第五話 父の日記と消された記録
翌朝。
亀の瀬には重苦しい空気が漂っていた。
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空は曇っている。
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今にも雨が降りそうだった。
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だが。
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村人達は雨を望んでいた。
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飢饉の時代。
雨は命だった。
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徳蔵は村長の家を出る。
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昨夜の出来事が頭から離れない。
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死人の行列。
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祠。
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黒い影。
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そして。
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藤富宗胤。
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全てが父の記録へ繋がっているように思えた。
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昼前。
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徳蔵は藤富家へ到着する。
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屋敷は大きかった。
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まるで城のようだった。
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高い塀。
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重厚な門。
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広い庭。
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飢饉の最中とは思えない。
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だが。
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徳蔵は違和感を覚える。
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使用人達の顔色が悪い。
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誰も笑わない。
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誰も目を合わせない。
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まるで屋敷全体が何かを恐れているようだった。
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宗胤が出迎える。
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「来ていただけましたか」
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徳蔵は頷く。
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宗胤は屋敷の奥へ案内した。
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長い廊下。
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古い掛け軸。
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先祖の肖像画。
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どれも歴史を感じさせる。
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やがて。
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一つの蔵へ辿り着いた。
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厚い扉。
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鍵が三つ。
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普通の蔵ではない。
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宗胤は鍵を開ける。
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重い音。
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扉がゆっくり開いた。
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中は暗かった。
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書物が並んでいる。
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無数に。
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壁一面に。
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古文書。
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巻物。
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帳面。
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記録。
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徳蔵は息を呑む。
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「これは」
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宗胤は答える。
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「藤富家の記録です」
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徳蔵は思わず近寄った。
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数百年分はある。
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いや。
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もっとだ。
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千年近いかもしれない。
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宗胤は一冊の帳面を取り出した。
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古い。
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かなり古い。
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表紙にはこう書かれていた。
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『奉納記録』
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徳蔵の表情が変わる。
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父の日記にあった名前。
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宗胤は静かに言う。
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「西村庄吉殿もこれを探していました」
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徳蔵は帳面を開く。
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最初のページ。
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年号が並ぶ。
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そして。
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名前。
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名前。
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名前。
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延々と続く。
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人名だった。
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徳蔵は理解する。
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生贄だ。
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奉納された者達。
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その記録。
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何百人。
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いや。
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何千人。
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徳蔵は唇を噛む。
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宗胤は苦しそうな顔をした。
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「藤富家の罪です」
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徳蔵はページをめくる。
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そして気付く。
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おかしい。
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ある年代だけ記録が無い。
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ぽっかり抜けている。
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数十年分。
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まるで誰かが切り取ったように。
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「これは何だ」
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宗胤は黙る。
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「何故無い」
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宗胤は少し目を伏せた。
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「消されたのです」
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徳蔵の目が鋭くなる。
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「誰に」
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「我々に」
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徳蔵は言葉を失う。
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宗胤は続ける。
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「正確には藤富家の一部です」
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「一部?」
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「思想の違いがあります」
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徳蔵は初めて聞く話だった。
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宗胤は古文書を広げる。
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そこには系図が描かれていた。
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藤富家。
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長い血筋。
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しかし途中から。
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線が二つに分かれている。
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宗胤は指で示した。
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「封印維持派」
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次に。
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別の線を示す。
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「利用派」
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徳蔵は眉をひそめる。
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宗胤は説明する。
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「維持派は封印を守ろうとした」
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「利用派は力を使おうとした」
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徳蔵は昨夜の影を思い出す。
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死人を集めていた存在。
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あれも関係している。
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そう直感した。
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その時。
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宗胤がさらに奥から一冊の本を持ってくる。
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木箱に入っていた。
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厳重に保管されている。
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宗胤はそれを徳蔵へ差し出した。
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「これをご覧ください」
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徳蔵は受け取る。
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古い。
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かなり古い。
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題名は無かった。
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ページを開く。
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そこには。
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見覚えのある文字。
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父の石碑写しと同じ筆跡だった。
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徳蔵は目を見開く。
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「これは……」
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宗胤は頷く。
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「地下神殿よりさらに古い記録です」
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ページをめくる。
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そして。
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一行の文章を見つける。
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徳蔵の心臓が跳ねた。
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そこにはこう書かれていた。
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> 八つの守り石が在る限り
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> 魂は解放されぬ
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沈黙。
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徳蔵は何度も読み返した。
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間違いない。
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そう書いてある。
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封印ではない。
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解放されない。
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つまり。
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守り石は。
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怨霊を閉じ込めている。
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宗胤は重く言った。
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「西村殿」
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「あなたの父はこの真実に辿り着きました」
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徳蔵は息を呑む。
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庄吉も知っていた。
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死ぬ直前に。
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そして。
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記録は続いていた。
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さらに下。
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薄く消えかけた文字。
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そこには。
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もっと恐ろしい一文が残されていた。
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> 八つの石を砕く術は存在する
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徳蔵の顔色が変わる。
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破壊方法。
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存在する。
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宗胤は静かに言った。
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「ここから先は」
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「我々も全てを知りません」
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「何故だ」
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宗胤の表情が曇る。
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「その部分も消されたからです」
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誰かが。
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意図的に。
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真実を隠した。
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八つの守り石の秘密を。
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そして徳蔵はまだ知らない。
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その消された記録を探している者が。
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藤富家の中にいることを。
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第二章 第五話
「父の日記と消された記録」終
第六話「利用派の男」へ続く。




