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やり取り
一之宮はそれをちらりと確認してから、ペンを走らせる。
『いいけど……達也って結局、
郁美ちゃんと付き合ってるの?』
一瞬、迷ったが――
ここで濁しても意味がない。
俺は小さく息をつき、書いた。
『これも誰にも言わないでほしいんだけど、
実は付き合ってないんだ』
そのメモを見た一之宮の手が、
わずかに止まる。
そして、
『さっきの教科書の書き込み見て、
なんか違和感あったけど、やっぱりか』
短い一文。
けれど、その中に“理解”が
含まれているのが伝わってきた。
『うん』
短く返すと、
一之宮は少し間を置いて、
またペンを走らせた。
『じゃあさ、
桜ちゃんのこと、好きなの?』
――一瞬、手が止まる。
予想していなかったわけじゃない。
けど、いざ文字にされると、
妙に引っかかる。
ほんのわずかに迷ってから、
俺は書き返した。
『いや、あいつとは幼馴染ってだけ』
それを見た一之宮は、深くは追及せず、
『そっか』
とだけ返してきた。
それきり、やり取りは自然と途切れる。




