第六話 地下への階段
刀が指を断ち切った瞬間。
祠全体が震え始めた。
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ゴゴゴゴゴ……
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天井から砂が落ちる。
石壁に亀裂が走る。
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庄吉は後退した。
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切り落としたはずの指は床に落ちている。
だが。
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その指はまだ動いていた。
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ぴくり。
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ぴくり。
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まるで生きているように。
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庄吉は顔をしかめる。
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「化け物め……」
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その時だった。
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指が突然崩れた。
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骨でも肉でもない。
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黒い土になって。
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さらさらと床へ広がる。
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そして。
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その土の中に。
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小さな人骨が混じっていた。
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子供の指の骨だった。
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庄吉は凍りつく。
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嫌な予感がする。
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今切ったものは。
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本当に一体の怪物だったのか。
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それとも。
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無数の死者の集まりだったのか。
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その時。
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再び声が聞こえた。
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今度ははっきりと。
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「逃げて」
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少女の声だった。
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祠の奥から聞こえる。
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「逃げて」
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「まだ間に合う」
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庄吉は耳を澄ませる。
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昨日霧の中で見た少女の声。
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間違いない。
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だが。
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同時に宗兵衛の言葉が脳裏をよぎる。
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> 「声について行ってはなりませぬ」
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庄吉は迷った。
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しかし。
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今の声には悪意を感じなかった。
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むしろ焦り。
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恐怖。
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切迫した感情。
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庄吉は決断する。
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声の方向へ進む。
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祠の最奥部。
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そこには石壁があった。
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ただの壁に見える。
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しかし。
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少女の声はその向こうから聞こえている。
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庄吉は壁を調べた。
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すると。
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壁の一部に人の手形が刻まれている。
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異様に小さい。
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子供の手。
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庄吉はゆっくり触れた。
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その瞬間。
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ガコン。
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低い音が響く。
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壁が動いた。
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石が左右へ開いていく。
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隠し扉だった。
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その先には。
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暗闇。
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そして。
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地下へ続く階段。
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庄吉は息を呑む。
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冷気が吹き上がってくる。
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生暖かい。
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腐臭も混じっている。
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まるで地の底が口を開いたようだった。
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「ここか……」
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刀を構える。
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そして一歩踏み出す。
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階段は長かった。
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どこまでも続いている。
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松明を灯す。
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炎が不自然に揺れる。
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まるで見えない誰かが息を吹きかけているように。
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数十段。
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百段。
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さらに下る。
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やがて。
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広い空間へ出た。
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庄吉は思わず立ち止まる。
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地下空洞。
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いや。
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地下神殿だった。
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巨大な石柱が並んでいる。
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天井は高く。
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まるで城の大広間のよう。
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だが異様なのは中央だった。
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無数の縄。
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そして石台。
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一目で分かった。
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祭壇。
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庄吉はゆっくり近づく。
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祭壇の表面には黒い染みがある。
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古い血痕。
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何百年も積み重なった血。
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その量に背筋が寒くなる。
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そして祭壇の周囲。
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床に文字が刻まれていた。
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びっしりと。
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名前。
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名前。
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名前。
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数え切れない。
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庄吉は膝をつく。
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そこに刻まれた名前を読む。
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少女。
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老人。
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若者。
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子供。
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男女問わない。
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全て人名だった。
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そして。
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一番新しい文字。
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そこには。
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西村庄吉
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そう刻まれていた。
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庄吉の顔色が変わる。
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昨日まで存在しなかったはずだ。
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それなのに。
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石に刻まれている。
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まるで何年も前からあったかのように。
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その時。
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祭壇の向こうで何かが動いた。
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庄吉は立ち上がる。
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松明を向ける。
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暗闇の中。
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誰かが座っていた。
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人影。
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小さい。
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子供だった。
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十歳ほどの少女。
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白い着物。
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長い黒髪。
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霧の中で見た少女。
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間違いない。
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少女は静かに庄吉を見る。
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その瞳には涙が浮かんでいた。
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「あなたは……」
庄吉が問いかける。
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少女は答えない。
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代わりに祭壇の奥を指差す。
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そこには巨大な扉があった。
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地下神殿の最奥。
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黒い石で造られた門。
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縄で何重にも封じられている。
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しかし。
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縄の一部が切れていた。
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少女は震える声で言う。
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「起きる」
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庄吉は顔を上げる。
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少女は続ける。
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「もうすぐ」
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その時だった。
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門の向こうから音がした。
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ドン。
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空気が震える。
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庄吉の心臓まで揺れる。
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ドン。
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再び。
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何かが門を叩いている。
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あり得ないほど巨大な何かが。
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少女が怯える。
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「来る」
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「来る」
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そして。
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少女の身体が透け始める。
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庄吉は目を見開く。
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幽霊だったのだ。
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少女は消えかけながら最後に言う。
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「私は最初の……」
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言葉が途切れる。
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「最初の?」
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庄吉が問う。
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少女は涙を流す。
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そして。
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「生贄」
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その言葉を残し。
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光の粒となって消えた。
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静寂。
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残された庄吉は門を見つめる。
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そして理解する。
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この地下神殿。
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こここそが全ての始まりだ。
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平安の昔から続く。
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仏生堂の呪いの源。
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その時。
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門の向こうで。
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何かが笑った。
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低く。
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地の底から響くような声で。
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第七話へ続く。




