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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第二章 飢饉と帰る死人― 八つの守り石 ―

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第四話 藤富家の招待

数十の死人達が。


一斉に徳蔵を見ていた。



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誰も動かない。



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誰も喋らない。



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ただ見ている。



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その光景は戦場より恐ろしかった。



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徳蔵の手が刀の柄を握る。



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武士として数々の修練を積んできた。



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人と戦う覚悟はある。



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だが。



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死人の群れと戦う覚悟など。



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誰が持てるだろう。



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祠の上の影が笑う。



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> 怖いか





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徳蔵は答えない。



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影は続ける。



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> 父も同じ顔をしていた





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その言葉に徳蔵の目が鋭くなる。



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「父を知っているのか」



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影は少し首を傾げた。



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> 知っている





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> 覚えている





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> あれは面白かった





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徳蔵の怒りが込み上げる。



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父の死を。



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まるで見世物のように語った。



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「貴様は何者だ」



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影は答えなかった。



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代わりに。



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死人達へ向けて手を上げる。



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すると。



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死人達がゆっくりと道を開いた。



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まるで命令を受けた兵士のように。



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整然と。



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左右へ分かれる。



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その先に。



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一人の男が立っていた。



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年齢は四十前後。



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立派な着物。



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整った顔立ち。



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武士ではない。



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だが只者でもない。



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男は徳蔵へ頭を下げた。



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「初めまして」



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「西村徳蔵殿」



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徳蔵は警戒する。



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「誰だ」



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男は穏やかに微笑む。



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「藤富宗胤」



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徳蔵の表情が変わった。



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藤富家。



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父の日記に何度も出てくる名。



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仏生堂を治める一族。



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そして。



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怪異の中心にいる一族。



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宗胤は静かに言う。



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「少し話をしませんか」



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徳蔵は即答した。



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「断る」



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宗胤は笑う。



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怒らない。



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むしろ納得したようだった。



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「当然です」



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「私でもそうします」



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徳蔵は周囲を見る。



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死人達。



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影。



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藤富宗胤。



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状況は最悪だった。



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しかし。



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宗胤には敵意が感じられない。



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それが逆に不気味だった。



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宗胤は言う。



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「あなたは真実を知りたいのでしょう」



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沈黙。



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「父上が何を見たのか」



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徳蔵の心臓が跳ねる。



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「何故それを」



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宗胤は答える。



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「西村庄吉殿は有名でした」



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「ここでは」



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徳蔵は何も言わない。



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宗胤は続ける。



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「父君は勇敢でした」



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「だが真実には届かなかった」



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徳蔵の眉が動く。



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「真実?」



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宗胤は頷く。



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「あなたなら届くかもしれない」



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風が吹く。



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祠の周囲の木々が揺れる。



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死人達は動かない。



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まるで人形だった。



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宗胤は徳蔵へ近づいた。



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「西村殿」



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「亀の瀬には二つの歴史があります」



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徳蔵は黙って聞く。



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「人々が知る歴史」



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「そして」



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「隠された歴史」



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宗胤の目がわずかに曇る。



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「我々藤富家も」



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「その歴史に縛られている」



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徳蔵は違和感を覚える。



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縛られている。



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まるで被害者のような言い方だった。



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「貴様らが生贄を続けてきたのではないのか」



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宗胤は即答しなかった。



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長い沈黙。



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そして。



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「その通りです」



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徳蔵は目を見開く。



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否定しない。



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認めた。



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宗胤は苦しそうな顔をした。



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「藤富家は生贄を許した」



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「多くの人を死なせた」



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「その罪は消えません」



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徳蔵は怒りを覚える。



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「ならば何故だ」



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宗胤は徳蔵を見た。



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そして。



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静かに答える。



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「止めればもっと多く死ぬからです」



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徳蔵は言葉を失った。



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その答えは。



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父の日記にもあった。



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守るための犠牲。



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必要悪。



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だが。



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それで許されるのか。



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宗胤は続ける。



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「私も正しいとは思っていません」



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「ですが」



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「亀の瀬は普通の土地ではない」



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その瞬間。



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祠の上の影が笑った。



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> 嘘ではない





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徳蔵は睨む。



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影は面白そうに見ている。



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まるで芝居を眺める観客のように。



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宗胤は影を見上げない。



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存在を無視しているようだった。



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「西村殿」



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「明日」



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「藤富家へ来てください」



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徳蔵は警戒する。



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「罠か」



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「違います」



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宗胤は首を振る。



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「あなたに見せたい物があります」



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「何を」



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宗胤は少し迷った。



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そして。



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言った。



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「父君が見つけた物の続きを」



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徳蔵の鼓動が早くなる。



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石碑。



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記録。



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神殿。



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父が死の直前に辿り着いた真実。



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宗胤は知っている。



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その続きを。



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徳蔵は直感した。



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これは危険だ。



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しかし。



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行かなければならない。



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父が命を懸けて残した記録。



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その先に何があるのか。



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知るために。



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宗胤は踵を返した。



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死人達も動き出す。



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まるで命令された兵隊のように。



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闇の中へ消えていく。



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最後に。



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祠の上の影だけが残った。



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影は徳蔵を見ていた。



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そして小さく呟く。



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> 西村庄吉





---


> お前の息子は





---


> どこまで辿り着くかな





---


その声は。



---


徳蔵にだけ聞こえた。



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第二章 第四話


「藤富家の招待」終


第五話「父の日記と消された記録」へ続く。

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