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未来
英語の授業が始まっても、
俺の意識はどこか霞がかったままだった。
先生の声は意味を持たない音として、
ただ耳をすり抜けていく。
ぼんやりとした思考の奥底で、
ずっと同じ言葉が渦巻いていた。
――進路。
芳しくない成績。
そして、これからの生活に重くのしかかってくるであろう、
金銭的な不安。
少しでも出費を抑えなければならない現状を考えれば、
大学進学なんて選択肢は、
あまりにも現実離れしている。
それでも――
ここは東高校。
一応は進学校で、
周囲の連中は当たり前のように大学へ進んでいくのだろう。
「……なら、俺も行くべきなんじゃないか」
そんな周囲への同調と、
突きつけられた現実との間で、
俺の心は揺れ続けていた。
「じゃあ続きから、遠坂達也くん読んでください」
不意に名前を呼ばれ、
思考が一気に引き戻される。
「えーっと……」
間を稼ぐように呟きながら視線を落とすと、
机の上にはノートすら出ていない。
慌てて机の中から、
置きっぱなしにしていた教科書を引っ張り出し、
乱雑にページをめくる。
「65ページの3行目だよ」
隣の友人が、小声で教えてくれた。
「あ、ありが――」
礼を言いかけた、その時。
俺の手が止まった。
ページを埋め尽くす“それ”に、
気づいたからだ。




