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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第五章 文明開化の怪異録

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第七話「地下の案内人」

「藤富……」



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そこまでだった。



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あと一文字。



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あと一息。



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なのに。



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その先が出てこない。



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自分の名前なのに。



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自分自身なのに。



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遠い。



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まるで。



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誰か他人の名前を思い出そうとしているようだった。



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巨大な影が近づく。



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その身体は無数の記憶で作られている。



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誰かの人生。



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誰かの後悔。



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誰かの忘れられた時間。



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全てが混ざり合っている。



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「忘れろ」



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無数の声。



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「忘れれば苦しくない」



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その言葉。



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一瞬だけ魅力的に聞こえた。



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忘れる。



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苦しみも。



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恐怖も。



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過去も。



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全部なくなる。



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だが。



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真之介は気付いた。



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それは救いではない。



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自分ではなくなることだ。



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「違う」



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震える声。



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「忘れることと」



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「消えることは違う」



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影が止まった。



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「……」



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真之介は続ける。



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「人は忘れる」



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「でも」



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「忘れたものまで無かったことにはならない」



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それは教師として。



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生徒たちへ伝えてきたことだった。



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学んだこと。



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経験。



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出会い。



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全部が人間を作る。



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忘れても。



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どこかに残る。



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だから生きていける。



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黒い武者が静かに言った。



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「思い出したか」



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真之介は顔を上げる。



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「……何を」



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武者を見る。



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「お前自身を」



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その瞬間。



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頭の中で切れていたものが繋がった。



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母の声。



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父の背中。



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学校。



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生徒。



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そして。



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自分の名前。



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「藤富真之介」



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はっきり言った。



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地下空間に響く。



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すると。



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巨大な影が苦しみ始めた。



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「名前……」



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「名前……」



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無数の声が揺れる。



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真之介は理解する。



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忘却石が奪っていたもの。



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それは単なる記憶ではない。



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「自分を定義するもの」。



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名前。



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関係。



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歴史。



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存在の証明。



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それを奪われた記憶たちは。



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自分が何者か分からなくなっていた。



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だから怪異になった。



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「お前は誰だ」



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真之介は影へ問いかけた。



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影が揺れる。



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「……」



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「私は……」



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声が変化する。



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老人。



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女性。



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子供。



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武士。



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無数の声。



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「分からない」



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その答えに。



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真之介は苦しくなった。



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恐ろしい存在。



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しかし元は。



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誰かだった。



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その時。



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白い石の奥で。



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小さな光が灯った。



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少女が近づく。



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「この人を助けて」



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真之介を見る。



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「みんなを」



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「忘れたままじゃなく」



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「終わらせて」



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少女の姿が薄くなる。



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「待て」



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真之介が手を伸ばす。



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「君は……」



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少女は少し笑った。



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「たぶん」



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「昔の私」



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そして消えた。



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その瞬間。



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白い石に刻まれていた名前が一斉に光る。



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消えていた名前。



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忘れられた名前。



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全てが浮かび上がる。



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しかし。



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消えたものが戻ったわけではない。



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正確には。



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「記録された」。



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真之介は気付く。



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これが本来の役割。



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忘却とは。



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消滅ではない。



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保存した上で。



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手放すこと。



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その時。



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地下全体に低い音が響いた。



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ゴォォォ……



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第一の石。



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第二の石。



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第三の石。



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第四の石。



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第五の石。



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全てが反応する。



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しかし。



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今までとは違う。



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暴走ではない。



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流れが戻っている。



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影は少しずつ小さくなる。



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人の形へ戻っていく。



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最後に。



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一人の老人の姿になった。



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「……やっと」



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老人は呟いた。



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「忘れられる」



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真之介は尋ねる。



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「あなたは誰ですか」



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老人は微笑む。



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「それも」



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「もう必要ない」



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光に包まれる。



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そして消えた。



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静寂。



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地下に残ったのは。



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真之介。



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黒い武者。



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そして白い石だけ。



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だが。



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異変は終わっていなかった。



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真之介は気付く。



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第五の石だけではない。



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地下深く。



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さらに奥。



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何かが動いている。



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黒い武者が言う。



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「見るな」



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しかし遅かった。



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真之介の新しい目は。



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闇の奥を捉えた。



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そこに。



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巨大な何か。



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守り石より古い存在。



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八つの石が守っているもの。



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その影。



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真之介は呟く。



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「……あれは」



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武者が答える。



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「まだ名を持たないもの」



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そして。



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初めて告げた。



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「第五の石の異常は終わった」



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「だが」



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「本当の問題はこれからだ」



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(第七話・続く)

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