第35話:皇帝の独占欲:全宇宙の時間を止めても、貴女の「5分」が欲しい
多元宇宙の統治中枢『ヴォイド・コア』。
エリザベートは、空中に浮かぶ数百のモニターを眺め、全次元の「幸福利回り」をチェックしていた。
「セレーネ、第82世界の『勇者のメンタルヘルス』が $5\%$ 低下していますわ。……直ちに高級和牛と、帝都直営のスパ招待券を次元輸送して差し上げなさい。……それから、第215世界の――」
「――そこまでだ、エリザベート」
部屋の温度が、一気に氷点下まで下がった。
背後に現れたのは、漆黒の外套を纏い、不機嫌を隠そうともしないカエルス皇帝。
彼はエリザベートが手にしていた魔導ペンを、音もなく抜き取った。
「陛下? ……あら。……次なる買収案件の相談かしら? 今ちょうど、宇宙のエントロピーを『再資源化』する予算案を組んで――」
「仕事の話はしていない。……計算機を、私から奪いすぎだ」
カエルスが指を鳴らす。
その瞬間、ヴォイド・コアの外で動いていた銀河の回転が止まり、執務室の時計の針が静止した。
カエルスの権能――『絶対静止の世界』。
全宇宙の時間が止まり、動いているのは、この世界で「特異点」となった二人だけ。
「……あら。……宇宙全体の時間を止めるなんて、どれほどの『エネルギー・コスト』がかかっていると思っているの? ……これ、一秒ごとに銀河一つ分の魔力を浪費していますわよ?」
「構わない。……その銀河の代金は、すべて私の『愛(プライベート財産)』から支払っておいた。……今の私は、皇帝でも執行官でもない。……ただの、妻の視線に飢えた男だ」
カエルスは、エリザベートを強引に引き寄せ、玉座の上で彼女を抱きすくめた。
彼の低い声が、エリザベートの耳元で熱く響く。
「五分でいい。……全次元の利回りではなく、私の『孤独』を監査してくれ。……君が仕事に熱中するたびに、私の心には『修復不能な欠損』が生じているんだが?」
「……ふふ。……随分と、情緒的な『不当解雇』の訴えですわね」
エリザベートは、カエルスの冷たい頬に優しく手を添えた。
全宇宙を管理する完璧な女帝の瞳に、一瞬だけ、一人の女性としての艶が宿る。
「……よろしい。……計算いたしましたところ、陛下の『愛』に対する配当が著しく滞っておりましたわ。……本日、全宇宙の業務を完全停止。……私の時間はすべて、陛下お一人の『専売特許』とさせていただきますわ」
$$ \text{Love} = \lim_{t \to \infty} \int_{0}^{t} (\text{Passion} \times \text{Possessiveness}) \, dt $$
エリザベートがカエルスの首に腕を回し、微笑む。
「……さて。……時間は止まっておりますもの。……じっくりと、私の『愛』を、その身で検品してくださるかしら?」
静止した宇宙の真ん中で、黄金の女帝と漆黒の皇帝だけの、誰にも邪魔されない「贅沢な残業」が始まった。
全宇宙を止めてでも、妻との「五分」を優先する……。
これぞ、エリザベート様だけが受け取れる、史上最も高価な「愛の配当」ですわね。
カエルスの激重な溺愛に、心まで甘く溶けていただけましたら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、最強夫婦の「有給休暇」を応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は宇宙の覇権を握りつつ、
夫からの「情熱的な監査」に顔を赤らめる、最高のオン・オフを楽しまれることでしょう。
次回、第36話『「真の主人公」への是正勧告:その幸運、不当利得として没収しますわ』。
努力せず幸運だけで勝つ「ご都合主義ヒロイン」を、エリザベート様が法的に追い詰めます。
お楽しみに。




