第九話「墓場化する村」
パキン――
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乾いた音だった。
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それは大きな崩壊音ではない。
雷鳴でもない。
地震でもない。
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しかし源次は理解した。
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今の音は。
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何百年も続いてきた均衡が崩れる音だった。
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留魂石の表面。
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一本だった亀裂が広がっていく。
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二本。
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三本。
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四本。
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無数に。
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まるで氷が割れるように。
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宗景の顔色は完全に失われていた。
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「まずい……」
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武者は祭壇の前に立ったまま動かない。
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だがその姿が少しずつ薄くなっていた。
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留魂石が不安定になるほど。
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武者もまた不安定になる。
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源次は気付く。
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彼も第四の石によって維持されている。
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留魂石の一部なのだ。
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再び悲鳴が聞こえる。
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今度は近い。
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石室の外。
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源次は走り出した。
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宗景も後を追う。
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谷を登る。
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山道を駆ける。
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そして村へ戻った時。
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二人は言葉を失った。
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村が変わっていた。
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いや。
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正確には。
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“重なっていた”。
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家の前に老人が立っている。
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しかしその老人は十年前に死んでいる。
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井戸のそばに若い娘がいる。
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しかしその娘は三年前に病で亡くなった。
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畑の中には子供たちがいる。
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だが誰も喋らない。
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誰も動かない。
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ただ立っている。
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そこに。
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存在している。
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源次の全身が震えた。
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「なんだ……これは」
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宗景が答える。
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「固定だ」
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源次は振り返る。
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宗景の目には絶望しかなかった。
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「第四の石は魂を留める」
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「だから死者が消えなくなる」
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「だが今は違う」
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宗景は周囲を見回す。
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村全体を。
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「留める力が暴走している」
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源次は息を呑む。
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つまり。
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本来なら地下へ流れるはずの死。
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循環するはずの記録。
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それらが全て。
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現世に留まっている。
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死者の渋滞。
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死の滞留。
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それが今の村だった。
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その時。
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一人の女が現れた。
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源次は凍りつく。
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母だった。
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十年前に亡くなった母。
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間違いない。
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顔も。
声も。
姿も。
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母そのもの。
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女はゆっくり歩いてくる。
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源次の前で止まる。
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そして。
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微笑んだ。
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「源次」
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声が出ない。
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心が揺れる。
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目の前にいる。
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会いたかった人が。
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だが。
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何かがおかしい。
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母は源次を見ていない。
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正確には。
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認識していない。
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ただ。
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記録された動作を再生している。
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書物を読むように。
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決められた言葉を話している。
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源次は理解する。
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これは母ではない。
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母の記録だ。
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母だった情報だ。
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それでも。
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涙が出た。
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宗景が肩を掴む。
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「見るな」
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源次は目を閉じる。
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そして気付く。
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周囲の村人たちも同じだった。
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死者に呼ばれている。
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妻は亡き夫へ。
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親は亡き子へ。
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子は亡き親へ。
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誰もが動けなくなっている。
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それは攻撃ではない。
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誘惑だった。
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最も危険な形の。
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その時。
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山が鳴った。
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ドン。
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ドン。
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ドン。
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今までで最も大きい。
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地面が揺れる。
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家々が軋む。
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そして。
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源次は見た。
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山の斜面。
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無数の人影。
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何百。
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いや。
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何千。
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死者たち。
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全員が同じ方向を向いている。
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仏生堂神殿。
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地下の中心。
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そこへ向かって歩き始めた。
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ゆっくりと。
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静かに。
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音もなく。
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宗景が呟く。
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「流れが逆転している……」
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本来。
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死者は地下へ送られる。
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循環する。
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記録される。
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だが今は違う。
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地下から溢れている。
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そして集まっている。
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まるで。
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何かを迎えるために。
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その瞬間。
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黒い武者が現れた。
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村の中心。
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死者の群れの前。
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彼は初めて刀を抜く。
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錆びた長刀。
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何百年も使われていないはずの武器。
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そして静かに言った。
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「もう時間がない」
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源次は理解した。
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最終的な選択の時が来ている。
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石を放置するか。
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危険を承知で封じるか。
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どちらにしても。
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犠牲は避けられない。
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夜空には月がなかった。
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村全体が巨大な墓場となり。
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生者と死者の境界は失われつつあった。
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そして地下では。
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あの無数の目が。
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ゆっくりと開き続けていた。
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(第九話・続く)




