第七話「黒い武者の正体」
「遅すぎた」
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石室の闇の中。
黒い武者は確かにそう言った。
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源次と宗景は動けなかった。
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今まで何度も目撃されてきた存在。
だが言葉を発したという話は一度もない。
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まして人間の言葉で。
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武者はゆっくりと祭壇へ近づく。
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留魂石の表面では無数の顔が流れ続けていた。
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老人。
女。
子供。
武士。
農民。
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数え切れない。
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それら全てを見ながら武者は静かに言った。
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「増えた」
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その声には怒りも悲しみもなかった。
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ただ事実を述べている。
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源次は勇気を振り絞った。
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「お前は何者だ」
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武者は答えない。
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代わりに留魂石へ手を置いた。
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その瞬間。
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石室全体が震えた。
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ゴォォォ……
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まるで地下深くから風が吹き上がったようだった。
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源次の視界が歪む。
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景色が消える。
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石室が消える。
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闇だけが残る。
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そして。
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気づけば別の場所に立っていた。
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源次だけではない。
宗景もいた。
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二人の周囲には人々がいる。
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だが誰もこちらを見ていない。
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着ている服が違う。
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古い。
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非常に古い。
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平安時代。
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源次は本能で理解した。
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これは現実ではない。
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記録だ。
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留魂石が保存していた過去。
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目の前には村があった。
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しかし今の仏生堂ではない。
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もっと小さい。
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もっと荒れている。
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そして恐怖に支配されている。
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村人たちは何かを囲んでいた。
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若い娘。
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十五歳ほどだろうか。
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縄で縛られている。
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泣いていた。
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助けを求めていた。
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だが誰も近づかない。
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そして人々の前には。
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藤富家の先祖と思われる男が立っていた。
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彼は苦しそうな顔をしていた。
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しかし決断していた。
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「山が怒っている」
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そう言った。
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「捧げねばならぬ」
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村人たちは俯く。
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誰も反論しない。
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その時だった。
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群衆の中から一人の武士が飛び出した。
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若い。
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まだ二十代。
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「馬鹿なことをするな!」
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彼は娘を守ろうとした。
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刀を抜く。
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村人たちは後退する。
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しかし。
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遅かった。
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地面が揺れた。
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山が鳴った。
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ドン……
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ドン……
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ドン……
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源次は凍りつく。
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今と同じ音。
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地下の鼓動。
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次の瞬間。
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山が崩れた。
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土砂が村へ流れ込む。
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悲鳴。
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絶叫。
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そして。
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娘も武士も飲み込まれた。
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視界が白く染まる。
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全てが消える。
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そして再び石室。
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源次は膝をついた。
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息が苦しい。
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宗景も顔面蒼白だった。
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武者は祭壇の前に立っている。
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動かない。
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しばらく沈黙が続く。
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やがて宗景が震える声で言った。
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「最初の……犠牲」
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武者は否定しなかった。
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源次は理解する。
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この武者は。
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娘を救おうとした男だ。
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そして失敗した。
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死んだ。
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だが終われなかった。
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留魂石によって。
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記録として固定された。
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死者としてではなく。
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失敗そのものとして。
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武者は源次を見る。
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初めて感情が見えた。
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後悔。
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何百年も続く後悔。
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「救えなかった」
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小さな声だった。
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「だから始まった」
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源次は息を呑む。
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「何がだ」
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武者は答える。
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「契約だ」
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石室の空気が変わる。
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宗景の顔色がさらに悪くなる。
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契約。
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それは藤富家の記録にも何度も出てくる言葉。
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しかし詳細は残されていない。
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武者は続けた。
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「封印ではない」
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「供物でもない」
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「取引だ」
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その瞬間。
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留魂石が激しく脈動した。
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ドン!
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石室が揺れる。
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壁の亀裂が広がる。
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天井から土が落ちる。
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宗景が叫ぶ。
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「まずい!」
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源次も異変に気付く。
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留魂石の表面。
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顔の数が増えている。
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急激に。
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何十。
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何百。
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何千。
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石に収まりきらない。
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押し出される。
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溢れる。
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そして。
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顔たちが一斉にこちらを見た。
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源次の背筋が凍る。
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全ての顔が同じ表情だった。
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恐怖。
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絶望。
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そして。
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警告。
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その時。
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武者が振り返る。
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初めて強い声を出した。
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「見上げるな!」
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源次は反射的に天井を見る。
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そして後悔した。
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天井の裂け目。
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その向こう。
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はるか地下。
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暗闇の奥。
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そこに無数の目があった。
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数え切れない。
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巨大なものの一部。
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それがゆっくりと開いていた。
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目覚めるように。
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(第七話・続く)




