追いかけてきた恋のライバル
♢
「あのぉーー」
「なんだ? もう腹が減ったのか?」
「違いますよぉーー。さすがにそれはありませんよぉーー」
「なんだ? また馬たちが、なにかをしゃべっているというのか?」
「違いますよぉーー。いまは黙っててくれてます」
「じゃあ、なんだ?」
「あのぉーー。さっきから何者かに、後をつけられてるみたいなんですけどぉーー」
「なに!? それは本当か!? だったら、もっと早く言え!」
「でも、ただ後をつけられてる気がするだけで、悪い感じとかしてないんですよぉーー」
「でも、そんなことを教えられたら、気にせずにはいられないだろ」
「そういうものなんですかねぇーー」
「まったく、巫琴ちゃんたら」
「そんな、エミリさん。飽きれないでくださいよぉーー」
「その探知能力は素晴らしいが。これから、いつどこで、厳しい戦いが起こるのかわからんのだぞ」
「そうだ。ライムの言うとおりなんだからな。それで、何人がつけてきてるんだ? わかるか?」
「えっとぉー。一人ですね」
「一人!? たった!?」
「はい。気にすることのもない話しでしたかぁ?」
「いや。念のため、隠れて待ち伏せして様子を見よう。あの林の中で隠れるぞ」
って、いきなり馬たちを走らせるって!? 隠れるんじゃなかったのぉーー!?
あっ!? 慌てて、追いかけてきてる。これも作戦かぁーー。やっぱり、アーサー様って、頭もいいんだなぁ。
「巫琴。静かにだからな」
もぉーー!? そんなこと、言われなくてもわかってますよ!?
あれ? あれは馬じゃなくって、ロバに乗った少年……。
「あぁーーっ!?」
「こら、巫琴! なにを大きな声を出してる!?」
「あのコ。少なくとも的ではないです」
「あの……。あたしが知ってる、ロトくんっていう、村のコだから……」
「本当か?」
「はい。間違いないです」
「しょうがないな。ちょっと話を聞いてみるか」
「そうね」
「しょうがないな」
「なんか、ごめんなさーい」
「お前が、謝るようなことでもないのだがな」
「それはそうなんですけどぉー。なんだか、謝らないといけない気がして」
「おい! そこの子ども! なんでオレたちの後をつけてきている!」
「わわわわっ!? ビックリしたぁーー!? こら、暴れるな!」
「なんで、オレたちの後をつけてきている?」
「あの……。巫琴サマのお供をしたくって」
そんな!? アーサー様、あたしを睨まないでくださいよぉーー!? あたしだって、知らなかったんですから。
「で、どうして、こいつのお供をしたいんだ?」
そんな!? アーサー様。あたしのこと、こいつ呼ばわりなんて!? ついさっきまで、名前で呼んでくれてたのにぃーー!?
「それは……。やっぱり、心配で」
「心配? こいつは、そこら辺の男どもより、はるかに強いぞ」
「それは、知ってます」
そこは、否定しないんかぁーーい!?
「だったら、どうしてだ?」
「それは……」
「好きなのね」
「好きなんだろうな、巫琴のことが」
「そうなのか?」
あぁーーっ!? アーサー様の顔。なんだか、不機嫌。やきもち? ひょっとして、やきもちを焼いてくれてますぅーー!
「だったら、なおさらダメだな。巫琴。お前が、責任を持って帰らせろ」
なんだか、アーサー様、冷たーーい。でも、しょうがないよね。
「ごめん。ロトくん。ここは、あたしに免じて、このまま帰って。ここからは、本当に危ない橋を渡っていかないといけないの」
「でも、巫琴サマ!?」
「お願い! そうしてもらわないと、あたしが困るの。お願い!」
せっかくここまで来て、アーサー様に嫌われたくない! ここは、ロトくんが、涙を飲んで。お願い!
「わかりました……。帰ります。みなさん、ご無事で」
「ごめんねー」
「いえ。すみませんでした」
「気をつけて帰ってね」
「はい……」
「良かったわねー。アーサー。恋のライバルが帰っていくわよ」
えっ!? 恋のライバル!?
それは、本当ですかぁーーー!?




