第七話 異端の僧
その夜。
徳蔵は眠れなかった。
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藤富宗胤。
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藤富宗景。
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同じ一族でありながら。
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まるで考え方が違う。
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宗胤は封印を守ろうとしている。
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宗景は真実を暴こうとしている。
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どちらが正しいのか。
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徳蔵にはまだ分からない。
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ただ一つだけ言えることがあった。
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どちらも嘘をついていない。
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だからこそ厄介だった。
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翌朝。
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徳蔵は宗胤に呼ばれた。
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場所は屋敷の裏庭。
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そこには見慣れない人物が立っていた。
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僧だった。
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年齢は六十近い。
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痩せている。
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背中は少し曲がっている。
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だが。
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目だけは異様だった。
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鋭い。
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まるで鷹のようだった。
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宗胤が紹介する。
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「空円殿です」
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僧は軽く頭を下げた。
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「初めまして」
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声は穏やかだった。
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しかし。
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徳蔵は妙な違和感を覚える。
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この男。
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何かを知っている。
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そう感じた。
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空円は徳蔵を見る。
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そして。
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開口一番こう言った。
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「庄吉殿によく似ておられる」
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徳蔵の表情が変わる。
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「父を知っているのか」
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空円は頷いた。
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「最後に会った人間の一人です」
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徳蔵の鼓動が速くなる。
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父の最期。
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知っているのか。
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徳蔵は一歩前へ出た。
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「教えてくれ」
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「父に何があった」
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空円は少し黙る。
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そして。
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静かに言った。
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「真実に近づきすぎたのです」
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風が吹く。
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庭木が揺れる。
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空円の目は遠くを見ていた。
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まるで十年前を思い出しているようだった。
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「庄吉殿は神殿へ辿り着いた」
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「その先も見た」
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徳蔵は息を呑む。
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父の日記には書かれていない部分。
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その先。
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空円は続ける。
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「神殿の奥には石があった」
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徳蔵の目が鋭くなる。
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守り石。
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直感だった。
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空円は頷いた。
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「恐らく守り石の一つです」
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宗胤も黙って聞いている。
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この話を聞くのは初めてではないらしい。
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空円は続ける。
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「庄吉殿は破壊しようとした」
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徳蔵は驚く。
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父が。
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石を壊そうとした。
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「何故だ」
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空円は答える。
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「苦しむ霊を救うためです」
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沈黙。
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それは。
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庄吉らしい理由だった。
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見知らぬ人間でも助けようとする。
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それが父だった。
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空円は目を閉じる。
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「しかし」
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「壊せなかった」
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「方法が分からなかったのです」
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徳蔵は宗景の話を思い出す。
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壊せる。
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だが方法が不明。
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記録は消されている。
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全て繋がっていた。
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その時。
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空円が懐から木札を取り出した。
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古い。
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かなり古い。
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表面には文字が刻まれている。
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徳蔵は受け取る。
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そこにはこう書かれていた。
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『縛魂』
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徳蔵は眉をひそめる。
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「縛る魂?」
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空円は頷く。
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「守り石の役割です」
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徳蔵は木札を見つめる。
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空円は続けた。
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「世間では封印と呼ばれている」
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「ですが正確には違います」
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「どう違う」
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空円は静かに言った。
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「閉じ込めているのではない」
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「縛っているのです」
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徳蔵は理解できない。
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空円は地面に棒で円を書く。
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中央に点。
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周囲に八つの点。
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昨夜見た図と同じだった。
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「中央に怨霊の核がある」
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「その周囲を八つの石が支える」
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徳蔵は頷く。
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空円は続ける。
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「石は檻ではない」
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「鎖です」
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その言葉に。
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徳蔵は初めて構造を理解した。
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封印ではない。
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拘束。
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だから。
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石を壊せば。
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魂は解放される。
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その時だった。
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突然。
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庭の外で悲鳴が上がった。
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女の悲鳴。
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使用人達の叫び。
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宗胤が振り返る。
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「何事だ!」
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家人が駆け込んでくる。
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顔面蒼白だった。
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「旦那様!」
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「死人です!」
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空気が変わる。
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徳蔵は立ち上がる。
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「どこだ!」
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「村の入り口です!」
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「死人が集まっています!」
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宗胤の顔色が変わる。
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「何人だ」
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家人は震えていた。
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そして。
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こう答えた。
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「分かりません」
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「ですが」
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「今まで見たことがない数です」
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徳蔵は刀を掴む。
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胸騒ぎがした。
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これまでとは違う。
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何かが起きている。
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その時。
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空円がぽつりと呟いた。
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「始まったかもしれません」
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徳蔵は振り返る。
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「何がだ」
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空円の表情は険しかった。
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そして。
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ゆっくりと答えた。
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「集霊です」
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徳蔵は聞き返す。
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「集霊?」
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空円は頷く。
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「何者かが」
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「意図的に霊を集め始めています」
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宗胤の顔から血の気が引いた。
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徳蔵は気付く。
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宗胤はその言葉を知っている。
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そして恐れている。
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集霊。
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その意味を。
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第二章 第七話
「異端の僧」終
第八話「集霊の夜」へ続く。




