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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第五章 文明開化の怪異録

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最終話「見える者」

ゴーン……



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誰も触れていない鐘の音が。



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夜明け前の村に響いた。



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真之介は蔵の窓から山を見る。



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そこに。



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今まで存在しなかった光があった。



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八つの守り石。



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その配置は源次の記録にも。



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咲の帳面にも書かれていた。



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しかし。



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その中心でも。



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外側でもない場所。



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九つ目。



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未知の印。



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「第九……」



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真之介は呟いた。



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その瞬間。



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背後から声。



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「見つけたか」



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振り返る。



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黒い武者。



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いつからそこにいたのか。



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分からない。



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だが。



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今の真之介には。



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もう驚きはなかった。



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「知っていたのか」



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武者は黙る。



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それが答えだった。



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「なぜ言わなかった」



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真之介の声が強くなる。



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「第九の存在を知っていたなら」



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「なぜ」



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武者は静かに答えた。



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「知れば探す」



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「探せば近づく」



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「近づけば呼ばれる」



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真之介は言葉を失う。



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つまり。



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知らないこと自体が封印だった。



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人間は。



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知りたいと思う。



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理解したいと思う。



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そして。



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触れてはいけないものへ手を伸ばす。



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それが。



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藤富家が過去に犯した過ち。



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「第九は何だ」



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武者はしばらく沈黙した。



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そして。



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初めて。



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恐怖の色を見せた。



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「名前を持たないもの」



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「八つの石が守るもの」



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「記憶の始まり」



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真之介は考える。



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死者。



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記憶。



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魂。



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それらの根源。



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「人間の記憶を作ったものか」



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武者は答えない。



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しかし。



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否定もしない。



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その時。



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村から叫び声が聞こえた。



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「先生!」



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学校の方向。



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真之介と武者は走る。



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校庭。



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子供たちが集まっている。



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その中心。



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一人の少女が立っていた。



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昨日の白い着物の少女。



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しかし。



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今は違う。



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はっきりとした顔。



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そして。



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名前が分かった。



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「……咲」



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真之介は呟く。



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高橋咲。



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かつて守り石を調べ。



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記録を残した女性。



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少女の姿をした記憶。



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咲は真之介を見る。



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「あなたなら見えると思った」



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「なぜここに」



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咲は学校を見る。



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「記憶は集まる場所に来る」



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「ここは子供たちが学ぶ場所」



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「未来の記憶を作る場所」



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真之介は気付いた。



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学校。



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知識。



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記録。



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全て。



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守り石と似ている。



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人間もまた。



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記憶を保存する存在なのだ。



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咲は続ける。



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「真之介さん」



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「第五の石は止まっていません」



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「え?」



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真之介の顔が変わる。



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確かに暴走は収まった。



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しかし。



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咲は首を振る。



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「眠っただけ」



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「なぜ」



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「第九が目覚め始めたから」



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空気が変わる。



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山を見る。



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九つ目の光。



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少しずつ大きくなる。



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「どうすればいい」



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真之介が問う。



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咲は悲しそうに笑った。



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「昔の人たちも」



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「同じ質問をしました」



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「答えは?」



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沈黙。



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そして。



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咲は言った。



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「守ること」



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「ではなく」



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「向き合うこと」



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その言葉。



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真之介の心に残った。



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怪異を消す。



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封じる。



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倒す。



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今までそう考えていた。



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しかし。



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守り石は。



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敵ではない。



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人間の弱さも。



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死者の想いも。



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全部を抱えていた。



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その夜。



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村は少しずつ日常へ戻った。



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記憶を失った人々も。



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完全ではないが。



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生活を取り戻していく。



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そして。



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真之介は変わった。



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以前なら。



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怪異を否定した。



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しかし今。



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見える。



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感じる。



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理解しようとしている。



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学校の帰り道。



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真之介は一人歩く。



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夕暮れ。



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村の外れ。



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そこに。



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子供が立っていた。



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「先生」



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振り返る。



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生徒ではない。



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顔のない子供。



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真之介は驚かない。



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「どうした」



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子供は指を山へ向ける。



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「九番目が」



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「呼んでる」



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真之介は山を見る。



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闇の中。



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無数の目。



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ゆっくり開く。



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しかし。



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今度は逃げなかった。



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「行く」



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真之介は歩き出す。



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教師として。



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藤富家の人間として。



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そして。



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見える者として。



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その先にある真実を知るために。



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第五章 完



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第五章で変化したこと


真之介

→怪異否定者から「理解する者」へ変化


忘却石

→破壊対象ではなく、必要な機構と判明


守り石

→封印装置でもあると判明


藤富家

→守護者ではなく、過去に利用しようとした可能性が浮上


第九の存在

→第六章への最大の謎として登場




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