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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第六章 九番目の神

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第六話「守る者と壊す者」

世界が崩れていく。



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空が割れる。



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地面が消える。



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村の家々が。



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人々の姿が。



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一枚の古い絵のように。



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端から崩れていく。



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「みんな!」



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真之介は走った。



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少女の手を取る。



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しかし。



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触れた瞬間。



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指先から光の粒がこぼれた。



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「……」



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少女の身体が薄くなっている。



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「嫌……」



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少女が呟く。



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「また消えるの?」



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その言葉。



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第五の石で見た記憶たちと同じだった。



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忘れられる恐怖。



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存在がなくなる恐怖。



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真之介は強く手を握る。



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「消えない」



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「先生……」



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「君がここにいたことは」



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「誰かが覚えている」



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少女は首を振った。



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「でも」



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「私は……本当は……」



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言葉の途中。



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姿が揺れる。



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「私は誰なの?」



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その問い。



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真之介は答えられなかった。



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記憶から作られた存在。



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本物の人間ではない。



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しかし。



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ただの偽物とも言えない。



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感情がある。



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恐怖がある。



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願いがある。



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「名前は」



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真之介は聞いた。



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少女は困った顔をする。



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「ありません」



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「じゃあ」



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真之介は言った。



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「今から作ればいい」



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少女が顔を上げる。



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「名前を?」



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「そうだ」



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「過去がなくても」



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「今、ここにいるなら」



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「新しい記録を作れる」



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その瞬間。



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崩れていた世界が。



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一瞬だけ止まった。



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『新しい記録』



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第九の声。



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『存在しないものを』



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『存在させる?』



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真之介は答える。



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「違う」



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「最初から存在している」



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「お前が見落としているだけだ」



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沈黙。



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第九は理解しようとしていた。



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その時。



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景継が現れる。



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しかし。



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先ほどまでとは違う。



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表情が険しい。



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「愚かな」



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「何がだ」



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真之介は振り返る。



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景継を見る。



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「お前は」



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「死を受け入れろと言うのか」



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「そうだ」



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景継の顔が歪む。



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「なら」



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「愛する者が死んでも」



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「同じことを言えるか」



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その瞬間。



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景継の周囲に映像が浮かんだ。



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一人の女性。



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若い。



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笑っている。



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景継が大切にしていた人。



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病。



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別れ。



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最後の瞬間。



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彼女の手を握る景継。



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「待ってくれ」



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「まだ何もしていない」



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「まだ救えていない」



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しかし。



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彼女は死んだ。



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その記憶。



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何百年経っても。



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景継の中から消えなかった。



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「私は」



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景継が言う。



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「ただ」



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「もう一度会いたかった」



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その声には。



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悪意はなかった。



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ただ。



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人間の弱さだった。



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真之介は黙る。



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分かってしまう。



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景継の気持ちが。



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自分にも。



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同じ願いがあるから。



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その時。



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黒い武者が刀を抜いた。



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「来る」



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真之介は振り返る。



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「何が」



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武者は答える。



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「管理者ではない」



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「第九でもない」



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「別の意志」



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崩れた世界の奥。



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暗闇から。



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何かが歩いてくる。



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人の形。



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しかし。



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顔がない。



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身体には無数の文字。



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名前。



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記録。



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歴史。



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全てが刻まれている。



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景継が息を呑む。



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「……あり得ない」



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「何だ」



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真之介が聞く。



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景継は震える声で言った。



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「私が」



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「最も恐れていたもの」



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その存在が。



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初めて声を出した。



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『保存されたものは』



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『やがて』



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『保存する者を必要とする』



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真之介は理解する。



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これは第九ではない。



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第九によって生まれた。



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新しい怪異。



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「記録そのものが意思を持った存在」



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『人間よ』



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『消えることを恐れるなら』



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『全てを固定すればいい』



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『変化など不要』



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『死など不要』



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その考え。



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景継と同じ。



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しかし。



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もっと極端だった。



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永遠。



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変化しない世界。



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終わらない記録。



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それは。



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生きることではない。



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「お前が」



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真之介は問いかける。



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「黒幕なのか」



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存在は答えた。



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『違う』



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『私は』



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『人間の願いの完成形』



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その瞬間。



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真之介は気付いた。



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本当の敵は。



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怪異でも。



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神でも。



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誰か一人でもない。



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人間が持つ。



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「失いたくない」という願い。



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そのものだった。



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(第六話・続く)

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