新宿都庁特攻
企画の続き
男は自分も同行する必要があるのかと訊ねた。
坊主の口からは、好きにしろ、と一言返ってくるばかりであった。
男と坊主の関係性はぎくしゃくしているというのが正直なところであったが、男は坊主のことを嫌いとは思えずにいる。
坊主の背中から漂う哀愁に似た雰囲気が、歌舞伎町の夜によく見かけていた人たちのそれに似ていたからかもしれない。
例えば粗暴な様に見えて実は他人に酒を振る舞えるようなところ、手を出そうと思えばすぐに行動に移せるような喧嘩早いところ、そして話が聞きたいとくっついてみたら邪険にしないところも歌舞伎町の夜に生きるどこか寂しさを覚える人たちのそれに感じた。
いつぞやは同じ街で生きていたのだろうか。
ただ見たことないんだよなぁと男は頭を掻いた。坊主の風体は一般的な男性の身長をゆうに超えており、どこの街で生きていても見た目だけでそれなりには有名になりそうなものだが。
坊主は都庁の前で歩みを止めると、男に向かって耳を塞ぐように指示を飛ばした。
「へ? こ、今度は耳をふさ……?」
「おう、特攻じゃい」
男は訝しげな表情を浮かべるばかりだったが、その疑問に坊主が答えることはない。
袈裟から何か取っ手のようなものがついた鉄の筒を取り出すと、肩に担いでそれを構える。
「——よし、行くぞ」
「へっ……?」
男の反応なぞお構いなしに、その鉄筒の取っ手の引き金に指をかけた。
筒の先端にある大小ふたつの牛乳瓶を重ねたような弾頭を都庁に向ける。
「えっ、あ、あ……。RPG-7……?!」
男の目に間違いはあまりなかった。
坊主は発射機の引き金にかけた指の力を込める。反動を低減する後方噴射が男の眼前で吹き荒れ、男は身じろいで尻餅をつく。その際熱かったのだろうか、慌てて前髪を払う仕草を見せる。
発射筒から飛び出した弾頭は噴射の勢いのままに空を切る。やがて弾頭後部に取り付けられていた四枚の羽が展開されると、ロケットモーターが点火し、耳を刺す笛のような音をけたたましく掻き立てる。高圧ガスと火薬が混ざった白煙が金属の焦げたようなにおいを振り撒くと、坊主の威勢を乗せて都庁玄関に飛び込む。やがてオレンジと黒を混ぜたような閃光が周囲を照らし、鼓膜がひっくり返るような音が響き渡った。それはどうやら脳に響くほどに耳の中にまとわりつき、ガラスの爆ぜる音も瓦礫の崩落音もぼやけて眩暈の中に微睡んで曖昧模糊に溶け込んでいた。
「おっし、どうやら都庁正面の防弾ガラスは50mm程度だった様だな。おかげでうまくいった」
「ど、どこの日本にRPG-7なんぞぶっ放す坊主がおんねん! 日本で手に入るようなもんちゃうやろ!」
男は思わず声を上げる。ツッコミにしてもどこかズレた言い分ではあったものの、坊主は発射機本体をぶっきらぼうに投げ捨てながら気だるげに返した。
「あぁ? キルギスの闇市で買うてきたんじゃ。後、再利用型なんて高いもんよう買えへん。こりゃ安もんじゃ」
「知らんがな! あと、なんで俺ら関西弁で喋っとんねん! びっくりしすぎて口調変わったがな」
坊主はそれこそ知らんと一蹴すると、再び拳銃を取り出して都庁に乗り込んでいく。
「歌舞伎町出たと思ったら、こりゃ行き先はムショかな……」
男は肩を落としてそれに続くのだった。
オチ考えてないせいで続くんじゃ




