風の夏 六句
夏の風の移ろいを、六つの句にまとめました。
初夏から晩夏、そして秋の入口へ。
季節の変化を、風の気配だけで追っています。
<1>
さんざめき
間を競ぶ
青嵐
【解説】
梅雨も明けかかった陽光の中で、
空も山の濃い色を取り戻してきている。
葉をざわめかせて裏山を吹き抜けるさまは、
まるで青と緑が相争ってるようだ。
<2>
温風や
裏山の色を
事直し
【解説】
梅雨の最中、暗みがかっていた裏山。
その梅雨も終わり、晴れの日が続く。
夏の到来を告げる風。
それは、色を取り戻してなお濃くしていく。
<3>
颯々と
日影を纏う
爽風や
【解説】
毎日暑い日が続いている。
日射しの強さは変わらないように見えても、
たまに吹くさらりと心地よい風が、
季節の移ろい、その兆しを感じさせる。
とはいえ、明日もまた暑いのだ。
<4>
金色を
齎し給へ
青田風
【解説】
子供の頃、用水路に釣りに行く。
彼方まで続く一面の田んぼ、その中を自転車で走る。
当たり前にあった、当たり前だった光景。
今はただ豊穣を。
<5>
黒南風も
やがては白く
なりにけり
【解説】
重々しかった風も、
いずれは明るく爽やかな南風に変わる。
そんなふうにおもっていきたい。
<6>
知らぬ間に
色なき風と
成り持て往き
【解説】
夏はいつの間にかに終わるもの。
そうしていずれまた、訪うもの。
風は季節を運ぶもの。
重い風も、軽い風も、知らぬ間に色を変えていきます。
六句の流れが、夏の一日にも、夏から秋への移ろいにも重なるように思います。
お読みいただき、ありがとうございました。




