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婚約破棄、承りました。ですが私の管理していた「国家予算」「精霊の加護」「魔導防衛網」は全て私有財産ですので、回収させていただきますわね?  作者: 桐谷ルナ


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第49話:カエルスの隠し事:漆黒の皇帝が抱える「次元的債務」

「――説明を。陛下」


 ショッピングモールの喧騒を遮断した、旗艦『アウレリウス』の最深プライベートルーム。黄金の装飾が施された室内には、冷たく、重い沈黙が満ちていた。

 エリザベートは玉座に座ることなく、立ったまま愛する夫を見つめている。その手には、先ほど抽出した不気味な契約ログが握りしめられていた。


「……気づくのが、早すぎたな。エリザベート」


 カエルスは視線を落とし、低く掠れた声で漏らした。

 漆黒の外套に包まれたその背中が、初めて小さく見える。銀河を斬り裂くあの剣も、今は主の心の揺れを映すように、微かに鞘の中で鳴っていた。


「私の耳に届いた情報に、遅いも早いもございません。……陛下。貴方は、かつて私が断罪され、物語の塵として消えようとしていた時……その『ギルド』の連中と、どのような交渉をなさったのですの?」


「……簡単なことだ。君が、どの次元、どの時間軸においても、不幸という名の『脚本』に殺されない権利。それを買い取るための対価を、奴らが提示した」


 カエルスがゆっくりと顔を上げる。その瞳には、果てしない愛と、救いようのない絶望が混ざり合っていた。


「私の魂の半分だ。……それがあれば、彼らは君を『バグ』として排除せず、君の覇道に必要な『舞台装置』を用意すると約束した。……今の私が、君を救うための最強の力を持っているのも、奴らとの契約による『融資』に過ぎない」


「――馬鹿げたことを」


 エリザベートの扇が、カエルスの言葉を遮るように弾けた。

 彼女は一歩、また一歩とカエルスに歩み寄り、その胸元に手を添えた。鎧越しに伝わる鼓動は、半分を失っているせいか、どこか頼りなく、痛々しい。


「陛下。……貴方は、一流の経営者(私)を、どれほど侮辱すれば気が済みますの?」


「……屈辱? 私はただ、君を守りたかっただけだ」


「いいえ、侮辱ですわ。……私の幸福を、貴方の自己犠牲という『不健全な資本』で賄うなんて。……そんな出所の怪しい愛で、私が満足するとお思い?」


 エリザベートはカエルスの瞳を、逃がさぬようにじっと射抜いた。彼女の脳内では、すでに夫の魂の状態を算出する「監査式」が展開されている。


$$ \text{Soul Value} = \lim_{t \to \infty} \left( \frac{\text{Empress's Will} \times \text{Emperor's Devotion}}{\text{Guild's Interest Rate}} \right) $$


「貴方が支払った『魂の半分』。……複利計算をいたしましたところ、すでに宇宙三個分に相当する利息が積み上がっていますわ。……このままでは、貴方の存在そのものが『債務不履行』で消滅してしまいます」


「……それで構わない。君が、笑っていられるのなら」


「却下ですわ! 陛下!」


 エリザベートが叫ぶ。その声に、カエルスの肩がびくりと跳ねた。

 女帝は、夫の頬を両手で包み込み、引き寄せた。


「私の幸せは、貴方が隣にいて、共にこの宇宙を『買収』し続けることでしか成立いたしません。……勝手に私の許可なく自分を安売り(ダンピング)するなど、経営者としての重大な規約違反ですわ」


 エリザベートの瞳に、激しい怒りと、それ以上の慈愛が灯る。


「カエルス陛下。……その『契約書』の原本、どこの金庫に保管されていますの?」


「……ギルドの中枢、『次元中央銀行』の最下層だ。あそこの守護者たちを倒さない限り、解除は不可能だと言われた」


「よろしい。……セレーネ! ルシフェル!」


 エリザベートの声に、影から秘書たちが音もなく現れる。

 セレーネは主の意図を察し、すでに次元座標のロックを開始していた。ルシフェルは、かつて自分がいた組織の「闇」の深さに震えながらも、女帝の覇気に圧倒され、居住まいを正した。


「……陛下、お聞きになりました? 貴方の魂は、たった今、私が『全額買い戻し』の対象に指定いたしましたわ。……債権者が誰であろうと、私の夫から一本の髪の毛すら奪わせるつもりはございません」


 エリザベートは、震えるカエルスの額に、自身の額をそっと押し当てた。


「……これからは、貴方の魂の半分は、私が保証人オーナーとなりますわ。……ギルドの連中には、不当な利息への報いとして、『物理的な破産』と『存在の抹消』という名の違約金を、たっぷりと支払わせて差し上げましょう」


「……エリザベート。君は、どこまでも……」


 カエルスが、ようやく安堵したように、小さな笑みを漏らした。

 女帝の宣戦布告。

 それは、物語の理不尽でもなく、神の意志でもない。

 「愛」という名の負債を清算するための、全宇宙を揺るがす強行捜査の始まりだった。

最強の夫が抱えていた「魂の欠損」。

それを「無能な経営判断」と切り捨てつつ、全力で買い戻しに行くエリザベート様……。

この圧倒的な「格差愛」こそ、本作の真骨頂ですわね。

カエルス様、貴方はもう一人で背負う必要なんてございませんのよ。


さて、女帝が次に乗り込むのは、ギルドの心臓部『次元中央銀行』。

宇宙中の「運命」を担保に取る金貸しどもを、エリザベート様がいかにして破産させるのか。

この究極の「夫婦愛ざまぁ」を応援してくださる方は、

ぜひ【ブックマーク】と【評価☆☆☆☆☆】で、二人の「魂の清算」を見守ってくださいな。


次回、第50話『多次元帝国の株主優待:全住民に贈る「運命の選択権」』。

ギルドとの決戦を前に、エリザベート様が全宇宙の「借金」を一括帳消しにする、前代未聞のイベントが開幕しますわ。

お楽しみに。

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