第四話 真之介の手記
眩い光。
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祖母から渡された木札が。
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白く輝いていた。
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「うっ……!」
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蒼士は思わず目を閉じる。
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祠の中にいた白い装束の女は。
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苦しそうに後ずさる。
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「ぁ……。」
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「いや……。」
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黒い雪が渦を巻く。
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村人たちも。
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一歩。
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また一歩。
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蒼士から離れていく。
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その隙だった。
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白い少女が蒼士の手を掴む。
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「走って!」
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蒼士は少女に引かれるまま。
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祠を飛び出した。
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山道を駆ける。
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木々の間を抜ける。
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後ろから。
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無数の足音。
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ザッ……
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ザッ……
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ザッ……
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村人たちが追ってくる。
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しかし。
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誰も声を出さない。
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ただ。
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黙って追い続ける。
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蒼士は息を切らせる。
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「君は……!」
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「誰なんだ!」
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少女は振り返らない。
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「今は話せない。」
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「急いで!」
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やがて。
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鳥居が見えた。
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少女は鳥居を飛び越える。
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蒼士も続く。
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その瞬間。
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追ってきた村人たちが。
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鳥居の前で止まった。
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一歩も外へ出られない。
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まるで。
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見えない壁があるようだった。
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蒼士は立ち止まり。
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振り返る。
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村人たちは。
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こちらを見つめたまま。
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ゆっくりと頭を下げた。
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そして。
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一人ずつ。
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黒い雪の中へ消えていった。
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静寂。
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風だけが吹く。
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蒼士はその場に座り込んだ。
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「助かった……。」
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少女も肩で息をしている。
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「ありがとう。」
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「助けてくれて。」
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少女は首を横に振る。
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「まだ。」
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「始まっただけ。」
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その言葉に。
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蒼士の胸がざわつく。
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少女は蒼士の持つ木札を見る。
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「その木札。」
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「真之介さんの。」
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蒼士は驚く。
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「真之介……?」
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少女は頷く。
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「あなたの。」
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「ご先祖様。」
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「知っているのか?」
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少女は少しだけ笑った。
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「知ってる。」
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「ずっと。」
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「待ってた。」
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「あなたが来るのを。」
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蒼士は問いかけようとした。
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しかし。
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少女の姿が少しずつ透け始める。
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「時間がない。」
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「蔵へ帰って。」
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「手記を読んで。」
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「全部。」
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「そこに書いてある。」
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少女の体は。
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黒い雪になって消えていく。
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最後に。
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小さな声だけが残った。
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「……お願い。」
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「私を。」
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「思い出して。」
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少女は消えた。
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蒼士だけが残る。
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夕暮れ。
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藤富家。
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蒼士は祖母にも何も話さず。
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蔵へ向かった。
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古い蔵。
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代々。
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藤富家が封印を守るための品を保管してきた場所。
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一番奥。
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昨日見つけた木箱。
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その中には。
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一冊の手記。
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表紙には。
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『藤富真之介 記録』
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蒼士は静かに開く。
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最初のページ。
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そこには。
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見覚えのある文字。
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力強く。
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そして乱れた筆跡。
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> 「もし、この手記を読んでいる者がいるなら。」
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> 「第一記録庫は崩壊した。」
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> 「私は封印に失敗した。」
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蒼士は息をのむ。
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ページをめくる。
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次のページ。
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そこには。
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地図。
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亀の瀬。
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第一記録庫。
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そして。
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赤い墨で。
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大きく丸が描かれていた。
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その場所には。
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たった四文字。
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『第二記録庫』
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蒼士の鼓動が速くなる。
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「第二……記録庫。」
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第一記録庫だけではなかった。
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まだ。
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どこかに。
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もう一つ。
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黒帳を封じた場所が存在する。
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その時。
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蔵の外から。
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コン……
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コン……
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コン……
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誰かが。
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蔵の扉を叩いていた。
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祖母ではない。
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夜の藤富家には。
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蒼士しかいないはずだった。
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音は止まらない。
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コン……
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コン……
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コン……
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蒼士は恐る恐る立ち上がる。
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扉へ近づく。
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手を掛ける。
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ゆっくりと開く。
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しかし。
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そこには。
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誰もいなかった。
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足元には。
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濡れた新聞が一部だけ置かれている。
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見出しには。
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「奈良県各地で記憶喪失者が急増」
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その新聞の余白に。
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黒い墨で。
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誰かが書き残していた。
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> 「第二記録庫へ来い。」
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> 「待っている。」
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第五話「黒い新聞」へ続く。




