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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第六章 九番目の神

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第二話 存在しない村

翌朝。



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真之介は目を覚ました。



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机に伏せたまま。



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蔵で朝を迎えていた。



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昨日見たもの。



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藤富景継。



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初代当主。



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数百年前に生きた人間。



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本来なら。



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存在するはずがない。



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しかし。



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真之介には分かっていた。



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あれは幽霊ではない。



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ただの幻でもない。



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第九の影響で残された。



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「記憶の人格」



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だ。



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景継は死んだ。



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だが。



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彼の思想。



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願い。



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執念。



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それらが第九に保存されている。



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「人間は死を超えられる」



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昨日の言葉が残っている。



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真之介は窓を見る。



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山の奥。



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九番目の光。



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まだ消えていない。



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むしろ。



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少しずつ大きくなっている。



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学校へ向かう途中。



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村の様子がおかしかった。



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人々が集まっている。



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「何があった」



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真之介が聞くと。



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村人の一人が答えた。



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「先生……」



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「隣村が消えました」



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「消えた?」



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真之介は眉をひそめる。



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「火事か?」



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「違います」



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村人は震えていた。



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「最初から無かったことになっているんです」



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その言葉。



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真之介は嫌な予感がした。



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すぐに山へ向かう。



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しかし。



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途中で。



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道が途切れていた。



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いや。



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道ではなく。



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記憶が途切れている。



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地図を見る。



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確かに。



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ここには村がある。



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名前もある。



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しかし。



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目の前には森しかない。



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「……」



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真之介は地面を見る。



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古い石碑。



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文字が刻まれている。



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『白川村』



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存在していた証拠。



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しかし。



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その周囲だけ。



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何かがおかしい。



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草木はある。



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鳥もいる。



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でも。



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人間だけがいない。



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まるで。



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世界から人間の記憶だけ抜け落ちた。



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その時。



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背後から声。



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「触れるな」



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黒い武者。



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いつものように現れた。



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「ここは危険だ」



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真之介は振り返る。



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「何が起きている」



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武者は答える。



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「第九が試している」



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「何を」



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「人間とは何か」



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真之介は黙る。



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第九はただ暴れているわけではない。



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理解しようとしている。



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人間を。



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記憶を。



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存在を。



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だから。



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消している。



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村の跡を調べていると。



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一冊の帳面を見つけた。



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泥に埋まっていた。



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表紙。



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『白川村記録簿』



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真之介は開く。



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最初のページ。



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村人の名前。



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人数。



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生活。



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全部記録されている。



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しかし。



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最後のページ。



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異常だった。



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名前が。



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一つずつ消えている。



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筆で書かれた文字が。



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薄くなっている。



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そして。



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最後の一行。



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『今日、村は存在しなくなった』



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真之介の手が止まる。



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村そのものではなく。



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「村という記憶」



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が消された。



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その時。



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背後から声。



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「怖いか」



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振り返る。



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景継。



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また現れた。



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真之介は睨む。



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「何をした」



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景継は首を振る。



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「私ではない」



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「第九だ」



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「あなたが作ったものだろう」



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景継は静かに言う。



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「違う」



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「私は入口を作っただけだ」



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真之介は黙る。



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「どういう意味だ」



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景継は山を見る。



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「第九は昔から存在した」



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「私はそれに触れた」



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「そして」



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「願いを伝えた」



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真之介は理解する。



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第九は。



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機械ではない。



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神でもない。



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巨大な鏡。



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人間の願いを映すもの。



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「だから」



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景継は言う。



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「今のお前たちの願いも映している」



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真之介は聞く。



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「今の人間の願い?」



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景継は答える。



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「永遠に記録されたい」



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「忘れられたくない」



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「存在した証を残したい」



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それは。



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明治の時代。



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新聞。



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写真。



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記録。



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人間が急激に求め始めたもの。



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「第九は」



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「人間の願いを叶えようとしている」



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真之介は背筋が冷える。



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叶える。



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その方法が。



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人間には理解できないだけ。



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「止める」



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真之介が言う。



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景継は微笑む。



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「なら」



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「お前は選べ」



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「守るか」



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「戦うか」



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その瞬間。



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消えた村の跡地。



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空間が歪んだ。



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何もない場所から。



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村人たちが現れる。



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笑顔。



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生活。



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普通の日常。



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しかし。



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真之介だけが分かる。



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これは。



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本物ではない。



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記憶で作られた村。



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「帰ってきた」



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村人たちは喜ぶ。



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しかし。



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一人の少女が真之介を見る。



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そして。



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泣きながら言った。



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「先生」



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「助けて」



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「私たち」



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「もう死んでいるのに」



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「生き続けています」



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真之介は息を呑んだ。



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第九は。



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死を消すために。



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まず。



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死んだ者を終われなくしていた。



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(第二話・続く)

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