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婚約破棄、承りました。ですが私の管理していた「国家予算」「精霊の加護」「魔導防衛網」は全て私有財産ですので、回収させていただきますわね?  作者: 桐谷ルナ


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第32話:多次元エリザベート会議:私の恋バナ、利回りいくらですの?

宇宙の演算中枢『ヴォイド・コア』の最上階。

 そこには、各次元の特産品を集めた最高級の茶葉の香りと、数え切れないほどの「銀髪の美少女」たちの談笑が満ちていた。


「――皆様、お集まりいただき感謝いたしますわ。本日のアジェンダは『過去の不良債権(元婚約者)に関する最終処分報告』ですわ」


 円卓の主座に座る女帝エリザベートが、優雅に扇を広げる。

 周囲に座るのは、彼女が救い出した並行世界のエリザベートたちだ。


「まずは第102世界の私。……貴方のところの王子、処分はどうなりましたの?」


 車椅子から立ち上がり、今や一国の経済を回す総督となったエリザベート(#102)が、冷淡な笑みを浮かべてタブレットを操作した。


「はい。私に毒を盛ったセドリック王子ですが……。彼の魂を『浄水施設のフィルター』として再利用しておりますわ。不純物(下劣な欲望)を取り除くたびに彼が苦痛に悶えるので、魔力の変換効率が非常に良くて助かっています」


「あら、素晴らしい利回りですわね」


 女帝が頷くと、今度は第999世界の、処刑寸前だったエリザベート(#999)が手を挙げた。


「私の世界のジュリアン王子は、偽聖女と一緒に『次元のゴミ焼却炉』の燃料にいたしました。彼らが抱いていた『真実の愛(という名の妄想)』は非常に燃焼効率が良く、帝都の三日分の電力を賄えましたわ」


 次々と報告される、元王子たちの「有効活用」事例。

 かつて彼女たちを泣かせた男たちは、いまや帝国のインフラを支える「資源」へと成り下がっていた。


「……こうして並べてみると、私たちの『初恋』という投資、どれも目も当てられないほどの赤字案件でしたわね」


 女帝エリザベートがため息をつく。


「愛だの恋だのと囁きながら、結局は女の資産と家柄を食い潰すだけの寄生虫。……そんなものにリソースを割いていた過去の自分を、監査してやりたい気分ですわ」


「本当ですわね。……今や私たちは、宇宙の理を書き換える『共同経営者』。あんな矮小な男一人の寵愛を求めていた自分が、一番の『計算ミス』でしたわ」


 令嬢たちが一斉に頷き、最高級のスコーンを口にする。

 その光景を、部屋の隅でカエルス皇帝が苦笑しながら眺めていた。


「……エリザベート。彼女たちの『復讐』は終わったようだが、あまり男を資源扱いしすぎるのはどうかと思うぞ。……私もいつか、電池にされるのではないかと不安になる」


「あら、陛下。……貴方は別格ですわ。……貴方の『愛』は、宇宙全体の資産価値を上回るほどの『純利益』をもたらしてくださっていますもの。……終身雇用、いえ、『永遠の独占契約』を継続させていただきますわ」


 エリザベートがカエルスの手を取り、その甲にキスを落とす。

 全次元の「私」たちが、羨望の眼差しでそれを見守る中、セレーネが静かに歩み寄った。


「お嬢様。……お楽しみのところ失礼いたします。……第33世界の『デスゲーム運営局』より、不当な魔力徴収に関する緊急の通報が入りましたわ」


「あら。……女子会の次は、不健全なギャンブルの『強制捜査』かしら?」


 女帝の瞳が、仕事モードの冷徹な紫水晶へと切り替わる。

 彼女たちの「遊戯」は、止まることを知らない。

 各世界の私が集まると、話題の八割が男の資産価値になりますのね。

 恋を語る言葉として、利回りほど誠実なものはございませんもの。

 解散間際、末席の私が議題をひとつ持ち込みました。命を賭け金にしている世界がある、と。

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