第六話 利用派の男
その日の夕方。
徳蔵は藤富家の客間へ通されていた。
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目の前には茶が置かれている。
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だが。
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手を付ける気にはなれなかった。
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頭の中が整理できない。
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八つの守り石。
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怨霊。
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奉納記録。
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そして。
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「魂は解放されぬ」
という一文。
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父が命を懸けて追ったものは。
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単なる怪談ではなかった。
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徳蔵は確信していた。
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その時だった。
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廊下から足音が聞こえる。
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ゆっくり。
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迷いなく。
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近づいてくる。
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襖が開いた。
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入ってきた男を見て。
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宗胤の表情がわずかに曇った。
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四十代半ば。
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背は高い。
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痩せている。
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鋭い目。
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整った顔立ち。
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どこか蛇を思わせる男だった。
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男は徳蔵を見る。
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そして微笑んだ。
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「初めまして」
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「西村徳蔵殿」
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徳蔵は立ち上がる。
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宗胤が静かに言う。
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「藤富宗景です」
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徳蔵の目が細くなる。
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昨夜。
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死人の群れの中で名前だけ聞いた男。
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利用派。
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宗胤と対立する人物。
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宗景は座る。
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まるで自分の家のように。
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いや。
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実際に自分の家だった。
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「話は聞いています」
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「庄吉殿のご子息だとか」
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徳蔵は答えない。
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宗景は気にしない。
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むしろ楽しそうだった。
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「父上は優秀な方でした」
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徳蔵の眉が動く。
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「知っているのか」
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「もちろん」
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宗景は即答した。
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「ここ百年で最も真実に近づいた人でした」
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宗胤の顔が曇る。
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宗景は続ける。
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「惜しい人を亡くしました」
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その言い方に。
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徳蔵は怒りを覚える。
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まるで他人事だ。
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宗景は茶を飲む。
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そして。
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さらりと言った。
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「ところで」
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「八つの守り石の話は聞きましたか」
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宗胤が睨む。
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「宗景」
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「黙っていても意味がありません」
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宗景は笑う。
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「どうせ知ることになる」
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徳蔵は黙って聞く。
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宗景は楽しそうだった。
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まるで講義を始める教師のように。
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「西村殿」
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「人は死ねば終わりだと思いますか」
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徳蔵は答える。
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「普通はそうだ」
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「ですが」
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宗景は指を立てる。
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「亀の瀬では違う」
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沈黙。
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「死者は消えない」
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「集まるのです」
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徳蔵は昨夜の行列を思い出す。
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宗景は続ける。
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「悲しみ」
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「憎しみ」
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「絶望」
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「恐怖」
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「後悔」
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「未練」
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「それらは残る」
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「残ったものが積み重なり」
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「やがて一つの流れになる」
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徳蔵は聞いていた。
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理解できない。
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だが。
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嘘ではない気がする。
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宗景の話には妙な説得力があった。
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宗景はさらに続ける。
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「我々の先祖は気付きました」
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「この流れを利用できると」
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宗胤が拳を握る。
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宗景は気にしない。
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「力です」
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「莫大な力」
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「戦も」
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「飢饉も」
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「災害も」
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「人の心も」
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「少しだけですが干渉できる」
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徳蔵は顔をしかめる。
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「貴様は何を言っている」
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宗景は微笑んだ。
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「真実です」
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「そして」
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「それこそが藤富家が犯してきた罪」
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宗胤は低く言う。
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「だから私は反対している」
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宗景は肩をすくめる。
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「反対したところで消えませんよ」
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二人の間に緊張が走る。
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徳蔵はようやく理解した。
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この二人は。
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同じ藤富家でありながら。
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全く違う方向を見ている。
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宗胤は封印維持派。
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宗景は利用派。
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どちらも正しいと思っている。
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だからこそ危険だった。
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その時。
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宗景が懐から紙を取り出した。
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古びた紙。
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折り畳まれている。
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「これは先月見つかりました」
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徳蔵は受け取る。
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そこには古い図が描かれていた。
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円。
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その周囲に八つの点。
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そして中央。
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黒く塗り潰された場所。
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宗景は指差した。
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「八つの守り石です」
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徳蔵の心臓が高鳴る。
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初めて見る図。
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守り石の配置。
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宗景は続ける。
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「しかし場所は書かれていない」
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「何故だ」
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「消されたからです」
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まただ。
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記録が消されている。
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誰かが。
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何世代にも渡って。
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真実を隠している。
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宗景は静かに言う。
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「ですが」
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「一つだけ分かっています」
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徳蔵は顔を上げる。
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宗景は笑った。
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「守り石は壊せる」
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客間の空気が凍る。
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宗胤の表情が変わる。
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徳蔵も息を呑む。
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宗景は続ける。
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「壊せば」
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「怨霊は解放される」
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「成仏できる」
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徳蔵の胸がざわつく。
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それは救済だ。
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苦しみ続ける魂を救う方法。
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だが。
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宗景はそこで笑った。
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少しだけ。
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不気味に。
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「ただし」
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「何が起きるかは誰も知りません」
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静寂。
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誰も喋らない。
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宗景は最後にこう言った。
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「だから私は見てみたい」
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「その先を」
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徳蔵は初めて理解する。
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この男は危険だ。
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善悪ではない。
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好奇心だ。
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真実を知りたい。
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そのためなら。
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何を失っても構わない。
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その夜。
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徳蔵は一つの事実を知る。
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藤富家の敵は外にいるのではない。
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藤富家そのものが。
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二つに割れているのだと。
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第二章 第六話
「利用派の男」終
第七話「異端の僧」へ続く。




