真理
「まずは出会い!だよな?」
関谷は前のめりになり、
唾を飛ばしそうな勢いで詰め寄ってくる。
「出会わないと始まんないもんな!?
で、どこで出会うんだ?
ん? ん?」
鼻息は荒く、
目は不自然なほど充血していて、
その様子はもはや青春というより、
ホラーに近い。
周囲を見渡せば、
いつの間にかメモ帳を構えて待機している奴までいる始末だった。
――これは何か言わないと、
絶対に解放されない。
俺は内心でため息をつきつつ、
できるだけ無難で、
角の立たない答えを探す。
そして、思いついた適当な逃げ道を口にした。
「……文化祭、とか?」
一瞬、妙な間が空いた。
――さすがに適当すぎたか?
そう思って内心で焦りかけた、
その時だった。
関谷がゆっくりと背筋を伸ばし、
メガネをクイッと押し上げる。
「諸君――文化祭だ」
その一言で、空気が一変した。
「オオオォォ!!」
男子たちの間から、
地鳴りのような歓声が上がる。
「その手があったか!」
「盲点だった……!」
「文化祭……文化祭か……!」
まるで歴史的な大発見でもあったかのような、
盛り上がりようだ。
――いや、誰でも思いつくんだが。
だが彼らにとって、
“何を言ったか”ではなく、
“誰が言ったか”が重要らしい。
郁美と付き合っている(ことになっている)俺が言った。
それだけで、
その言葉はこの世の“真理”に格上げされた。
関谷は満足そうに腕を組み、
うんうんと頷いている。




