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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第五章 文明開化の怪異録

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第四話「忘却石」

朝になっても。



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真之介の中から昨夜の光景は消えなかった。



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黒い武者。



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目のない女。



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記憶を失っていく村人。



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全てが現実だった。



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「……認めるしかないか」



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真之介は机の上に並べた記録を見る。



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教師として。



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今まで多くのことを疑ってきた。



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噂。



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迷信。



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根拠のない伝承。



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しかし。



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昨日から起きていることには。



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証拠がある。



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記録。



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目撃者。



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そして。



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自分自身の体験。



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真之介は源次の帳面を開く。



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第四章で源次が残した最後の記録。



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その続き。



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崩落前に書かれた部分。



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『第五の石について』



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真之介は読む。



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『名は忘却石』



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『役割は消すこと』



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手が止まる。



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消す。



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あまりにも単純な言葉。



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だが。



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その意味は恐ろしい。



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続きを読む。



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『人は死ぬ』



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『死者は残る』



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『残ったものは流れなければならない』



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『その最後に必要なのが忘却』



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真之介は考える。



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死者の記憶。



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生者の記憶。



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全てが残り続けたら。



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世界はどうなる。



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答えは今の村だ。



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過去が現在に溢れる。



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死人が帰る。



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生きた人間が自分を失う。



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「忘れることも必要なのか」



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今まで考えたこともない。



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人間は忘れる。



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だから前へ進める。



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だから生きられる。



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その仕組みを。



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石が担っていた。



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その時。



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学校から使いが来た。



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「先生!」



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若い職員が息を切らしている。



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「村の診療所で騒ぎです」



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真之介はすぐ向かった。



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診療所。



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中は混乱していた。



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一人の老人が叫んでいる。



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「ここはどこだ!」



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「俺は誰だ!」



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医師が困惑する。



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「昨日までは普通だったんですが……」



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真之介は老人を見る。



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その瞬間。



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背後に何かが見えた。



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黒い影。



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老人の背中に張り付いている。



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真之介は息を止める。



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今までなら。



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見えなかった。



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しかし今は。



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はっきり見える。



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影は老人の頭に手を伸ばしている。



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「離れろ」



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思わず口に出す。



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周囲の人間が驚く。



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「先生?」



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真之介は気にせず。



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影へ近づく。



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すると。



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影が顔を向けた。



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顔はない。



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しかし。



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感情が伝わる。



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怒り。



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いや。



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飢え。



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影は記憶を食べている。



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真之介は机の上にあった鏡を取った。



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昨夜の目のない女。



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同じような存在なら。



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何か反応があるはず。



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鏡を向ける。



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影が揺れる。



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そして。



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老人から離れた。



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その瞬間。



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老人が倒れる。



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「大丈夫ですか!」



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村人が駆け寄る。



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数分後。



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老人はゆっくり目を開けた。



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「……ここは?」



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医師が尋ねる。



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「名前は?」



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老人は答える。



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「山田庄吉」



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周囲が安堵する。



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記憶が戻った。



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しかし。



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真之介は気付いた。



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戻ったのは。



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一部だけ。



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老人の目に。



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何かが欠けている。



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「何を忘れた」



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真之介が呟く。



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老人は首を傾げる。



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「何のことだ?」



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そして。



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静かに言った。



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「息子の顔が思い出せない」



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空気が凍る。



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息子は。



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隣に立っていた。



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「父さん……」



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老人は彼を見る。



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知らない人を見る目で。



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「あなたは……誰だ?」



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息子の顔から血の気が引いた。



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真之介は理解した。



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忘却石は。



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昨日の記憶だけではない。



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人間の中で。



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最も深い場所まで触れている。



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家族。



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愛情。



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人生。



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そこまで消す。



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その夜。



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真之介は一人で山へ向かった。



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第五の石の場所を確かめるため。



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途中。



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月明かりの下で。



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黒い武者が現れる。



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「行くのか」



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真之介は答える。



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「行かなければ、もっと消える」



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武者はしばらく黙る。



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そして。



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初めて少しだけ頷いた。



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「ならば見るがいい」



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「人間が作ったものの正体を」



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山の奥。



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誰も近づかなかった場所。



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そこには。



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白い石の入口があった。



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表面には。



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無数の名前。



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しかし。



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真之介が近づいた瞬間。



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一つの名前が消えた。



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その名前。



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藤富真之介。



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自分の名前だった。



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(第四話・続く)

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