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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第三章:仏生堂起動(1840・天保の飢え)

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第八話「藤富家の罪」

ドクン。



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大地が脈打つ。



---


ドクン。



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再び。



---


咲は立っていることさえ苦しくなっていた。


足元の地面が生きているように感じる。



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いや。



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生きているのかもしれない。



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この土地そのものが。



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広場にいた村人たちも異変に気付き始めていた。



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「何だ……?」



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「地震か……?」



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「違う……」



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老人が震える声で呟く。



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「昔も聞いた」



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全員が振り返る。



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老人は顔面蒼白だった。



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「子供の頃……一度だけ……」



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老人の目には明らかな恐怖があった。



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「山が鳴った夜だ」



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宗景が老人を見る。



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老人は続ける。



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「次の日……三十人消えた」



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沈黙。



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風だけが吹く。



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黒い柱が空でうごめいている。



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咲は僧へ視線を戻した。



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最初の管理者。



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そう名乗った男。



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男は相変わらず静かだった。



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まるで全てを知っているように。



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「藤富家は嘘をついてきた」



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その言葉に宗景が睨みつける。



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「黙れ」



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「事実だ」



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男は笑う。



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「お前たちは『土地を守るため』と言ってきた」



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鐘が鳴る。



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ゴーン……



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「『村を守るため』と言ってきた」



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黒い霧が広がる。



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「『山を鎮めるため』と言ってきた」



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咲は宗景を見る。



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宗景は何も言わない。



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否定しない。



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男は続けた。



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「半分は真実だ」



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その言葉に咲は反応した。



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半分。



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つまり。



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半分は嘘。



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男は空を見上げる。



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「だが本当の目的は違う」



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宗景が叫ぶ。



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「やめろ!」



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しかし男は止まらない。



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「集めるためだ」



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風が強くなる。



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「死を」



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「怨みを」



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「絶望を」



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「魂を」



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男の声が重なる。



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いつの間にか。



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石の顔たちも同じ言葉を呟いていた。



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「集める」



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「集める」



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「集める」



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咲の背筋が凍る。



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まるで祈り。



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いや。



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命令だ。



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男は神殿の方向を指差した。



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「二百年以上」



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「……」



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「藤富家は集め続けた」



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宗景の拳が震えている。



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咲は初めて気付く。



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怒っているのではない。



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苦しんでいる。



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男は続ける。



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「そして忘れた」



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「何をだ」



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宗景が低く問う。



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男は答える。



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「なぜ始めたかを」



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沈黙。



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ドクン。



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地面が脈打つ。



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男はゆっくりと宗景を見る。



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「お前は知っているか?」



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宗景は答えない。



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「お前の父は知らなかった」



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ドクン。



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「祖父も知らなかった」



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ドクン。



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「曾祖父も知らなかった」



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咲は気付く。



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藤富家も。



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全てを知っているわけではない。



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秘密を守っている。



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だが。



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秘密の中身を失っている。



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男は笑った。



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「管理者だけが残った」



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「……」



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「目的を忘れてな」



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その瞬間だった。



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広場の端で悲鳴が上がる。



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全員が振り向く。



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一人の村人。



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若い男。



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突然立ち上がった。



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目が虚ろだった。



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そして。



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笑っている。



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異様な笑み。



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男は空を見上げた。



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黒い柱を。



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そして言った。



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「呼んでる」



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宗景が顔色を変える。



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「下がれ!」



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だが遅い。



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若い男は歩き出した。



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神殿の方向へ。



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一歩。



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また一歩。



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村人たちが止めようとする。



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だが。



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触れた瞬間。



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男の身体が崩れた。



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咲は悲鳴を上げる。



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肉体ではない。



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影だった。



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男の身体から。



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大量の影が溢れ出す。



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黒い人影。



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何十人。



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何百人。



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宗景が歯を食いしばる。



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「第三の石が暴走している」



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咲は振り返る。



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「第三の石……」



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「人格の循環だ」



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宗景の顔は青ざめていた。



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「死者の記憶が混ざり始めている」



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その時。



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若い男の口が開く。



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何十人もの声が重なった。



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「思い出した」



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全員が凍り付く。



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「我らは忘れていた」



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石の顔たちも喋る。



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「我らは封じられていた」



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黒い柱がうごめく。



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「我らは集められていた」



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そして。



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一斉に笑った。



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「餌として」



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その言葉を聞いた瞬間。



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宗景の顔色が変わった。



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咲も理解する。



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怨霊を封じていたのではない。



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怨霊を育てていた。



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そして。



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その怨霊すら。



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何かの餌だった。



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ドクン。



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今までで最大の鼓動。



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地面が大きく揺れる。



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神殿の方向から。



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巨大な亀裂が走った。



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山肌が裂ける。



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土砂が崩れる。



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木々が倒れる。



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そして。



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その裂け目の奥に。



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何か巨大なものが見えた。



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暗闇の中。



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無数の目。



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数え切れないほどの目が。



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ゆっくりと開いていく。



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咲は理解した。



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八つの守り石。



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藤富家。



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怨霊。



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生贄。



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全ては。



---


あれのためだった。



---


そして。



---


その巨大な存在は。



---


咲の方を見た。



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(第八話・続く)

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