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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第五章 文明開化の怪異録

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第八話「忘却の海」

地下の闇。



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その奥に見えたもの。



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真之介は目を疑った。



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巨大。



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あまりにも巨大だった。



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山の地下に存在するはずのないもの。



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岩でもない。



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生物でもない。



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ただ。



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「存在している」



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それだけだった。



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「何だ……あれは」



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真之介の声が震える。



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黒い武者は答えない。



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ただ刀を握り直した。



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その姿を見て。



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真之介は初めて理解した。



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この武者は。



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恐れている。



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何百年。



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何も恐れなかった存在が。



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初めて。



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あれを恐れている。



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「知っているのか」



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真之介が聞く。



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長い沈黙。



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やがて武者は言った。



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「知っている」



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「だが」



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「理解してはいない」



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その言葉の重さ。



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真之介は感じた。



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守り石を作った者たちですら。



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完全には理解できなかった存在。



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そのために。



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八つの石が必要だった。



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「なら」



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真之介は白い石を見る。



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「なぜ忘却石が必要なんだ」



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武者は答える。



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「人間は忘れられないからだ」



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真之介は黙る。



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「過去」



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「死」



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「後悔」



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「失ったもの」



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武者の声は静かだった。



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「人間は全て抱える」



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「だから記憶は溜まる」



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「溜まりすぎれば」



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「形を持つ」



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真之介は理解した。



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怪異とは。



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外から来たものだけではない。



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人間自身が作り出すものもある。



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その時。



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白い石が小さく震えた。



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表面に文字が浮かぶ。



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一つ。



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また一つ。



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消えた名前が戻る。



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しかし。



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その中に。



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見覚えのある名前があった。



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「藤富宗景」



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真之介は息を止めた。



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つい数日前。



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葬儀をした人物。



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祖父。



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いや。



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宗景だけではない。



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さらに。



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「木村源次」



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「高橋咲」



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過去の人間たち。



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この石は。



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死者を呼び戻しているわけではない。



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記録している。



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存在した証を。



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真之介は気付く。



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だからこそ。



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源次の帳面が残った。



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だからこそ。



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咲の記録も消えなかった。



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記憶は消える。



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しかし。



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残す場所が必要だった。



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「記録」



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真之介は呟く。



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そして。



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ある違和感に気付いた。



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「待て」



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石の表面を見る。



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宗景。



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源次。



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咲。



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その下。



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まだ新しい文字。



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今まさに刻まれている。



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『藤富真之介』



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「……」



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背筋が冷える。



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これは予言ではない。



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記録。



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今の自分が。



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書き込まれている。



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つまり。



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この石は。



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未来まで記録している。



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「俺が死ぬのか」



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武者は否定しない。



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「記録は死を意味しない」



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「だが」



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そこで止まる。



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「何だ」



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武者は暗闇を見る。



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「記録されたものは」



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「見られる」



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その瞬間。



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真之介の頭に声が響いた。



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――見つけた。



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一瞬。



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地下全体が暗くなる。



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白い石の光が消える。



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忘れられた記憶たちがざわめく。



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「来る」



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武者が刀を抜く。



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真之介は構える。



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しかし。



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現れたものは。



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敵ではなかった。



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一人の女性。



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古い着物。



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顔はぼやけている。



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「……あなたは」



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真之介は呟く。



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なぜか。



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知っている気がする。



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女性は悲しそうに笑った。



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「やっと見えるのね」



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声。



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どこか懐かしい。



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「誰だ」



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女性は答える。



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「あなたのお母さんよ」



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時間が止まった。



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真之介の母。



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死んだ母。



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しかし。



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第四章で理解した。



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これは本人ではない可能性。



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記録。



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残滓。



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真之介は警戒する。



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「違う」



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女性は悲しそうに目を伏せた。



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「そうね」



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「私は本物じゃない」



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その答えに。



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逆に驚いた。



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怪異は嘘をつくと思っていた。



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しかし。



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彼女は自分を偽らない。



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「あなたに伝えるために残った」



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「何を」



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女性は暗闇を見る。



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「藤富家が隠したこと」



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真之介の表情が変わる。



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「隠した?」



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女性は頷く。



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「守り石は」



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「守るためだけに作られたんじゃない」



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沈黙。



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そして。



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最後の言葉。



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「封じるためでもある」



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地下深く。



---


巨大な存在が。



---


ゆっくり動いた。



---


(第八話・続く)

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