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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第五章 文明開化の怪異録

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第三話「消える記憶」

女の影は笑っていた。



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だが。



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その表情は人間のものではなかった。



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口元だけが動いている。



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喜んでいるようにも。



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悲しんでいるようにも見える。



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しかし。



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目がない。



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そこだけが異常だった。



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真之介は少年の前に立った。



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「下がれ」



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教師として。



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考えるより先に身体が動いた。



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少年を背後へ隠す。



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影は動かない。



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ただこちらを見ている。



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いや。



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見ているはずがない。



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目がないのだから。



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その時。



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影の口から声が漏れた。



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「思い出して」



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真之介の顔が変わる。



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声は女性。



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しかし。



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聞き覚えがない。



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「誰だ」



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問いかける。



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影は答えない。



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ただ繰り返す。



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「思い出して」



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その瞬間。



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頭の奥に違和感が走った。



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真之介は一瞬。



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何かを忘れた。



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いや。



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忘れそうになった。



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自分の名前。



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父親の顔。



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母親の声。



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大切な何か。



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それが薄くなる。



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「……っ」



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真之介は頭を押さえた。



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危険だ。



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これは怪我ではない。



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記憶そのものに触れている。



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源次の記録。



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『忘却』



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その言葉が浮かぶ。



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影はゆっくり近づく。



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少年が震える。



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「先生……」



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真之介は咄嗟に机を掴み。



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床へ倒した。



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ガタン!



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大きな音。



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影が一瞬だけ揺れる。



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その隙に。



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少年の手を引いて外へ出た。



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走る。



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振り返らない。



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蔵から離れる。



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村の中心まで来たところで。



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ようやく止まった。



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少年は泣いていた。



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「母さんじゃなかった」



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何度も繰り返す。



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「母さんの顔だったけど」



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「違った」



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真之介は黙る。



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教師として。



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「怖かったな」



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と言うしかない。



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だが。



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自分自身も理解していた。



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あれは。



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説明できない。



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翌日。



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真之介は村の調査を続けた。



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記録する。



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誰が。



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いつ。



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何を見たか。



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しかし。



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新しい異変が起きた。



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村人が。



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自分の記録を忘れ始めた。



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昨日書いた日記。



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読めない。



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自分の字なのに。



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意味が分からない。



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店主が。



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長年の商売方法を忘れる。



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農夫が。



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畑の場所を忘れる。



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そして。



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一番恐ろしいこと。



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家族を忘れる人が出た。



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「あなたは誰ですか」



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妻に向かって言う男。



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村は混乱した。



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真之介は原因を探る。



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そして気付いた。



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記憶を失う順番がある。



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まず。



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昨日。



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次に。



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数日前。



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数年前。



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最後に。



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最も大切な記憶。



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人との繋がり。



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「……奪われている」



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真之介は呟く。



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誰かが。



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いや。



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何かが。



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記憶を食べている。



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その夜。



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蔵へ戻った。



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源次の帳面。



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咲の帳面。



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二つを並べる。



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すると。



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今まで気付かなかった共通点。



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二つの記録。



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同じ場所を示していた。



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山の奥。



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第四の石が眠る場所。



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そして。



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そのさらに奥。



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新しい印。



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第五。



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真之介は息を止める。



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「第五の石……」



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その時。



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背後から声。



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「見つけたか」



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真之介は振り返る。



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誰もいない。



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しかし。



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窓の外。



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月明かりの下。



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黒い武者が立っていた。



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百年前。



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源次の前に現れた存在。



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本来なら。



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見えるはずがないもの。



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なのに。



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今。



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真之介には見えている。



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武者は静かに言った。



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「お前はまだ知らない」



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「忘却石は、死者だけのものではない」



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真之介の顔が固まる。



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「どういう意味だ」



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武者は山を見る。



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「人間そのものを消す」



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風が吹く。



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次の瞬間。



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武者の姿は消えていた。



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残された真之介は。



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初めて認めた。



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これは迷信ではない。



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存在している。



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そして。



---


自分は。



---


見える側になってしまった。



---


(第三話・続く)

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