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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第六章 九番目の神

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第五話「第九を作った者」

「第九を作った存在」



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黒い武者の言葉が。



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静まり返った村に落ちた。



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真之介は聞き返す。



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「待て」



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「第九は最初からあったんじゃないのか」



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武者は答えない。



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その沈黙が。



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何よりの答えだった。



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これまで。



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真之介は考えていた。



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第九は自然に存在するもの。



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人間の記憶を集める大きな流れ。



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八つの守り石が管理しているもの。



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しかし。



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もし。



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それすら作られたものなら。



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「誰が」



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真之介が問う。



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景継の記録体は笑った。



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「やっとそこへ辿り着いたか」



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「藤富家が作ったのではない」



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「では」



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景継は山の奥を見る。



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「人間がこの世界を理解するより前」



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「もっと古い時代」



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「最初の記録者がいた」



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村の景色が揺れる。



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記憶の世界が変化する。



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明治の村。



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江戸の村。



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さらに古い時代。



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まだ文字も少なかった頃。



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人間は死者を忘れていた。



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記録する方法がなかった。



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名前を残すことも。



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生きた証を残すことも。



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難しかった。



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その時。



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一人の人間が現れた。



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白い衣。



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長い年月を生きたような姿。



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手には。



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何も書かれていない石板。



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「……誰だ」



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真之介が呟く。



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景継が答える。



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「最初の管理者」



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「名は残っていない」



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「なぜなら」



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「名前を捨てたからだ」



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その存在は。



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人間の記憶を集める方法を作った。



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死者が消えないように。



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悲しむ者が少しでも救われるように。



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そのために。



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最初の記録。



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最初の石。



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それが後に。



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八つの守り石へ繋がった。



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しかし。



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問題が起きた。



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人間は。



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記録するだけでは満足しなかった。



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「戻したい」



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「もう一度会いたい」



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そう願った。



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記録は。



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いつしか。



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保存から再現へ変わった。



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そして。



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生まれた。



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第九。



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「人間の記憶を持つ器」



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真之介は理解する。



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第九は怪物ではない。



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人間が何千年も求め続けたもの。



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「死者との再会」



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その願いの終着点。



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しかし。



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終着点は。



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救いではなかった。



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「なら」



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真之介は景継を見る。



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「あなたは途中で歪めた」



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景継は否定しない。



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「私は救おうとした」



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「死をなくせば」



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「悲しみもなくなる」



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「違う」



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真之介は言った。



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「悲しみがあるから」



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「大切だと思える」



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景継は静かに笑った。



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「その考えは」



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「まだ失っていない者の考えだ」



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その言葉。



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真之介は反論できなかった。



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もし。



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自分の家族が。



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美月が。



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蓮が。



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目の前で失われたら。



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同じことを言えるのか。



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分からなかった。



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その時。



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巨大な影が動いた。



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第九の奥。



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さらに深い場所。



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そこから。



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声。



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今までとは違う。



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静かな声。



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『私は』



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『願いを叶えた』



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村全体が震える。



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『人間は』



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『忘れたくないと言った』



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『だから残した』



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『失いたくないと言った』



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『だから保存した』



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『死にたくないと言った』



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『だから終わりをなくす』



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真之介は空を見る。



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「お前が」



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「第九なのか」



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返事。



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『違う』



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『私は』



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『第九を管理する者』



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沈黙。



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武者が呟いた。



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「そんな存在がいたのか」



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景継さえ。



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驚いている。



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つまり。



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景継も知らない存在。



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八つの石も知らない秘密。



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その存在は言った。



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『人間よ』



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『選べ』



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『記憶を残す世界』



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『忘却を受け入れる世界』



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『どちらを望む』



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真之介は答えられない。



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どちらにも理由がある。



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残したい。



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忘れたい。



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どちらも人間。



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その時。



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村の少女が泣いた。



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「先生」



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「私たちは」



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「どうなるの?」



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真之介を見る。



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この少女は。



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本物ではないかもしれない。



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でも。



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今。



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ここにいる。



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苦しんでいる。



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なら。



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答えは一つだった。



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「守る」



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真之介は言った。



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「どちらかを選ぶ前に」



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「今ここにいる命を守る」



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黒い武者が少しだけ頷く。



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景継は黙る。



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そして。



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管理者の声が響く。



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『理解不能』



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『それが』



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『人間なのか』



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その瞬間。



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世界が崩れ始めた。



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(第五話・続く)

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