第九話 記録庫の主
コツ……
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コツ……
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コツ……
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足音だけが響く。
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第二記録庫。
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巨大な地下空間。
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無数の黒帳。
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そのすべてが震えていた。
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老人は蒼士の前へ立つ。
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「下がれ。」
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蒼士は木札を握る。
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「この人は……。」
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老人は小さく首を振る。
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「人ではない。」
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闇の奥。
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ゆっくりと。
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黒い影が姿を現した。
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長い外套。
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黒い手袋。
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帽子を深くかぶり。
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顔は見えない。
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ただ。
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足元だけが見えた。
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歩くたびに。
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床へ黒い文字が浮かぶ。
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『記』
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『録』
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『名』
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『死』
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文字はすぐ消える。
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影は止まった。
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蒼士を見る。
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「藤富。」
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「久しいな。」
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その声は。
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老人にも。
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若者にも聞こえる。
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男とも。
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女とも分からない。
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不思議な声だった。
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蒼士は問い掛ける。
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「お前が……。」
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「記録庫の主か。」
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影は少し笑う。
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「人はそう呼ぶ。」
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「私は。」
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「記録を守る者。」
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老人が怒鳴る。
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「嘘をつくな!」
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「お前は!」
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「記録を喰らう怪異だ!」
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地下が震える。
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影は静かに老人を見る。
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「……。」
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「お前は。」
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「まだ私を怪異と呼ぶのか。」
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その瞬間。
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老人の体が揺らぐ。
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蒼士は目を見開く。
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老人の腕が。
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少しずつ透け始めていた。
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「どういうことだ!」
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老人は苦しそうに笑う。
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「私は……。」
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「もう。」
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「長くここに居すぎた。」
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「名前も。」
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「顔も。」
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「全部。」
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「記録庫へ食われた。」
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蒼士は息をのむ。
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影が一歩前へ出る。
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「ここへ来る者は。」
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「皆。」
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「最後は同じになる。」
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「忘れられ。」
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「名前を失い。」
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「記録だけになる。」
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蒼士は叫ぶ。
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「そんなもの!」
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「間違ってる!」
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影は首を傾げる。
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「では聞こう。」
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「人は。」
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「忘れられたら。」
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「本当に死ぬのか?」
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蒼士は答えられない。
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父の顔。
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もう思い出せない。
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それでも。
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父は生きた証を残している。
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影は静かに続ける。
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「黒帳は。」
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「忘れられた者を。」
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「残すために作られた。」
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「人間が。」
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「自分たちで。」
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「私を生んだ。」
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地下に沈黙が流れる。
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その言葉には。
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怒りも。
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悲しみもなかった。
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ただ。
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事実だけがあった。
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老人が膝をつく。
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「聞くな……。」
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「騙されるな……。」
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影は老人へ近付く。
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「まだ苦しいか。」
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「なら。」
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「眠れ。」
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影が指を伸ばす。
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老人の額へ触れた。
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次の瞬間。
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老人の体が。
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黒い紙片になって崩れ始める。
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「やめろ!!」
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蒼士が飛び出す。
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木札が光る。
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白い閃光。
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影は初めて後退した。
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「……真之介の護符。」
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影はその名を知っていた。
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「なるほど。」
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「まだ残っていたか。」
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蒼士は老人を抱き起こす。
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老人は笑っていた。
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「よかった……。」
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「まだ。」
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「効くんだな。」
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「聞け。」
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「藤富の若者。」
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老人は蒼士の耳元で囁く。
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「第二記録庫は。」
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「封印ではない。」
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「入口だ。」
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蒼士は目を見開く。
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「入口?」
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老人は最後の力で頷く。
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「もっと。」
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「深い場所がある。」
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「黒帳は。」
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「その扉を閉じる鍵にすぎん。」
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言葉が終わる。
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老人の体は。
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静かに黒い灰となった。
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風もない地下で。
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灰だけが舞う。
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蒼士は拳を握り締める。
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影はその様子を見つめる。
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「泣くな。」
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「記録は。」
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「終わっていない。」
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そして。
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影は蒼士へ一冊の黒帳を投げた。
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表紙には。
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『藤富 蒼士』
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まだ何も書かれていない。
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真っ白だった。
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影は静かに言う。
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「お前の物語も。」
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「ここから始まる。」
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その瞬間。
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第二記録庫全体に。
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鐘の音が鳴り響いた。
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ゴォォォン……
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ゴォォォン……
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影はゆっくり闇へ消えていく。
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最後に。
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一言だけ残した。
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「次は。」
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「記者を連れて来い。」
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蒼士はその意味を理解できなかった。
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しかし。
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一人だけ思い浮かぶ人物がいた。
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朝倉誠司。
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最終話「記録は未来へ」へ続く。




