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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第六章 九番目の神

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第三話「永遠の村」

「私たち……」



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「もう死んでいるのに」



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「生き続けています」



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少女の言葉が。



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静かな村跡に響いた。



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真之介は周囲を見る。



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確かに。



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村がある。



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家がある。



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畑がある。



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人々が歩いている。



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笑っている。



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昨日まで存在していたような日常。



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しかし。



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違和感があった。



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あまりにも完璧だった。



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誰も疲れていない。



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誰も歳を取らない。



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風も。



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雨も。



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時間の流れも。



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止まっている。



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「これは……」



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真之介が呟く。



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少女を見る。



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「あなたは誰だ」



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少女は悲しそうに笑った。



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「分からない」



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「名前も」



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「家族も」



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「ただ……」



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胸元に手を当てる。



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「ここにいたことだけ覚えています」



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真之介は理解する。



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これは第九が作った世界。



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死者を蘇らせたのではない。



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記憶から再現した。



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「記録された人生」



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だけを。



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だから。



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中身が欠けている。



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村の中央。



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古い寺。



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そこに一人の老人が座っていた。



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真之介を見ると。



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ゆっくり立ち上がる。



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「藤富の者か」



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真之介は警戒する。



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「あなたは誰だ」



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老人は答える。



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「この村の最後の村長だ」



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「あなたも死んでいるのか」



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老人は少し笑う。



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「そうだろうな」



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「だが」



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空を見る。



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「死んだという感覚がない」



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「毎朝起きる」



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「飯を食う」



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「人と話す」



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「だが」



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老人の表情が曇る。



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「夜が来ない」



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その言葉。



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真之介はぞっとした。



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永遠。



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景継が求めたもの。



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しかし。



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永遠には。



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終わりも変化もない。



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「第九は人間を救っているつもりなのか」



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老人は答えなかった。



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代わりに。



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寺の奥を指差す。



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「見れば分かる」



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寺の中。



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そこには。



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大量の記録があった。



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本。



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帳面。



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写真。



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そして。



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名前。



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何千もの名前。



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真之介は息を止める。



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ここは。



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墓ではない。



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「記憶の保管庫」



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だった。



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人間が生きた証。



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全部。



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第九が集めている。



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その時。



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一冊の本が勝手に開いた。



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白いページ。



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そこに文字が浮かぶ。



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『藤富真之介』



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真之介の顔が変わる。



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また。



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自分の記録。



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ページがめくられる。



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幼少期。



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父。



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母。



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教師になった日。



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第五の石。



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全部。



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書かれている。



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「……」



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怖かった。



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しかし。



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同時に。



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奇妙な安心感もあった。



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自分が確かに存在した証。



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誰かが覚えている。



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それは。



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人間なら誰でも欲しいもの。



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「これが第九の目的か」



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老人が答える。



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「違う」



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「これは結果だ」



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「目的?」



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老人は頷く。



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「第九は」



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「忘れられる恐怖を理解していない」



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「だから」



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「全部残そうとしている」



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真之介は黙る。



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怪物ではない。



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悪意でもない。



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ただ。



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人間を理解しようとしている。



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しかし。



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方法が間違っている。



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その時。



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寺の外から声。



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「真之介!」



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振り返る。



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美月。



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妻だった。



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しかし。



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真之介はすぐ気付いた。



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「違う」



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美月の姿をした記憶。



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彼女は悲しそうに笑う。



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「分かるのね」



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「なぜここにいる」



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記憶の美月は答える。



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「第九があなたを理解しようとしている」



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「あなたは特別だから」



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「特別?」



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「八つの石を越えた者」



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「見える者」



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「そして」



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一瞬。



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表情が変わる。



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「第九と話せる可能性がある者」



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真之介は息を止める。



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「話す?」



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「戦うんじゃなく?」



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その時。



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村全体が揺れた。



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空が割れる。



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村人たちがざわめく。



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そして。



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巨大な声。



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地面全体から響く。



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『理解できない』



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『なぜ人間は終わりを望む』



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真之介は空を見る。



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第九。



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初めて。



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直接。



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意思を示した。



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『なぜ消えることを受け入れる』



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真之介は答える。



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「消えるから」



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「今を大切にする」



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沈黙。



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そして。



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第九は問い返した。



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『ならば』



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『なぜ人間は忘れられることを恐れる』



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真之介は言葉に詰まる。



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その問いは。



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簡単ではなかった。



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なぜなら。



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人間自身が矛盾しているから。



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忘れたい。



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でも。



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忘れられたくない。



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その矛盾こそ。



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人間だった。



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(第三話・続く)

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