表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/45

1 すべてが終わって

 エヴァレット王の死はすぐに国中で共有された。国王の訃報は王宮から離れた田舎までも急速に伝播した。


 突然の国王の死に国は大混乱だったが、順当に国王の座に着いたナヴァロ様がなんとか落ち着かせようと奮闘している。ナヴァロ様によって、わたしとマリア様の処刑も取り消された。


 もう誰の駒でも道具でもなくなったナヴァロ様の王冠は、ずいぶんと光り輝いて見えた。


 ルカ様は第二王子として、ナヴァロ様の補佐をするらしい。お腹の傷も、傷跡こそ残ってはいるが日常生活に支障がない程度まで回復した。強い人は回復力も高いんだと知った。


 王妃も同時に不在となってしまったが、今のところ問題はないようだ。


「まぁ、妃が欲しくなったらアプローチするさ」


 などとウインクまでしていたので、当分は必要なさそうだ──ナヴァロ様と結婚したい令嬢はたくさんいそうだが。


「なんなら、エリザベスがなってくれてもいいんだよ?」


 手の甲にキスを落とされたときは、あまりの恐れ多さにパニックになったが、そばにいたルカ様がナヴァロ様の手をはたき落とし、事無きを得た。


 ナヴァロ様とルカ様の兄弟関係は、事件を通して良好になったと思っていたが、まだまだ溝は深いらしい。


 そんな一悶着を終えて、わたしとルカ様はミスティ様のお墓にやってきていた。マリア様も同行していたが、自宅へ旦那様に会いに行った。


「母さん……」


 ルカ様は街の花屋で購入した花束を、ミスティ様のお墓に供えた。片膝をつき、彼は母親に優しく話しかける。


「全部、終わったよ。母さんが王宮追放されたとき何もしなかったエヴァレットも、母さんを王宮追放したシャーリーンも、みんないなくなった」


 いつになく幼い口調でミスティ様のお墓に語りかけるルカ様。その背中は、普段よりも小さく見えた。


「母さんは最期まで俺の心配をしていたらしいが、もう大丈夫だ」


 ルカ様はそう言って立ち上がった。わたしに振り向き、小さく笑った。


「居場所は見つけたから」

 わたしも微笑み返す。


 ミスティ様は死ぬ間際、ルカ様の居場所がなくなってしまったことを気にかけていたと、マリア様は言っていた。ナヴァロ様の補佐役に就任して、ルカ様はようやく安心できる拠り所を見つけたのかもしれない。


 よかった、王宮の中に居場所があって。


 わたしは胸を撫で下ろすと同時に、ふと、疑問が湧いてきた。


 ルカ様がわたしと結婚を決めた理由──それはルカ様のお母様を探すためだった。


 ──「お前の見た不幸な未来が確かなら、俺はそれを回避し、母を探したい……協力してくれないか?」


 そう言って、わたしたちは契約結婚する運びとなったのだ。ルカ様の不幸な予知は回避こそできなかったものの、刺された傷も回復し、ミスティ様もお墓の姿ではあるが再会を果たせた。


 ……これって、わたしもう用無しでは?


 嫌な汗が背中を流れた。


 知らないふりをしていたら、なんだかんだこのまま有耶無耶になったりとかしないかなぁ……。


 ルカ様にわたしは救われた。精神的にも物理的にも。だからわたしはこれからもお側にいてお役に立てることがあるなら頑張りたい。


 ルカ様はわたしのことをどう思っているんだろう……?


 わたしはチラリとルカ様の横顔を盗み見る。


 たぶん、たぶん、好意的に思ってくれてる、と、思いたい……!

 わたしを守ってくれたことと、本妻にするのはまた別の話、とか言われたらどうしよう……!?


「付き合ってくれてありがとう」

「ヒャ、ヒャい!」

「なんだその返事」


 ぷは、とルカ様がコロコロと笑う。


 ……あー。


 ルカ様がわたしをどう思っているかより、自分の心をごちゃごちゃと誤魔化していたことに今更気づいた。あんなに何度も頑張って蓋をしていた想いが溢れ出ていく。その勢いは止まらない。


 ──わたし、この人が好きだ。


 助けてもらったから役に立ちたい、とか、そばにいたい、とか。色々綺麗な言い分で取り繕っていたけれど。


 わたしはただ、ルカ様が好きだから、結婚したいんだ。


 自覚した瞬間、頬が真っ赤に染まるのがわかった。見られたくなくて、俯いて顔を隠す。


「どうした? 気分が悪いのか?」

「な、なんでもないです……! わたし、先に街へ戻ってますね!」


 覗き込もうとするルカ様を拒絶し、わたしは一人足早に街のほうへ歩いていく。


 好き、好き、好き。


 わたしはあと一歩で森から街へ出る、というところで太い幹に背を預け、しゃがみ込んだ。顔を両手で覆うと、手袋越しでも頬の火照りが手に伝わってきた。


 この気持ちをルカ様に伝えたい。


 あなたが好き、と。


 ──でも、同じくらい怖い。


 ルカ様はわたしを恋愛的に好きなのだろうか?


 最初からずっと、ルカ様はわたしに同情的だった。


 その優しさに勘違いをして、あぐらをかいてしまってはいないだろうか?


「……ルカ様はどう思ってらっしゃるの……?」


 ……聞けない。


「わたしの意気地なし……」


 足元に転がっていた小石をコツン、と蹴った。小石は転がって、大きな丸石に寄り添う形で止まった。

読んでくださり、ありがとうございます!

ぜひ☆やリアクションをポチッとよろしくお願いします!

感想やレビュー、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ