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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第十二章 記録者

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第四話 藤富蒼士の記録

昭和十一年。



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東京。



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朝倉誠司は机に向かっていた。



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新聞社の編集室。



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しかし空気が違う。



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昨日までの“現実”とは少しずれている。



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椅子の位置が違う。



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インクの匂いが違う。



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人の声の間隔が違う。



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「……また書き換わってるな。」



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朝倉は小さく呟く。



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机の上には白い紙。



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そこにペンを置く。



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そして書く。



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藤富蒼士



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その瞬間。



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紙が震えた。



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カタ……



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インクが滲む。



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だが消えない。



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初めてだった。



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朝倉は息を止める。



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「……残った。」



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文字が“定着”している。



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その時。



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背後で声。



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少女。



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白い着物。



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「その人の名前は……」



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朝倉は振り返る。



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「知ってる。」



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少女は首を振る。



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「違う。」



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「“知る”じゃなくて。」



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「“記録する”のは危険。」



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朝倉は立ち上がる。



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「もう遅い。」



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「俺は見た。」



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「亀の瀬も。」



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「第二記録庫も。」



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少女の目が揺れる。



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「……それが危険なの。」



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朝倉は紙を見つめる。



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藤富蒼士。



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この名前を書いた瞬間。



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世界のどこかが反応している。



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その証拠に。



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窓の外。



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空が一瞬だけ黒くなる。



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そして戻る。



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「来てる……」



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少女が呟く。



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「第三記録庫が。」



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朝倉は息をのむ。



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「まだここにいないのにか?」



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少女は頷く。



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「記録された瞬間。」



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「存在は“先に動く”。」



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その瞬間だった。



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机の上の紙が燃え始める。



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いや。



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燃えていない。



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“削除”されている。



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文字が消える。



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藤富蒼士。



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その名前が薄れていく。



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朝倉は慌てて手を伸ばす。



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「やめろ!」



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しかし少女が止める。



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「触らないで!」



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その瞬間。



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空間が裂ける。



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バリッ!!



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裂け目から。



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黒い雪。



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一粒。



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落ちる。



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朝倉の手の上に。



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触れた瞬間。



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記憶が揺れる。



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藤富蒼士。



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その存在が“どこか遠くへ”ずれる。



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朝倉は膝をつく。



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「……また消えるのか。」



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少女は静かに言う。



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「まだ完全じゃない。」



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「でも確実に近づいてる。」



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その時。



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机の紙が再び浮かび上がる。



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今度は別の文字。



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誰も書いていないはずの文字。



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「藤富蒼士は第三記録庫へ向かう」



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朝倉の呼吸が止まる。



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「……俺は書いていない。」



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少女は答える。



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「違う。」



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「これは“書かれた未来”。」



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窓の外。



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黒い影。



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一瞬だけ人の形。



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蒼士の輪郭。



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そして消える。



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朝倉は立ち上がる。



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「なら止めるしかない。」



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少女は首を振る。



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「止められない。」



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「もう“記録された”から。」



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沈黙。



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インクの音だけが響く。



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ポタ……



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ポタ……



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机の上の紙に。



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また一行。



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「朝倉誠司は藤富蒼士と出会う」



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朝倉はそれを見つめる。



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「俺まで……?」



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少女は小さく言う。



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「記録は連鎖する。」



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その時だった。



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空間が揺れる。



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遠くから声。



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“主”の声。



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> 「記録者。」





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朝倉は息をのむ。



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少女が叫ぶ。



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「来る!」



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机の上の文字が全部消える。



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そして残るのは一行だけ。



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「観測開始」



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世界が一瞬止まる。



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朝倉の目の前。



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空間が“紙”になる。



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ページのようにめくられる。



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その向こう側。



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見えた。



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黒い都市。



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第三記録庫。



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そして。



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そこに立つ“影”。



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主。



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朝倉は息を呑む。



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主は見ている。



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こちらを。



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そして。



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静かに言う。



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> 「書くな。」





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朝倉は笑う。



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「もう遅い。」



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その瞬間。



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世界が再び動き出す。



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机の紙が白紙に戻る。



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しかし。



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朝倉の手の中。



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一枚だけ残っていた。



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そこには。



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たった一行。



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「藤富蒼士は現実へ向かう」



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朝倉は空を見上げる。



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黒い雪は降らない。



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しかし確かに。



---


物語はもう動き出している。



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第五話「記事が人を殺す」へ続く。

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