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うたへうたえ  作者: うらひと
2章

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6/9

2-C 『便せんが裏紙となりくずかごへ紙飛行機にならないままで』

禁 複製転載・AI学習

 練習を終えて。

「駅まで行こっか」

 ()()(みな)を引き連れてスタジオを出ると、風が強く()いた。(はる)()が「さみーーー」と声を上げる。

「スタジオ、なかなかないからなあ。駅の辺りは先客がいること多いし」

「ちょっと遠いのが難点だよねえ。()()、一応年明けに利用できそうなとこ、ピックアップしとく」

(あん)()、助かる……!」

 ()(だん)使う路線ではなく、その手前にある(ふみ)(きり)。先に向かった(あん)()(はる)()(わた)りかけたところで、(しゃ)(だん)()が下り始めた。

()()っち、ストップ」

「う、うん」

――二人きり。

 意識してしまうと、()()(かた)がこわばる。それでも、(あん)()が『わざとこの道を選んだんだ』と、今月に入ってからのこのルートの『秘密』を教えてくれた。とっくに、この気持ちがばれていることは知っている。この(ふみ)(きり)の向こうにあるコロッケ屋で、『(はる)()への()()けが増えた』と(あん)()が苦笑いしていたのには、つられて笑ってしまったが。

「あの、そういえば、なんだけど」

「うん?」

「年末年始で、作詞してくる」

 電車が通りかかる。『すぐに(しゃ)(だん)()は上がるだろう』と、()()は親指を立てて『OK』のサイン。その間に()()の言った、『どうしても書きたい歌詞があって』という言葉は届いていなかったが。

 (しゃ)(だん)()が上がると、()()が前へ出た。その背中()しに、(あん)()が小さく『(だい)(じょう)()そう?』と指で輪っかを作ると、()()()ずかしそうにそう返した。


 冬休みに入ってしばらく。作詞の作業は()()まっていた。

「書きたいフレーズは出来てるのに、後が思いつかない……」

 ()()に聞くのは、何を書こうとしてるかバレたくない。(あん)()はこのことを相談したときに『言葉選びはアドバイスできるけど』とやんわり断られてしまった。

「どうしよう……」

 その時。

「しーちゃん、入っていい?」

 ノックの直後に聞こえた声。(いっ)(しゅん)よぎって、()けようかと思っていた人。

(つかさ)お姉ちゃん……いいよ」

「お(じゃ)()します」

 (つかさ)が中学生になってからは、冬休みに(しん)(せき)一同で集まるとき、両親が祖父母の家で、(つかさ)()()の家に()まることになっていた。だから、来るのは分かっていたけれど。

 その人は、目立つ方ではなかったけれど、()(れい)な人だ。

()()ちゃんから聞いたよ、私の代わりにバンドに入ったって」

――胸がざわざわする。もちろん、悪気はないはずだけど。

「『星の忘れ物』()いてさ……その、()()ちゃんへのお()びじゃないけど、しーちゃんに合わせた作詞法を伝授しようと思って」

「えっ、別に……いや、その。ちょっと思ってたから、(つかさ)お姉ちゃんがいいなら……」

 きっと、(つかさ)も、()()(おも)()かべたフレーズと同じところを(おも)()かべたのだろう。

――夢の中の忘れ物を あなたの中のキラキラを

――分けてほしいの (あこが)れだから

――大切だから

「しーちゃん?」

「あっ、うん」

 ぼーっとしていた()()に、(つかさ)が続ける。

「その作詞法だけど……しーちゃんの得意な『短歌』を生かそう」

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