第七話「地下の案内人」
「藤富……」
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そこまでだった。
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あと一文字。
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あと一息。
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なのに。
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その先が出てこない。
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自分の名前なのに。
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自分自身なのに。
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遠い。
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まるで。
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誰か他人の名前を思い出そうとしているようだった。
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巨大な影が近づく。
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その身体は無数の記憶で作られている。
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誰かの人生。
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誰かの後悔。
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誰かの忘れられた時間。
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全てが混ざり合っている。
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「忘れろ」
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無数の声。
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「忘れれば苦しくない」
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その言葉。
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一瞬だけ魅力的に聞こえた。
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忘れる。
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苦しみも。
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恐怖も。
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過去も。
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全部なくなる。
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だが。
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真之介は気付いた。
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それは救いではない。
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自分ではなくなることだ。
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「違う」
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震える声。
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「忘れることと」
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「消えることは違う」
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影が止まった。
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「……」
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真之介は続ける。
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「人は忘れる」
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「でも」
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「忘れたものまで無かったことにはならない」
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それは教師として。
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生徒たちへ伝えてきたことだった。
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学んだこと。
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経験。
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出会い。
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全部が人間を作る。
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忘れても。
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どこかに残る。
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だから生きていける。
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黒い武者が静かに言った。
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「思い出したか」
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真之介は顔を上げる。
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「……何を」
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武者を見る。
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「お前自身を」
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その瞬間。
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頭の中で切れていたものが繋がった。
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母の声。
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父の背中。
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学校。
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生徒。
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そして。
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自分の名前。
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「藤富真之介」
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はっきり言った。
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地下空間に響く。
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すると。
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巨大な影が苦しみ始めた。
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「名前……」
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「名前……」
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無数の声が揺れる。
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真之介は理解する。
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忘却石が奪っていたもの。
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それは単なる記憶ではない。
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「自分を定義するもの」。
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名前。
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関係。
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歴史。
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存在の証明。
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それを奪われた記憶たちは。
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自分が何者か分からなくなっていた。
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だから怪異になった。
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「お前は誰だ」
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真之介は影へ問いかけた。
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影が揺れる。
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「……」
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「私は……」
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声が変化する。
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老人。
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女性。
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子供。
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武士。
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無数の声。
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「分からない」
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その答えに。
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真之介は苦しくなった。
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恐ろしい存在。
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しかし元は。
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誰かだった。
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その時。
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白い石の奥で。
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小さな光が灯った。
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少女が近づく。
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「この人を助けて」
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真之介を見る。
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「みんなを」
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「忘れたままじゃなく」
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「終わらせて」
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少女の姿が薄くなる。
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「待て」
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真之介が手を伸ばす。
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「君は……」
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少女は少し笑った。
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「たぶん」
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「昔の私」
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そして消えた。
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その瞬間。
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白い石に刻まれていた名前が一斉に光る。
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消えていた名前。
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忘れられた名前。
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全てが浮かび上がる。
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しかし。
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消えたものが戻ったわけではない。
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正確には。
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「記録された」。
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真之介は気付く。
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これが本来の役割。
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忘却とは。
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消滅ではない。
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保存した上で。
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手放すこと。
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その時。
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地下全体に低い音が響いた。
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ゴォォォ……
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第一の石。
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第二の石。
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第三の石。
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第四の石。
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第五の石。
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全てが反応する。
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しかし。
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今までとは違う。
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暴走ではない。
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流れが戻っている。
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影は少しずつ小さくなる。
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人の形へ戻っていく。
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最後に。
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一人の老人の姿になった。
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「……やっと」
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老人は呟いた。
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「忘れられる」
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真之介は尋ねる。
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「あなたは誰ですか」
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老人は微笑む。
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「それも」
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「もう必要ない」
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光に包まれる。
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そして消えた。
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静寂。
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地下に残ったのは。
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真之介。
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黒い武者。
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そして白い石だけ。
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だが。
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異変は終わっていなかった。
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真之介は気付く。
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第五の石だけではない。
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地下深く。
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さらに奥。
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何かが動いている。
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黒い武者が言う。
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「見るな」
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しかし遅かった。
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真之介の新しい目は。
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闇の奥を捉えた。
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そこに。
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巨大な何か。
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守り石より古い存在。
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八つの石が守っているもの。
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その影。
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真之介は呟く。
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「……あれは」
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武者が答える。
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「まだ名を持たないもの」
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そして。
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初めて告げた。
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「第五の石の異常は終わった」
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「だが」
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「本当の問題はこれからだ」
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(第七話・続く)




