ペガサスの翼
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「あら、困ったわね」
「そうだな……。まさかこんなところに、底が見えないほどの深いヒビ割れがあるとはな……」
「なんだか、最近できたって感じのヒビ割れですよね。この間の大きな地震でできたのかな。おまけに、左右の端も見ませんよ」
「それに向こう側まで、30メートルはあるぞ。どうする、アーサー」
「さすがに、この距離は跳び越えられないわよねぇー」
「やはり、時間は掛かっても、迂回するしかないか」
「ねぇ。巫琴ちゃんに、飛んで運んでもらえないかしら」
「 できるか? 巫琴」
「どーでしょう? 人間一人ずつぐらいの重さだったら運べると思いますが。フレデリック、ビクター、ポーラの馬たちは無理ですよ。ポチとタマは、自力で跳べるみたいですけど」
「そうか……。問題は馬たちか」
「馬にも翼があって、飛べればよかったのにな」
「伝説の聖獣、ペガサスね」
「ん? うぉーーっ!」
「どうしたんだ、巫琴」
「ライムさん。そのアイディア、イイかもしれません」
「どういうことだ?」
「馬たちに、翼を生やします」
「そんなことができるの、巫琴ちゃん」
「たぶん……」
「たぶんて、お前!?」
「取りあえず、やってみますね」
「えっ!? 本当に大丈夫なんですか、巫琴さん!?」
「心配です」
「本当に大丈夫なの? 落ちたらわたしたち助からないわ」
「んーーっ。たぶん、大丈夫」
「たぶんて!? そんないい加減な!?」
「任せてまかせて! ここは大船に乗った気持ちで」
えーと、ペガサスの翼、ペガサスの翼……。
「さすがに、この馬たちと巫琴が話しているのも見慣れてきたな」
「まぁ、馬たちが何を言っているのかまではわからないけどね」
「でも、巫琴が言っていることから想像するに、馬たちがいま不安になっているのもわかる」
「もぉーー!? アーサー様、エミリさん、ライムさん。いま集中しているので、静かにしてください!」
「すまない……」
馬たちが飛べるぐらいの大きい翼をイメージして……。
馬が翼で飛ぶイメージ……。
「ヨシ! 決まった!」
「決まった?」
「決まったの?」
「なにが決まったんだ?」
「ペガサスの翼よー……、生えろ!」
「あぁぁ……!? なんだか、ボクたちの背中に翼が……!?」
「本当に馬の背中に翼が生えた!?」
「でも、これで本当に飛べるのかしら」
「心配だな……」
「もぉーー!? みんな、疑ってるんですかぁーー!?」
「それじゃ、あたしが乗って、飛んで見せます。フレデリック!」
「巫琴さぁーーん。別に巫琴さんのことを疑ってるわけじゃないんですが、本当に飛べるんですか?」
「フレデリック。そういうのを疑ってるっていうんだよ」
「そうかもしれませんが……。まだ、飛ぶ勇気がなくって……」
「ふふ。それなら、飛ぶキッカケを作ってあげる」
「なんですか? その飛ぶキッカケって」
「タマ! 後ろからフレデリックを追いかけて!」
「えっ!? えっ!? ちょっと、巫琴さん!?」
「ほら、フレデリック。空に飛んで逃げないと、タマに食べられちゃうかもよ」
「そんな……!?」
「走ってないで、空に飛んで逃げるのよ! フレデリック」
「だったら、飛びますよ! 巫琴さん。背中に乗ったまま落ちても知りませんよ」
「あっ。そこは大丈夫。あたしは自分で飛べるから」
「そんな無責任な!?」
「ほら、飛んで!」
「えぇーーいっ!」
「飛んだな……」
「飛んだわね」
「本当に飛んだな」
「と……飛べましたよ! 巫琴さん!」
「あたしのこと、信じても良かったでしょ?」
「はい! でも、空を飛ぶのって、意外と気持ちがいいものなんですね」
「そうだよ。それじゃ、みんなのところに戻ろ」
「はい!」
「では、フレデリックたちも、空を飛べるようになったということで、三人は馬たちの背中に乗って、このヒビ割れ飛び越えてください!」
「それは良いけど、巫琴ちゃん。この翼は、元に戻せるの?」
「あっ……。大丈夫です。飛び終わったら、小さくしておきますから!」




