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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第四章:黒船の年、亡霊の山(1853)

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第六話「留魂石」

鐘の音は止まなかった。



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ゴーン……



---


ゴーン……



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石室の奥から響いてくる。



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耳で聞いている音ではない。


頭の内側で鳴っている。



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源次は思わず耳を塞いだ。


しかし変わらない。



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宗景も顔をしかめている。



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「聞こえるのか」



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「……ああ」



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それだけで十分だった。


幻聴ではない。


二人とも聞いている。



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石室の中へ足を踏み入れる。



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空気が変わった。



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外の山とは別世界だった。



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湿っている。


だが腐臭はない。



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むしろ妙に清潔だ。



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何百年も閉ざされていたはずなのに。



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まるで昨日掃除されたかのように。



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床には円形の模様。



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幾重にも重なる輪。



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その中心へ向かって伸びる線。



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源次は石工として直感する。



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これは装飾ではない。



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構造図だ。



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何かの流れを示している。



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「見ろ」



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宗景が指差した。



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奥の祭壇。



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そこに石があった。



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高さは人の胸ほど。



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黒とも白ともつかない色。



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表面は滑らか。



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しかし見ていると模様が変わる。



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いや。



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模様ではない。



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顔だった。



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老人。


子供。


女。


武士。


僧侶。



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無数の顔が石の表面を流れていく。



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源次は息を呑んだ。



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その数は増え続けている。



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終わりがない。



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宗景が震える声で言った。



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「留魂石……」



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第四の守り石。



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源次は近づく。



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すると石の中から声が聞こえた。



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助けてくれ。



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帰りたい。



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寒い。



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母さん。



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様々な声。



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男。


女。


老人。


子供。



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何百もの声。



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何千もの声。



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源次は思わず後退した。



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だが宗景は首を振る。



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「違う」



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「何がだ」



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「これは本人たちじゃない」



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源次は石を見る。



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確かにおかしい。



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声は感情を持っている。


だが生命を感じない。



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まるで書物の一節を読んでいるような。



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誰かが再生しているだけのような。



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宗景が呟く。



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「記録だ」



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「……記録?」



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「死者そのものではない」



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「死者の残滓だ」



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咲の帳面の言葉が蘇る。



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「死者は消えていない」



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違う。



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正確には。



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「死の記録が消えていない」



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源次は石の周囲を調べ始める。



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すると祭壇の下に刻まれた文字を発見した。



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古い。



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非常に古い。



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だが読める。



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藤富家の古文書に近い。



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源次は声に出して読む。



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「流るる魂を留め」



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「留まる魂を記し」



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「記されし魂を巡らす」



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そこで文章は途切れていた。



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宗景が顔を上げる。



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理解してしまった。



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第一の石。


死の記録。



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第二の石。


循環。



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そして第四の石。


固定。



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全て繋がっている。



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別々の封印ではない。



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一つの仕組み。



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死を処理する巨大な構造。



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その瞬間。



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石室が揺れた。



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ドン……



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低い音。



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地鳴りではない。



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何かが動いた。



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地下で。



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もっと深い場所で。



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源次は背筋が凍る。



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その音には覚えがあった。



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第三章。


咲の帳面に書かれていた。



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「地下は呼吸する」



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ドン……



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再び。



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今度は近い。



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石室の壁に亀裂が走る。



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宗景が叫ぶ。



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「まずい!」



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留魂石の表面が変化していた。



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無数の顔が浮かび上がる。



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次々と。



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まるで中から押し出されるように。



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老人。


子供。


女。


武士。



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その中に。



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一つだけ見覚えのある顔があった。



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源次は凍りつく。



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それは。



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数年前に亡くなった父だった。



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石の中から。



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父がこちらを見ていた。



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何も言わない。



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ただ見ている。



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それだけなのに。



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源次の足は動かない。



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石が囁く。



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帰れ。



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帰れ。



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帰れ。



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源次は頭を押さえた。



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違う。



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これは父ではない。



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父の記録だ。



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残された情報だ。



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そう理解しても。



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心は揺れる。



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宗景が源次の肩を掴む。



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「見るな!」



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その瞬間。



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石の中の父の顔が崩れた。



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砂のように。



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そして別の顔へ変わる。



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知らない女。



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知らない老人。



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知らない子供。



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終わりなく。



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入れ替わる。



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源次はようやく理解した。



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この石は魂を閉じ込めているのではない。



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魂を“固定”している。



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死という現象を。



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終わらせないために。



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その時。



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石室の奥。



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さらに奥の闇から。



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足音が聞こえた。



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コツ……



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コツ……



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誰かが歩いてくる。



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宗景の顔色が変わる。



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源次も振り返る。



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闇の向こう。



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そこに立っていたのは。



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あの黒い武者だった。



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そして彼は初めて。



---


はっきりと口を開いた。



---


「遅すぎた」



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(第六話・続く)

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