第二話 存在しない村
翌朝。
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真之介は目を覚ました。
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机に伏せたまま。
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蔵で朝を迎えていた。
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昨日見たもの。
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藤富景継。
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初代当主。
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数百年前に生きた人間。
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本来なら。
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存在するはずがない。
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しかし。
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真之介には分かっていた。
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あれは幽霊ではない。
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ただの幻でもない。
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第九の影響で残された。
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「記憶の人格」
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だ。
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景継は死んだ。
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だが。
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彼の思想。
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願い。
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執念。
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それらが第九に保存されている。
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「人間は死を超えられる」
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昨日の言葉が残っている。
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真之介は窓を見る。
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山の奥。
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九番目の光。
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まだ消えていない。
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むしろ。
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少しずつ大きくなっている。
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学校へ向かう途中。
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村の様子がおかしかった。
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人々が集まっている。
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「何があった」
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真之介が聞くと。
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村人の一人が答えた。
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「先生……」
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「隣村が消えました」
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「消えた?」
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真之介は眉をひそめる。
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「火事か?」
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「違います」
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村人は震えていた。
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「最初から無かったことになっているんです」
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その言葉。
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真之介は嫌な予感がした。
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すぐに山へ向かう。
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しかし。
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途中で。
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道が途切れていた。
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いや。
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道ではなく。
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記憶が途切れている。
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地図を見る。
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確かに。
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ここには村がある。
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名前もある。
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しかし。
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目の前には森しかない。
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「……」
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真之介は地面を見る。
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古い石碑。
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文字が刻まれている。
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『白川村』
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存在していた証拠。
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しかし。
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その周囲だけ。
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何かがおかしい。
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草木はある。
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鳥もいる。
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でも。
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人間だけがいない。
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まるで。
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世界から人間の記憶だけ抜け落ちた。
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その時。
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背後から声。
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「触れるな」
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黒い武者。
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いつものように現れた。
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「ここは危険だ」
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真之介は振り返る。
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「何が起きている」
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武者は答える。
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「第九が試している」
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「何を」
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「人間とは何か」
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真之介は黙る。
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第九はただ暴れているわけではない。
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理解しようとしている。
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人間を。
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記憶を。
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存在を。
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だから。
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消している。
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村の跡を調べていると。
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一冊の帳面を見つけた。
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泥に埋まっていた。
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表紙。
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『白川村記録簿』
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真之介は開く。
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最初のページ。
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村人の名前。
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人数。
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生活。
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全部記録されている。
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しかし。
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最後のページ。
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異常だった。
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名前が。
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一つずつ消えている。
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筆で書かれた文字が。
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薄くなっている。
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そして。
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最後の一行。
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『今日、村は存在しなくなった』
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真之介の手が止まる。
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村そのものではなく。
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「村という記憶」
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が消された。
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その時。
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背後から声。
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「怖いか」
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振り返る。
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景継。
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また現れた。
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真之介は睨む。
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「何をした」
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景継は首を振る。
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「私ではない」
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「第九だ」
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「あなたが作ったものだろう」
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景継は静かに言う。
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「違う」
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「私は入口を作っただけだ」
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真之介は黙る。
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「どういう意味だ」
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景継は山を見る。
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「第九は昔から存在した」
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「私はそれに触れた」
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「そして」
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「願いを伝えた」
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真之介は理解する。
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第九は。
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機械ではない。
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神でもない。
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巨大な鏡。
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人間の願いを映すもの。
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「だから」
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景継は言う。
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「今のお前たちの願いも映している」
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真之介は聞く。
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「今の人間の願い?」
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景継は答える。
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「永遠に記録されたい」
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「忘れられたくない」
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「存在した証を残したい」
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それは。
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明治の時代。
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新聞。
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写真。
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記録。
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人間が急激に求め始めたもの。
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「第九は」
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「人間の願いを叶えようとしている」
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真之介は背筋が冷える。
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叶える。
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その方法が。
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人間には理解できないだけ。
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「止める」
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真之介が言う。
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景継は微笑む。
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「なら」
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「お前は選べ」
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「守るか」
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「戦うか」
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その瞬間。
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消えた村の跡地。
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空間が歪んだ。
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何もない場所から。
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村人たちが現れる。
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笑顔。
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生活。
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普通の日常。
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しかし。
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真之介だけが分かる。
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これは。
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本物ではない。
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記憶で作られた村。
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「帰ってきた」
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村人たちは喜ぶ。
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しかし。
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一人の少女が真之介を見る。
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そして。
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泣きながら言った。
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「先生」
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「助けて」
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「私たち」
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「もう死んでいるのに」
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「生き続けています」
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真之介は息を呑んだ。
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第九は。
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死を消すために。
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まず。
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死んだ者を終われなくしていた。
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(第二話・続く)




