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今度はあなたと共に  作者: 龍狐
第五章 ――公爵令嬢と学園生活
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7.他愛のない時間

 休日が明けた翌日。いつものように教室へと集まったリリアたちは、授業が始まるまでの僅かな時間を使って、昨日のことについて話していた。


 朝から夕方までローズと街を歩き、食事をしたり店を見て回ったりと、思っていた以上に長い時間を一緒に過ごした。その所為か、学園で話している時よりも互いのことを知る機会が多く、今朝になってからも昨日の話題が変わらず続いている。



「昨日は楽しかったですわね」


「私も楽しかったです」


 ローズの言葉に頷きながら、リリアは昨日一日のことを思い返す。



「ただ、まさかロゼがあんなに食べるとは思いませんでした」


「あら。まだ気にしていますの?」


「だって、私の分まで食べてしまったではありませんか」


「それくらいなら大した量ではありませんわ」


 ローズが何でもないことのように言ってのけると、昨日目の前に並んだ料理を見た時の驚きが蘇り、リリアは思わず苦笑した。あれほどの量を注文しておきながら当の本人は全く気にするような気配がないのだ。



「今度はもう少し少ない量を頼もうかなと」


「何故ですの?」


「私が食べ切れなかった時に、またロゼに食べてもらうことになりそうなので」


「それなら最初から、そのつもりで頼めばよいではありませんか」


「それはそれでどうなのでしょう……」


 そんなやり取りをしていると、不意に背後から声が掛かった。



「随分と盛り上がっていますね」


 聞き慣れた声に振り返れば、いつの間にかユーリーが直ぐ近くまで来ていた。



「ユーリー殿下」


「おはようございます、リリアさん。ローズさんも」


「おはようございます」


「御機嫌よう」


「私も混ざっても?」


 挨拶を交わしたユーリーはそのまま二人の前へと立つと、当然のように続けた。ローズが僅かに目を細める。



「返事をせずとも混ざるおつもりでしょう?お好きになさって」


「ここ数日で親しくなれたと思っていましたが、手厳しいですね」


 ユーリーはいつもの貼り付けたような笑顔を崩さなかったものの、ローズの方もすっかり慣れてきたようだった。特に触れることなく話を続ける。



「女同士の会話に水を差すんですもの。当然ですわ」


「私が来ただけで……ですか?」


「ええ。十分に」


「それは困りましたね」


 困ったと言いながら、ユーリーは少しも困った様子を見せない。むしろ楽しんでいるようにも見えて、リリアは二人のやり取りを交互に眺めながら小さく笑った。



「まあまあ、ロゼ。その辺りにしておきましょう。殿下が可哀想です」


 するとローズが、わざとらしく驚いた顔をする。



「まあ、リア。私を差し置いてこの男を庇いますの?」


「庇うというほどでは……」


「先日二人で遊んだのは一体何だったのでしょうね」


「それは昨日の話ですよね?」


「ええ。昨日の話ですわ」


 すると、その様子を見ていたユーリーが何を思ったのか口元へと手を添えた。



「お二方とも仲が良さそうで何よりです。私も、そのように呼んでもいいですか?」


「そのように……とは?」


「ローズさんがリリアさんを『リア』と呼ぶように、私も親しい呼び方をしても構わないかと」


 ローズが少しだけ考えるようにユーリーを見る。



「考えておきますわ」


「ありがとうございます」


「殿下の頑張り次第ですわね」


「はて。何のことでしょう?」


 ユーリーが笑顔のまま首を傾げたものの、ローズもまた何かを企むように口元を緩めた。



「何のことでしょうね?」


 二人の間で何故か話が通じているらしい。リリアにはその理由が分からず、二人を交互に見ながら首を傾げた。



「お二人って、息ぴったりですよね」


「リア」


「そう見えますか?」


 ローズが直ぐにリリアの方を向き、ユーリーも同時にこちらへと視線を向けた。



「はい。とても」


 素直に答えると、ローズは僅かに目を細めた。表情は何処か楽しそうで、何か変なことを言ったのだろうかと暫く考えたものの答えは浮かび上がってこない。



「何方かと言うと、ロゼとユーリー殿下の立場が逆転している気がします」


「聞きまして?」


「ええ」


 二人が殆ど同時に返事をした。それだけなら普通のことだった筈なのに何故かその瞬間、二人の間で何かを確認し合ったような空気が生まれた気がした。



「……何ですか?」


 思わず尋ねると、ユーリーはいつもの笑顔を浮かべたまま、何でもないように首を横へと振った。



「いえ、何も」


「何でもございませんわ」


 ローズまで同じように答える。



「二人揃って何なのですか!」


 思わず声を上げると、ローズが堪え切れないように笑い出した。



「ふふっ」


「はははっ」


 つられるようにユーリーまで破顔する。二人に挟まれるような形になったリリアは、何がそんなに可笑しいのか分からず、少しだけ頬を膨らませた。



「もう……」


 本気で怒っているわけではない。むしろ、こうして二人と他愛のない話をしながら笑っていられることが心地よく、リリアは満更でもなさそうに口元に笑みを浮かべたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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新作の短編小説を投稿しました。


『国賊の騎士 ~祖国に見捨てられた騎士は、敵国の王子に溺愛される~』

 https://ncode.syosetu.com/n3213ju/


こちらとは少し雰囲気の違った作品になっていますので、ご興味ありましたらぜひ読んでみてください。


今後とも『今度は貴方と共に』をよろしくお願いいたします。

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[今度はあなたと共に]の短編版・今度は貴女を愛さない・今度は君を幸せに ※番外編→貴方を絶対に離さない                                              新作短編作品: 『国賊の騎士 ~祖国に見捨てられた騎士は、敵国の王子に溺愛される~』                                                                                          連載中作品: ヒロインの座、奪われました                                   ↑クリックで作品ページに飛びます。
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