教室
わかっている。
そんな未来は、どこにも存在しない。
それでも、その想像だけが、
頭の中を何度も何度も巡っては消えず、
壊れたレコードみたいに、
同じ場面を繰り返していた。
俺はパンを一口かじる。
味はするはずなのに、
何を食べているのかよくわからない。
ただ、噛みしめながら、
叶うはずのない妄想に、
しばらく身を委ねていた。
祖母の方を見ると、
さっきまで手にしていた写真立ては、
もう元の場所に戻されていた。
いつの間にか感情を押し込めたような、
いつもの祖母の背中に戻っている。
「達也が出る時に、私も出るわ」
淡々と、事務的とも取れる声で祖母は言う。
「また一週間後に来る予定よ。
それまでの食事は買い置きしてあるから大丈夫でしょう」
少し間を置いて、
念を押すように続けた。
「お金は……無駄遣いしないようにね。
節約して使うのよ」
「うん……」
俺は短く頷くだけで、
それ以上、言葉は出てこなかった。
それから二人で家を出て、
門の前で立ち止まる。
祖母は振り返らず、
「無理はしないで、
助けが欲しければいつでも連絡して頂戴」
それだけ言い残して、
静かに歩き去っていった。
学校に着くと、
廊下に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
ざわり、と小さな波が広がり、
視線が一斉に集まる。
ひそひそと交わされる声。
探るような目。




