第三話「永遠の村」
「私たち……」
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「もう死んでいるのに」
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「生き続けています」
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少女の言葉が。
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静かな村跡に響いた。
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真之介は周囲を見る。
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確かに。
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村がある。
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家がある。
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畑がある。
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人々が歩いている。
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笑っている。
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昨日まで存在していたような日常。
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しかし。
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違和感があった。
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あまりにも完璧だった。
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誰も疲れていない。
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誰も歳を取らない。
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風も。
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雨も。
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時間の流れも。
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止まっている。
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「これは……」
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真之介が呟く。
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少女を見る。
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「あなたは誰だ」
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少女は悲しそうに笑った。
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「分からない」
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「名前も」
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「家族も」
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「ただ……」
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胸元に手を当てる。
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「ここにいたことだけ覚えています」
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真之介は理解する。
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これは第九が作った世界。
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死者を蘇らせたのではない。
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記憶から再現した。
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「記録された人生」
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だけを。
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だから。
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中身が欠けている。
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村の中央。
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古い寺。
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そこに一人の老人が座っていた。
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真之介を見ると。
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ゆっくり立ち上がる。
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「藤富の者か」
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真之介は警戒する。
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「あなたは誰だ」
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老人は答える。
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「この村の最後の村長だ」
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「あなたも死んでいるのか」
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老人は少し笑う。
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「そうだろうな」
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「だが」
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空を見る。
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「死んだという感覚がない」
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「毎朝起きる」
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「飯を食う」
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「人と話す」
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「だが」
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老人の表情が曇る。
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「夜が来ない」
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その言葉。
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真之介はぞっとした。
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永遠。
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景継が求めたもの。
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しかし。
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永遠には。
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終わりも変化もない。
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「第九は人間を救っているつもりなのか」
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老人は答えなかった。
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代わりに。
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寺の奥を指差す。
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「見れば分かる」
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寺の中。
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そこには。
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大量の記録があった。
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本。
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帳面。
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写真。
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そして。
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名前。
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何千もの名前。
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真之介は息を止める。
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ここは。
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墓ではない。
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「記憶の保管庫」
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だった。
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人間が生きた証。
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全部。
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第九が集めている。
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その時。
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一冊の本が勝手に開いた。
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白いページ。
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そこに文字が浮かぶ。
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『藤富真之介』
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真之介の顔が変わる。
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また。
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自分の記録。
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ページがめくられる。
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幼少期。
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父。
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母。
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教師になった日。
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第五の石。
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全部。
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書かれている。
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「……」
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怖かった。
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しかし。
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同時に。
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奇妙な安心感もあった。
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自分が確かに存在した証。
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誰かが覚えている。
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それは。
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人間なら誰でも欲しいもの。
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「これが第九の目的か」
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老人が答える。
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「違う」
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「これは結果だ」
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「目的?」
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老人は頷く。
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「第九は」
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「忘れられる恐怖を理解していない」
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「だから」
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「全部残そうとしている」
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真之介は黙る。
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怪物ではない。
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悪意でもない。
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ただ。
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人間を理解しようとしている。
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しかし。
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方法が間違っている。
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その時。
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寺の外から声。
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「真之介!」
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振り返る。
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美月。
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妻だった。
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しかし。
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真之介はすぐ気付いた。
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「違う」
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美月の姿をした記憶。
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彼女は悲しそうに笑う。
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「分かるのね」
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「なぜここにいる」
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記憶の美月は答える。
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「第九があなたを理解しようとしている」
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「あなたは特別だから」
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「特別?」
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「八つの石を越えた者」
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「見える者」
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「そして」
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一瞬。
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表情が変わる。
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「第九と話せる可能性がある者」
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真之介は息を止める。
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「話す?」
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「戦うんじゃなく?」
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その時。
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村全体が揺れた。
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空が割れる。
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村人たちがざわめく。
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そして。
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巨大な声。
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地面全体から響く。
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『理解できない』
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『なぜ人間は終わりを望む』
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真之介は空を見る。
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第九。
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初めて。
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直接。
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意思を示した。
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『なぜ消えることを受け入れる』
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真之介は答える。
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「消えるから」
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「今を大切にする」
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沈黙。
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そして。
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第九は問い返した。
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『ならば』
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『なぜ人間は忘れられることを恐れる』
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真之介は言葉に詰まる。
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その問いは。
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簡単ではなかった。
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なぜなら。
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人間自身が矛盾しているから。
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忘れたい。
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でも。
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忘れられたくない。
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その矛盾こそ。
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人間だった。
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(第三話・続く)




