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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第二章 飢饉と帰る死人― 八つの守り石 ―

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15/34

第五話 父の日記と消された記録

翌朝。


亀の瀬には重苦しい空気が漂っていた。



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空は曇っている。



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今にも雨が降りそうだった。



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だが。



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村人達は雨を望んでいた。



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飢饉の時代。


雨は命だった。



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徳蔵は村長の家を出る。



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昨夜の出来事が頭から離れない。



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死人の行列。



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祠。



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黒い影。



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そして。



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藤富宗胤。



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全てが父の記録へ繋がっているように思えた。



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昼前。



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徳蔵は藤富家へ到着する。



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屋敷は大きかった。



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まるで城のようだった。



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高い塀。



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重厚な門。



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広い庭。



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飢饉の最中とは思えない。



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だが。



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徳蔵は違和感を覚える。



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使用人達の顔色が悪い。



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誰も笑わない。



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誰も目を合わせない。



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まるで屋敷全体が何かを恐れているようだった。



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宗胤が出迎える。



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「来ていただけましたか」



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徳蔵は頷く。



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宗胤は屋敷の奥へ案内した。



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長い廊下。



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古い掛け軸。



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先祖の肖像画。



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どれも歴史を感じさせる。



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やがて。



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一つの蔵へ辿り着いた。



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厚い扉。



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鍵が三つ。



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普通の蔵ではない。



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宗胤は鍵を開ける。



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重い音。



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扉がゆっくり開いた。



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中は暗かった。



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書物が並んでいる。



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無数に。



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壁一面に。



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古文書。



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巻物。



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帳面。



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記録。



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徳蔵は息を呑む。



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「これは」



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宗胤は答える。



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「藤富家の記録です」



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徳蔵は思わず近寄った。



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数百年分はある。



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いや。



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もっとだ。



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千年近いかもしれない。



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宗胤は一冊の帳面を取り出した。



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古い。



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かなり古い。



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表紙にはこう書かれていた。



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『奉納記録』



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徳蔵の表情が変わる。



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父の日記にあった名前。



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宗胤は静かに言う。



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「西村庄吉殿もこれを探していました」



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徳蔵は帳面を開く。



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最初のページ。



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年号が並ぶ。



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そして。



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名前。



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名前。



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名前。



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延々と続く。



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人名だった。



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徳蔵は理解する。



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生贄だ。



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奉納された者達。



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その記録。



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何百人。



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いや。



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何千人。



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徳蔵は唇を噛む。



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宗胤は苦しそうな顔をした。



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「藤富家の罪です」



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徳蔵はページをめくる。



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そして気付く。



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おかしい。



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ある年代だけ記録が無い。



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ぽっかり抜けている。



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数十年分。



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まるで誰かが切り取ったように。



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「これは何だ」



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宗胤は黙る。



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「何故無い」



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宗胤は少し目を伏せた。



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「消されたのです」



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徳蔵の目が鋭くなる。



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「誰に」



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「我々に」



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徳蔵は言葉を失う。



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宗胤は続ける。



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「正確には藤富家の一部です」



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「一部?」



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「思想の違いがあります」



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徳蔵は初めて聞く話だった。



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宗胤は古文書を広げる。



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そこには系図が描かれていた。



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藤富家。



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長い血筋。



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しかし途中から。



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線が二つに分かれている。



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宗胤は指で示した。



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「封印維持派」



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次に。



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別の線を示す。



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「利用派」



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徳蔵は眉をひそめる。



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宗胤は説明する。



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「維持派は封印を守ろうとした」



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「利用派は力を使おうとした」



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徳蔵は昨夜の影を思い出す。



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死人を集めていた存在。



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あれも関係している。



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そう直感した。



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その時。



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宗胤がさらに奥から一冊の本を持ってくる。



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木箱に入っていた。



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厳重に保管されている。



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宗胤はそれを徳蔵へ差し出した。



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「これをご覧ください」



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徳蔵は受け取る。



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古い。



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かなり古い。



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題名は無かった。



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ページを開く。



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そこには。



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見覚えのある文字。



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父の石碑写しと同じ筆跡だった。



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徳蔵は目を見開く。



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「これは……」



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宗胤は頷く。



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「地下神殿よりさらに古い記録です」



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ページをめくる。



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そして。



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一行の文章を見つける。



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徳蔵の心臓が跳ねた。



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そこにはこう書かれていた。



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> 八つの守り石が在る限り





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> 魂は解放されぬ





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沈黙。



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徳蔵は何度も読み返した。



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間違いない。



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そう書いてある。



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封印ではない。



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解放されない。



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つまり。



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守り石は。



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怨霊を閉じ込めている。



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宗胤は重く言った。



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「西村殿」



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「あなたの父はこの真実に辿り着きました」



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徳蔵は息を呑む。



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庄吉も知っていた。



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死ぬ直前に。



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そして。



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記録は続いていた。



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さらに下。



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薄く消えかけた文字。



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そこには。



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もっと恐ろしい一文が残されていた。



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> 八つの石を砕く術は存在する





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徳蔵の顔色が変わる。



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破壊方法。



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存在する。



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宗胤は静かに言った。



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「ここから先は」



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「我々も全てを知りません」



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「何故だ」



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宗胤の表情が曇る。



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「その部分も消されたからです」



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誰かが。



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意図的に。



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真実を隠した。



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八つの守り石の秘密を。



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そして徳蔵はまだ知らない。



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その消された記録を探している者が。



---


藤富家の中にいることを。



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第二章 第五話


「父の日記と消された記録」終


第六話「利用派の男」へ続く。

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