第五話「第九を作った者」
「第九を作った存在」
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黒い武者の言葉が。
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静まり返った村に落ちた。
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真之介は聞き返す。
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「待て」
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「第九は最初からあったんじゃないのか」
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武者は答えない。
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その沈黙が。
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何よりの答えだった。
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これまで。
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真之介は考えていた。
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第九は自然に存在するもの。
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人間の記憶を集める大きな流れ。
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八つの守り石が管理しているもの。
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しかし。
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もし。
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それすら作られたものなら。
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「誰が」
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真之介が問う。
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景継の記録体は笑った。
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「やっとそこへ辿り着いたか」
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「藤富家が作ったのではない」
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「では」
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景継は山の奥を見る。
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「人間がこの世界を理解するより前」
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「もっと古い時代」
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「最初の記録者がいた」
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村の景色が揺れる。
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記憶の世界が変化する。
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明治の村。
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江戸の村。
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さらに古い時代。
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まだ文字も少なかった頃。
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人間は死者を忘れていた。
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記録する方法がなかった。
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名前を残すことも。
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生きた証を残すことも。
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難しかった。
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その時。
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一人の人間が現れた。
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白い衣。
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長い年月を生きたような姿。
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手には。
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何も書かれていない石板。
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「……誰だ」
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真之介が呟く。
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景継が答える。
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「最初の管理者」
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「名は残っていない」
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「なぜなら」
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「名前を捨てたからだ」
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その存在は。
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人間の記憶を集める方法を作った。
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死者が消えないように。
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悲しむ者が少しでも救われるように。
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そのために。
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最初の記録。
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最初の石。
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それが後に。
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八つの守り石へ繋がった。
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しかし。
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問題が起きた。
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人間は。
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記録するだけでは満足しなかった。
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「戻したい」
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「もう一度会いたい」
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そう願った。
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記録は。
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いつしか。
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保存から再現へ変わった。
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そして。
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生まれた。
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第九。
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「人間の記憶を持つ器」
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真之介は理解する。
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第九は怪物ではない。
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人間が何千年も求め続けたもの。
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「死者との再会」
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その願いの終着点。
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しかし。
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終着点は。
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救いではなかった。
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「なら」
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真之介は景継を見る。
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「あなたは途中で歪めた」
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景継は否定しない。
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「私は救おうとした」
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「死をなくせば」
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「悲しみもなくなる」
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「違う」
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真之介は言った。
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「悲しみがあるから」
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「大切だと思える」
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景継は静かに笑った。
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「その考えは」
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「まだ失っていない者の考えだ」
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その言葉。
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真之介は反論できなかった。
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もし。
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自分の家族が。
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美月が。
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蓮が。
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目の前で失われたら。
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同じことを言えるのか。
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分からなかった。
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その時。
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巨大な影が動いた。
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第九の奥。
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さらに深い場所。
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そこから。
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声。
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今までとは違う。
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静かな声。
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『私は』
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『願いを叶えた』
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村全体が震える。
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『人間は』
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『忘れたくないと言った』
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『だから残した』
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『失いたくないと言った』
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『だから保存した』
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『死にたくないと言った』
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『だから終わりをなくす』
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真之介は空を見る。
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「お前が」
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「第九なのか」
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返事。
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『違う』
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『私は』
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『第九を管理する者』
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沈黙。
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武者が呟いた。
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「そんな存在がいたのか」
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景継さえ。
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驚いている。
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つまり。
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景継も知らない存在。
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八つの石も知らない秘密。
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その存在は言った。
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『人間よ』
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『選べ』
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『記憶を残す世界』
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『忘却を受け入れる世界』
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『どちらを望む』
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真之介は答えられない。
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どちらにも理由がある。
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残したい。
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忘れたい。
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どちらも人間。
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その時。
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村の少女が泣いた。
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「先生」
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「私たちは」
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「どうなるの?」
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真之介を見る。
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この少女は。
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本物ではないかもしれない。
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でも。
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今。
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ここにいる。
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苦しんでいる。
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なら。
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答えは一つだった。
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「守る」
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真之介は言った。
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「どちらかを選ぶ前に」
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「今ここにいる命を守る」
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黒い武者が少しだけ頷く。
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景継は黙る。
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そして。
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管理者の声が響く。
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『理解不能』
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『それが』
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『人間なのか』
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その瞬間。
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世界が崩れ始めた。
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(第五話・続く)




