朝のホームルーム
しばらくして先生が戻ってくる。
今度は、A組の担任らしい女性教師を伴っていた。
「郁美さん! 何をしてるの?
あなたのクラスはここじゃないでしょう?」
毅然とした声に、
郁美はむっとした表情で言い返す。
「ここだもん!
達也くんの場所が、私の場所だもん!」
「何を馬鹿なこと言ってるの!
いいから戻るわよ!」
有無を言わせぬ口調で、
A組の先生は郁美の腕を掴み、
半ば強引に引っ張り出した。
「達也くーん……!」
半泣きになりながら助けを求められたが、
俺にできたのは、
引きつった苦笑いを返すことだけだった。
やがて郁美の姿が完全に見えなくなると、
教室に漂っていた異様な空気は、
ようやく霧が晴れるように消えていった。
こうして、朝のホームルームは、
何事もなかったかのように再開される。
「えー、遊ぶのもいいがな、
君たちもそろそろ受験を意識して、
勉強に取り組む時期だ」
先生はいつもの調子で話し始める。
「来月には文化祭もある。
日頃からバランスを考えて行動しないと、
すぐ置いていかれるからな……
特に、達也くん」
「……え、俺?」
名指しされた瞬間、
教室のあちこちからクスッと笑いが漏れた。
もっとも、
笑っていない男子も何人かいたが。
「まあ、そういうわけで。
今日も一日、頑張っていこう」
その一言で、
朝のホームルームは終わった。
こうして俺の一日は、
最初からやけに疲れる形で幕を開けたのだった。




