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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第十二章 記録者

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第五話 記事が人を殺す

昭和十一年。



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東京。



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朝倉誠司は印刷所にいた。



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いつもの新聞社ではない。



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ここは“異常”を扱う特別印刷室。



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窓はない。



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外の音もない。



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ただ、機械音だけが続く。



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ガチャン……ガチャン……



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刷り上がる紙。



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しかしそこにある文字は普通ではなかった。



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朝倉はそれを見つめる。



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「藤富蒼士、消息不明」



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刷られた瞬間。



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インクが揺れた。



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そして。



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文字の一部が消える。



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「……またか。」



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朝倉は歯を食いしばる。



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この現象はすでに何度も起きていた。



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書けば消える。



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書かなければ残らない。



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どちらにしても“壊れる”。



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その時。



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編集長が低い声で言う。



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「朝倉。」



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「その記事は出すな。」



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朝倉は振り向く。



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「理由は?」



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編集長は答えない。



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代わりに一枚の新聞を投げる。



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そこには。



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同じ記事。



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「藤富蒼士、死亡確認」



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朝倉の目が揺れる。



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「……二つ?」



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編集長は言う。



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「どっちが正しいか分からない。」



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「だがな。」



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「この二つの記事を読んだ人間が……」



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言葉が途切れる。



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朝倉は続ける。



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「どうなる?」



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編集長は顔を背ける。



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「死んだ。」



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沈黙。



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印刷機の音だけが響く。



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ガチャン……



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ガチャン……



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朝倉は一歩前に出る。



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「記事で人が死ぬ?」



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編集長は頷く。



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「正確には“記事が現実を決める”。」



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朝倉は紙を握る。



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「なら止めるしかない。」



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その瞬間。



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印刷機が止まる。



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全ての機械が。



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一斉に。



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ピタリと。



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止まった。



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そして。



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部屋の奥。



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黒いインクが床を這う。



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まるで生き物のように。



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朝倉は後退する。



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「……来たな。」



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インクは形を作る。



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文字になる。



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『観測対象:記事』



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朝倉は息をのむ。



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「記事が……観測されている?」



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その時だった。



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紙が一枚落ちる。



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そこに勝手に文字が浮かぶ。



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「書いた者は責任を持つ」



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朝倉は叫ぶ。



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「誰がだ!」



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すると。



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天井から声。



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低く。



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静かに。



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> 「記録者」





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朝倉は見上げる。



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そこには。



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“主”の影。



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しかし完全ではない。



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歪んでいる。



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声は続く。



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> 「記事は現実になる」





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> 「現実は記事になる」





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朝倉は歯を食いしばる。



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「なら全部消せばいい!」



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その瞬間。



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印刷機が再起動する。



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ガチャン!!



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勝手に動き出す。



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紙が流れる。



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インクが走る。



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そして刷られる。



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「朝倉誠司死亡」



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朝倉の呼吸が止まる。



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「……ふざけるな。」



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紙が現実に影響する。



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部屋の空気が重くなる。



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朝倉の手が薄くなる。



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「……俺が消えるのか?」



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少女の声が響く。



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「逃げて!」



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白い着物の少女。



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扉の外に立っている。



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朝倉は叫ぶ。



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「どうすれば止まる!」



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少女は震えながら言う。



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「書かないこと!」



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「でももう遅い!」



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その瞬間。



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印刷機が最後の一枚を吐き出す。



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そこには。



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空白。



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しかしその空白に。



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文字が浮かび始める。



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ゆっくり。



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確実に。



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「世界は記録によって成立する」



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朝倉は笑う。



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「なら……書くしかないだろ。」



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少女が叫ぶ。



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「やめて!」



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だが朝倉はペンを取る。



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そして書く。



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一行。



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「記事は誰も殺さない」



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その瞬間。



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世界が揺れる。



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ガラスが割れるような音。



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インクが逆流する。



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文字が崩れる。



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そして。



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沈黙。



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すべてが止まる。



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数秒後。



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印刷機が再び動き出す。



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ガチャン……



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そこに刷られていたのは。



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白紙。



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何もない紙。



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朝倉は息を吐く。



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「……止まったのか?」



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少女は小さく頷く。



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「今は。」



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その時。



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机の上に一枚だけ残る紙。



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誰も書いていないはずの文字。



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「記事は記録に戻った」



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朝倉はその文字を見つめる。



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「戻る?」



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少女は答える。



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「まだ戦いは終わってない。」



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遠く。



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印刷所の外。



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黒い雪が一粒。



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落ちる。



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そして消える。



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第六話「記録禁止令」へ続く。

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