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婚約破棄、承りました。ですが私の管理していた「国家予算」「精霊の加護」「魔導防衛網」は全て私有財産ですので、回収させていただきますわね?  作者: 桐谷ルナ


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第43話:転生チートへの課税:その「現代知識」、関税は払いました?

「――捕まえましたわ。次元の隙間から不当に情報を持ち込み、この宇宙の均衡(利回り)を乱す泥棒猫さん」


 地獄の審判の間。閻魔大王が書類の山に埋もれて泣き言を漏らす傍らで、エリザベートは虚空を指先でなぞった。彼女が触れた空間が、まるでバグったモニターのようにノイズを吐き出し、そこから一人の青年が転び出る。


「な、なんだ!? 急に空間が歪んで……。あ、あんた誰だよ、この俺……『知識の賢者』佐藤ユウキ様に何の用だ!」


 現れたのは、安っぽい合皮のコートに身を包んだ、いかにも「現代の知識で無双しています」という顔をした男だった。彼の背後には、地獄の片隅に不法に建築された『蒸気機関工場』が、煙を上げていた。


「知識の賢者? ……ふふ、随分と安っぽいネーミングですわね。……セレーネ、この『ユウキ氏』のインベントリをスキャンなさい」


「は。……内訳:高純度石鹸の製法、多条ネジの概念、活版印刷の技術、および……現代日本の『マヨネーズ』のレシピ。……お嬢様、これら全て、この世界の文明レベルと著しく乖離した『未登録情報』ですわ」


 エリザベートは扇を閉じ、男の足元に黄金の境界線を引いた。


「ユウキさん。貴方が『発明』だと自称しているそれら。……厳密に言えば、別の世界で培われた知的財産を、無許可でこの次元に持ち込んだ『密輸品』に当たりますのよ?」


「密輸……!? 何を言ってやがる! これは俺の頭の中にある知識だ。誰にも文句は言わせねえ! 俺はこの知識で、この地獄に『産業革命』を起こして、魔王に成り上がるんだよ!」


「産業革命? ……あら、そんな大規模な事業を、無認可・無申告で行うおつもり? ……経営者として、見過ごせませんわね。……カエルス陛下」


 カエルスが音もなくユウキの背後に立ち、その巨大な蒸気機関の心臓部へ漆黒の剣を突き立てた。


「――物語をショートカットするための『知恵』か。……だが、お前が持ち込んだその文明は、この世界の因果律に『不当な負荷』をかけている。……借金は、高くつくぞ」


「あ……あああ……! 俺の『蒸気王スチーム・キング』が!」


 ユウキの自慢の機械が、カエルスの一撃でただの鉄屑へと還っていく。エリザベートは、絶望する男の目の前に、スクロールするほどの長さがある「請求書」を突きつけた。


「さて、査定のお時間ですわ。……貴方がこの世界に流布した『現代知識』による文明の加速。……それによって失われた『本来の発展プロセス』に対する損害賠償。および、異次元からの情報輸入に対する『次元関税』。……合算して、以下の額になりますわ」


$$ \text{Total Debt} = \int_{0}^{T} (\text{Knowledge Value} \times \text{Chaos Factor}) \, dt + \text{Late Fee}(150\%) $$


「な……なんだよこの金額……。金貨……一千億枚!? 払えるわけねえだろ!」


「払えない? ……あら、では『自己破産』の手続きをいたしましょうか。……といっても、帝国の法では、破産者は『労働力』として物理的に解体されることになっていますが」


「ひっ……! た、助けてくれ! 悪かった! 俺だけじゃないんだ、他にもいるんだよ! 『転生者ギルド』っていうのがあって、みんなで知識を共有して世界を乗っ取ろうとしてるんだ!」


「――転生者ギルド、ですって?」


 エリザベートの瞳が、冷徹な狩人のそれへと変わった。

 無許可の知識をバラ撒き、世界の相場を壊そうとする害虫たちの集団。それは、彼女が支配する「完璧な宇宙」にとって、看過できない組織的な『脱税行為』であった。


「セレーネ。……その『ギルド』の座標、すべて追跡なさい。……一人の転生者も見逃さず、彼らが持ち込んだ『チート』の全てに、重加算税を課して差し上げますわ」


「畏まりました。……即刻、多次元強制徴収部隊を派遣いたします」


 エリザベートは、震えるユウキをゴミを見るような目で見つめ、優雅に背を向けた。


「ユウキさん。……貴方の『マヨネーズ』、試食いたしましたが……。酸味が足りなくて、商品価値はゼロですわ。……これからは地獄の調理場で、永遠に卵の殻剥きでもして、その『安い知恵』の代価を支払いなさいな」


 女帝の宣告。

 それは、現代の知恵という名の「魔法」に依存した者たちへの、残酷なまでに論理的な引導であった。

「現代知識」を「密輸品」と断じ、

転生者のチートを「重税」で完封する……。

これぞ、エリザベート様による、メタ概念すらも支配する「知財ヤクザ(監査官)」の真骨頂ですわ!


「チート」という名の脱税者を追い詰めたエリザベート様。

ですが、背後に潜む「転生者ギルド」の存在が、帝国の盤石な経営に影を落とします。

法と数字で異世界を正す彼女の活躍に痺れていただけましたら、

ぜひ【ブックマーク】と【評価☆☆☆☆☆】で、帝国の「税務調査」を応援してくださいな。


次回、第44話『内政無双の監査:衛生管理の不備で、その王国を営業停止にします』。

石鹸一つで成り上がろうとした王国の、「コンプライアンス違反」を徹底追及いたしますわよ。

お楽しみに。

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