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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第一章:仏生堂の影 ― 生贄の地 ―

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第六話 地下への階段

刀が指を断ち切った瞬間。


祠全体が震え始めた。



---


ゴゴゴゴゴ……



---


天井から砂が落ちる。


石壁に亀裂が走る。



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庄吉は後退した。



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切り落としたはずの指は床に落ちている。


だが。



---


その指はまだ動いていた。



---


ぴくり。



---


ぴくり。



---


まるで生きているように。



---


庄吉は顔をしかめる。



---


「化け物め……」



---


その時だった。



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指が突然崩れた。



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骨でも肉でもない。



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黒い土になって。



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さらさらと床へ広がる。



---


そして。



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その土の中に。



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小さな人骨が混じっていた。



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子供の指の骨だった。



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庄吉は凍りつく。



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嫌な予感がする。



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今切ったものは。



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本当に一体の怪物だったのか。



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それとも。



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無数の死者の集まりだったのか。



---


その時。



---


再び声が聞こえた。



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今度ははっきりと。



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「逃げて」



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少女の声だった。



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祠の奥から聞こえる。



---


「逃げて」



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「まだ間に合う」



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庄吉は耳を澄ませる。



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昨日霧の中で見た少女の声。



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間違いない。



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だが。



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同時に宗兵衛の言葉が脳裏をよぎる。



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> 「声について行ってはなりませぬ」





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庄吉は迷った。



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しかし。



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今の声には悪意を感じなかった。



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むしろ焦り。



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恐怖。



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切迫した感情。



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庄吉は決断する。



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声の方向へ進む。



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祠の最奥部。



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そこには石壁があった。



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ただの壁に見える。



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しかし。



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少女の声はその向こうから聞こえている。



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庄吉は壁を調べた。



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すると。



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壁の一部に人の手形が刻まれている。



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異様に小さい。



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子供の手。



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庄吉はゆっくり触れた。



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その瞬間。



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ガコン。



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低い音が響く。



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壁が動いた。



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石が左右へ開いていく。



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隠し扉だった。



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その先には。



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暗闇。



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そして。



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地下へ続く階段。



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庄吉は息を呑む。



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冷気が吹き上がってくる。



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生暖かい。



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腐臭も混じっている。



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まるで地の底が口を開いたようだった。



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「ここか……」



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刀を構える。



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そして一歩踏み出す。



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階段は長かった。



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どこまでも続いている。



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松明を灯す。



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炎が不自然に揺れる。



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まるで見えない誰かが息を吹きかけているように。



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数十段。



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百段。



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さらに下る。



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やがて。



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広い空間へ出た。



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庄吉は思わず立ち止まる。



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地下空洞。



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いや。



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地下神殿だった。



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巨大な石柱が並んでいる。



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天井は高く。



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まるで城の大広間のよう。



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だが異様なのは中央だった。



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無数の縄。



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そして石台。



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一目で分かった。



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祭壇。



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庄吉はゆっくり近づく。



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祭壇の表面には黒い染みがある。



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古い血痕。



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何百年も積み重なった血。



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その量に背筋が寒くなる。



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そして祭壇の周囲。



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床に文字が刻まれていた。



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びっしりと。



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名前。



---


名前。



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名前。



---


数え切れない。



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庄吉は膝をつく。



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そこに刻まれた名前を読む。



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少女。



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老人。



---


若者。



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子供。



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男女問わない。



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全て人名だった。



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そして。



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一番新しい文字。



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そこには。



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西村庄吉



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そう刻まれていた。



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庄吉の顔色が変わる。



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昨日まで存在しなかったはずだ。



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それなのに。



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石に刻まれている。



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まるで何年も前からあったかのように。



---


その時。



---


祭壇の向こうで何かが動いた。



---


庄吉は立ち上がる。



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松明を向ける。



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暗闇の中。



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誰かが座っていた。



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人影。



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小さい。



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子供だった。



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十歳ほどの少女。



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白い着物。



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長い黒髪。



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霧の中で見た少女。



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間違いない。



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少女は静かに庄吉を見る。



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その瞳には涙が浮かんでいた。



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「あなたは……」


庄吉が問いかける。



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少女は答えない。



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代わりに祭壇の奥を指差す。



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そこには巨大な扉があった。



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地下神殿の最奥。



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黒い石で造られた門。



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縄で何重にも封じられている。



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しかし。



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縄の一部が切れていた。



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少女は震える声で言う。



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「起きる」



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庄吉は顔を上げる。



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少女は続ける。



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「もうすぐ」



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その時だった。



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門の向こうから音がした。



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ドン。



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空気が震える。



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庄吉の心臓まで揺れる。



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ドン。



---


再び。



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何かが門を叩いている。



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あり得ないほど巨大な何かが。



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少女が怯える。



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「来る」



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「来る」



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そして。



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少女の身体が透け始める。



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庄吉は目を見開く。



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幽霊だったのだ。



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少女は消えかけながら最後に言う。



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「私は最初の……」



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言葉が途切れる。



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「最初の?」



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庄吉が問う。



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少女は涙を流す。



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そして。



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「生贄」



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その言葉を残し。



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光の粒となって消えた。



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静寂。



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残された庄吉は門を見つめる。



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そして理解する。



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この地下神殿。



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こここそが全ての始まりだ。



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平安の昔から続く。



---


仏生堂の呪いの源。



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その時。



---


門の向こうで。



---


何かが笑った。



---


低く。



---


地の底から響くような声で。



---


第七話へ続く。

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