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女神という名の中間管理職が限界らしいので、代わりに俺が仕事を引き継ぐことになりました。~届かなかった想いの配送記録~  作者: はやかわ


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四通目 その音が繋ぐもの 2

 その青年に声を掛けられたのは、木が鬱蒼と生い茂る森の中のこと。


「あの、ルッキアの街へ行くなら……これを届けてもらえませんか」


 振り向くと、そこにはいかにも冒険者といった格好の青年が立っていた。

 

 押していたバイクをスタンドで立たせ、改めて青年と向き合う。

 差し出されている手には、紐で括られた小包が一つ。


 ――悠くん、これ。


 言われなくてもわかっている。


「わかりました。どちらまで?」


 だから、何も相談せずに配達を請け負った。


 ……その小包から、黒い靄が染み出していたから。


 彼のことを怖がっていたマリアベルには悪いことをしたと思っている。


 §


 冒険者ギルドでわかったことは結局三つだけ。

 魔法士の少女と二人でパーティを組んでいたこと。

 三日前、あの森での討伐依頼を受けたこと。

 

 そして――帰っていないこと。

 

 配達先はわからずじまい。

 だと言うのに、マリアベルは冒険者ギルドを出て行ってしまった。

 受付に礼を一つ言い、彼女のあとを追いかける。


「待ってくださいよ!」


 彼女はギルドを出たところで待っていた。

 悠の襟首を掴み、耳元で囁やく。


「何も言わず、振り返らず、バイクはそこに置いたままついてきなさい」


 離れていくときに、彼女の香りが鼻腔をくすぐった。


 


 細い路地を進んでいく彼女の後ろを、大人しく着いていく。

 その後ろから、追いかけてくる足音が一つ。

 

 ……やっぱり、そういうことだよな?


 疑問が確信に変わる頃、目の前を歩くマリアベルが口を開いた。


「……そろそろいいかしら」


 その言葉と共に、路地の奥から足音が響く。


 石畳を踏み鳴らしながら現れたのは、ガラの悪い男が三人。

 ゴロツキのような見た目をしているが、首から識別タグを下げている。


 そのうちの一人が、下卑た笑みを浮かべて口を開いた。


「よう、嬢ちゃん。ギルドじゃあ随分ダリルのこと嗅ぎ回ってたみてぇだな?」


 その言葉にすぐに答えず、小さく息を吐く。


 俺は周囲を見回した。

 路地の入口も、一人の男に塞がれている。


 完全に囲まれている形だ。

 マリアベルがこちらを振り向く。


「はぁ……何か用?」


 男の一人が肩をすくめる。


「なに、大した用じゃねぇよ」


 そう言いながら、俺たちを値踏みするように視線を動かした。


「ギルドで見せてた識別タグ……あれ、どこで拾った?」


 マリアベルは一瞬だけ俺を見る。

 それから、興味なさそうに口を開く。


「さあ。道端にでも落ちてたんじゃない?」


「とぼけんなよ」


 別の男が舌打ちする。


「あのタグは、ダリルのだ。数日前、森の討伐依頼で消えた」


 もう一人が笑う。


「そのタグが帰ってきてるってことはよ、あいつ生きてんじゃねぇのか?」


 四人の笑い声が、狭い路地に響いた。


 ……なるほど。


 俺は小さく息を吐いた。

 マリアベルが静かに言う。


「それで?タグの出所を聞いてどうするの?」


 リーダー格らしい男が一歩前に出る。


「決まってんだろ」


 低く、ドスの効いた声だ。


「ダリルが生きてんなら、今度こそ死んでもらう」


 その視線が、俺へと向いた。


「お前らにもな」


 別の男が、マリアベルを見てニヤつく。


「あー……それよりよ」


 男が舌なめずりする。


「いい女じゃねぇか」


「教会の女って、結構いい金になるんだぜ?しかも、上玉だ」


 マリアベルの眉が、ぴくりと動いた。


 男たちは気付かない。


「荷物」


 リーダー格の男が指折り数える。


「情報」


 下卑た視線をこちらへ向けながら。


「女」


 指が折られる度に、焼け付くような空気が場に満ちていく気がした。


 ◇


「全部置いてけ。そうすりゃ見逃してやる」


 はぁ、男ってどうしてこういうのばっかなのかしら。

 目の前の男たちを見ながら、心底うんざりする。


 女を攫って売る。

 それを悪びれる様子もなく口にする。


 本当に、反吐が出る。


 視線の先には、品のない顔が並んでいる。


「品もない上に、頭も悪いなんてどうしようもないわね」


 その一言に男たちが激昂する。

 おまけに我慢も利かない、と。


「どうしてわざわざこんな人気のない路地に来たと思うの?」


 言いながら、一番体格のいい男に炎弾を飛ばす。


 男は避けることも叶わず、その醜い顔で炎を受け止めた。


「誘い込まれた獲物は自分たちの方だって、気が付かなかった?」


 石畳に倒れ伏した男は、しばらく痙攣していたがやがて白目を剥いて気絶する。

 肉の焦げた匂いが辺りに広がった。


「安心なさい。ちょっと痛い思いをしてもらうだけだから」


 何が起きたのか理解できず、男たちは固まっている。

 最初に動いたのは、悠の後ろに立っていた男だった。


「クソが!」


 悪態を吐きながら、悠の肩を掴もうと手を伸ばす。

 しまった、そう思った時には男の体が地面に叩きつけられていた。


「……あなた、今何をしたの?」


 叩きつけられた男は、苦悶の声を漏らしながら地面を転がる。

 私は数秒、悠を見つめた。


「あっ、すみません。つい反射で……」


 何をしたのか聞いたのに、謝罪の言葉が飛んでくる。

 この異世界人は本当にずれている。

 

 ……今は気にすることじゃない。

 切り替えろ。


「このクソアマぁああ!!」


 剣を振り上げながら、男が叫ぶ。


「あら、神様へのお祈りは済んだの?」


 そう言いながら、振り下ろされた剣を躱す。

 そして、炎弾を撃ち込んだ。

 振り上げた剣を落としながら男が崩れ落ちる。


 あと、一人。


「なんなんだよ……何なんだよお前らぁ……」


 男の声は震えていた。

 さっきまでの威勢はもう、どこにもない。


 私はゆっくりと歩み寄り、男の手首を掴んだ。


「あなた達に聞きたいことがあるだけよ」


 掌に、少しずつ熱を集める。


「すぐに、正直に話せば痛い思いはしないで済むわよ」


 掌の熱を強めた。


「あなた達の探してるダリルって男に、何をしたの?」


「ご、合同任務……も、森での討伐依頼……合同で受けたんだよっ!それだけ……それだけだっ!」


 必死な顔をしているが、まだ余裕がありそうだ。

 何も言わずに熱を加え続ける。


「あづっ!あづいあづい!!!はなす!話しますから!!!」


 情けない悲鳴が路地に響く。


「最初からそうしておけばよかったのにね」


 男の手首を掴んだまま、淡々と続ける。


「それで?」

 

「森で……討伐依頼を受けてたのを見て……」


 言葉を必死に絞り出す。


「……そ、そしたらあいつら……魔物に……」

 

「嘘だ」


 否定の言葉が悠から上がる。

 ……様子がおかしい。


「お前らは、最初からアリスを狙って付けてきたんだ」


 その目は、ここを見ていない。


「帰り道で待ち伏せて、いきなり斬りつけてきた」


 その声は、憎悪に満ちている。


「そして、そのまま――」


 ――アリス。

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