう一つ。
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隠された存在があった。
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「なぜ……」
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真之介は零を見る。
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「なぜそんなものを作った」
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零は静かに答える。
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「八つの石は」
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「世界を守るためのもの」
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「第九は」
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「記憶を守るもの」
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「そして第十は」
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黒い石を掲げる。
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「選択を奪うものだ」
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空気が変わった。
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第九の光が揺れる。
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管理者の声。
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『危険』
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初めて。
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第九が。
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恐怖を示した。
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真之介は驚く。
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「第九が……怖がっている?」
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黒い武者が言う。
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「第十は」
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「守り石ではない」
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「支配石だ」
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零は歩く。
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白い世界の中心へ。
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「人間は愚かだ」
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「何千年見てきた」
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「争い」
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「裏切り」
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「欲望」
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「悲劇」
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「全て」
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「自由が生んだものだ」
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真之介は聞く。
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「だから」
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「全部奪うのか」
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零は頷く。
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「選択を」
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「感情を」
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「迷いを」
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「未来を」
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「全て管理する」
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真之介は拳を握る。
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「それは生きることじゃない」
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零を見る。
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「ただ存在しているだけだ」
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零は笑った。
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「景継も」
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「お前も」
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「同じだ」
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「大切なものを守りたい」
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「その願いは同じ」
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真之介は黙る。
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確かに。
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願いだけなら同じ。
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違うのは。
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そのために何を犠牲にするか。
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零は第十の石を地面へ置いた。
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その瞬間。
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世界中の記憶が流れ込む。
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戦争。
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災害。
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別れ。
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涙。
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人間の歴史。
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全て。
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零は言う。
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「見ろ」
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「これが人間だ」
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「苦しみ続ける存在」
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真之介の頭にも。
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大量の映像が入る。
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江戸。
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戦。
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家族との別れ。
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病。
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死。
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確かに。
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人間は苦しんできた。
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しかし。
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その中には。
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笑顔もあった。
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出会いもあった。
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助け合いもあった。
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真之介は答える。
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「見た」
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「だからこそ」
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「止めない」
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零の表情が変わる。
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「なぜだ」
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「苦しみがある世界を」
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「なぜ選ぶ」
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真之介は答えた。
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「苦しみだけじゃないからだ」
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その時。
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少女が前へ出る。
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「先生」
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「私」
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「名前が欲しい」
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真之介を見る。
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「ここにいた証が欲しい」
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真之介は頷く。
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「なら」
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「自分で決めればいい」
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少女は少し考える。
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そして。
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「咲」
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と言った。
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真之介は驚く。
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「咲?」
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少女は笑う。
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「前の人が」
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「大切な名前だったから」
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高橋咲。
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かつて守り石の秘密を残した女性。
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記憶は。
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形を変えて。
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受け継がれる。
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その瞬間。
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第九が大きく光った。
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『理解』
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『記録とは』
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『固定ではない』
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『受け継ぐもの』
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第十の石に亀裂が入る。
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零が叫ぶ。
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「違う!」
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「人間はまた失う!」
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真之介は答える。
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「そうだ」
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「失う」
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「忘れる」
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「でも」
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「だから」
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「残そうとする」
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「覚えようとする」
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「その繰り返しが」
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「人間だ」
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零の姿が崩れ始める。
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しかし。
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最後まで。
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彼は理解できなかった。
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「なぜ……」
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「なぜ不完全を選ぶ……」
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真之介は静かに言った。
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「完全じゃないから」
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「未来がある」
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第十の石は砕けた。
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白い世界が戻る。
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時間が動き出す。
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村人たちの姿が薄れる。
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少女――咲も。
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ゆっくり消えていく。
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「先生」
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「ありがとう」
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真之介は頷いた。
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「忘れない」
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そう言った。
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明治二十三年。
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白川村の事件。
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公式記録には残らなかった。
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しかし。
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藤富家の新しい記録には残された。
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『人間は忘れる』
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『だから記録する』
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『記録するから未来へ進める』
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そして。
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最後の一行。
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真之介が書いた。
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『守るとは』
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『失わないことではない』
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『失った後も、前へ進めるようにすること』
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第六章 完
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