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ビリビリ
「それもやっぱり桜ちゃんかー……。
あーあー、仲良くしてたかったんだけど、
これじゃダメそうだねー」
淡々とした声のまま、
郁美はメモを指でつまみ――
ビリッ、と。
躊躇いもなく、細かく引き裂いた。
舞い上がった紙片が、
屋上の風にさらわれていく。
まるで、何かが取り返しのつかない形で
散っていくみたいに。
その光景を見ているうちに、
背筋に冷たいものが走った。
そして――
郁美は、何事もなかったかのように、
にっこりと微笑む。
一歩、また一歩と、
距離を詰めてくる。
「いこ?」
逃げ道なんて、
最初からなかったみたいに。
気づけば、腕を絡め取られていた。
「……ああ……」
逆らう言葉は、出てこなかった。
言いようのない恐怖に押されるまま、
俺はその手に引かれて階段を降りる。
――結局、その日は。
郁美と並んで帰ることになった。
当然のように、隣にいる。
当然のように、離れない。
途中で何度か、
「じゃあ俺こっちだから」と
別れの流れを作ろうとしたが、
「私もこっち」
その一言で、すべてが無意味になる。
結局――
抗うこともできず、
俺はそのまま郁美を連れて、
家まで帰るしかなかった。




