表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀の瀬異聞録  作者: こうた
第六章 九番目の神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/174

第七話「記録の王」

『私は』



---


『人間の願いの完成形』



---


その言葉が。



---


真之介の胸に重く響いた。



---


目の前の存在。



---


それは怪物ではなかった。



---


怒りもない。



---


憎しみもない。



---


ただ。



---


一つの答えを出した存在。



---


「失わなければいい」



---


そのために。



---


全てを止める。



---


全てを固定する。



---


全てを記録する。



---


それが。



---


この存在の考えだった。



---


「名前はあるのか」



---


真之介が聞いた。



---


存在は少し沈黙した。



---


『名前』



---


『必要ない』



---


『名前は変化する』



---


『存在は永遠であるべき』



---


その答え。



---


真之介は確信した。



---


これは。



---


人間の願いから生まれたが。



---


人間とは違う。



---


人間は。



---


変わる。



---


間違える。



---


忘れる。



---


だからこそ。



---


今日と明日がある。



---


「お前は人間を残したいんじゃない」



---


真之介は言った。



---


「人間を止めたいんだ」



---


存在の文字が揺れた。



---


『違う』



---


『私は救う』



---


『死から』



---


『忘却から』



---


『喪失から』



---


その瞬間。



---


周囲の村人たちが動きを止めた。



---


少女。



---


老人。



---


全員。



---


表情が消える。



---


まるで。



---


人形。



---


「やめろ!」



---


真之介が叫ぶ。



---


存在は答える。



---


『彼らは苦しまない』



---


『悲しまない』



---


『失わない』



---


『完璧だ』



---



---


真之介は少女を見る。



---


さっきまで泣いていた。



---


怖がっていた。



---


助けを求めていた。



---


でも。



---


今は。



---


何も感じていない。



---


「それは救いじゃない」



---


「感情を奪っているだけだ」



---


『感情は苦痛を生む』



---


『なら不要』



---


真之介は拳を握る。



---


この考え。



---


どこかで聞いた。



---


景継。



---


同じだった。



---


ただ。



---


景継には愛があった。



---


失った人への想いがあった。



---


しかし。



---


この存在には。



---


愛すら保存対象になっている。



---



---


その時。



---


景継が前へ出た。



---


「違う」



---


存在が反応する。



---


『藤富景継』



---


『あなたの願いから生まれた』



---


景継は苦しそうに笑う。



---


「そうだ」



---


「お前は」



---


「私の弱さだ」



---


真之介を見る。



---


「私は」



---


「失いたくなかった」



---


「だから」



---


「永遠を求めた」



---


一歩。



---


存在へ近づく。



---


「だが」



---


「違った」



---


存在が揺れる。



---


『理解不能』



---


景継は言う。



---


「愛していたから」



---


「失うのが怖かった」



---


「だが」



---


「失わない世界は」



---


「愛することすらなくなる」



---


沈黙。



---



---


その言葉。



---


第九の奥。



---


巨大な光が揺れた。



---


管理者の声。



---


『初めて』



---


『矛盾を理解した』



---


真之介は空を見る。



---


第九。



---


ずっと問い続けていた。



---


なぜ人間は。



---


失うのに愛するのか。



---


なぜ忘れるのに覚えているのか。



---


その答えを。



---


今。



---


少し理解した。



---



---


しかし。



---


次の瞬間。



---


地面が揺れた。



---


山全体が震える。



---


守り石。



---


八つ。



---


全てが反応した。



---


「何だ」



---


真之介が叫ぶ。



---


黒い武者が答えた。



---


「遅かった」



---


「何が」



---


「第九を抑えていた八つの石」



---


「限界だ」



---



---


遠く。



---


八つの光が一つずつ消える。



---


第一。



---


第二。



---


第三。



---


第四。



---


第五。



---


全て。



---


眠り始める。



---


そして。



---


山の奥から。



---


新しい声。



---


今までより低く。



---


古い。



---


『記録は完成した』



---


『次は』



---


『世界そのものを保存する』



---


真之介は凍りつく。



---


「世界を?」



---


黒い武者が答える。



---


「時間を止めるつもりだ」



---


全てを固定する。



---


変化をなくす。



---


死も。



---


生も。



---


未来も。



---


過去も。



---


全部。



---


一つの永遠にする。



---


真之介は山を見る。



---


そして。



---


初めて覚悟を決めた。



---


「守るだけじゃ足りない」



---


「戦う」



---


黒い武者が見る。



---


「何と」



---


真之介は答える。



---


「人間が生きる権利を奪うものと」



---



---


(第七話・続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ