第31話:次元の同窓会:元婚約者、女帝の「靴磨き」に就職する
アルカディア帝国が直轄管理する、第1世界の辺境都市。
かつて栄華を極めたヴァリエール王国の王都は、いまや帝国の「リサイクル・スラム」へと再開発されていた。
その泥濘の中で、一人の男が必死に通行人の靴を磨いていた。
ボロボロの服、煤けた顔。かつての面影は微塵もないが、彼はかつてエリザベートを「悪女」と罵り、婚約を破棄した第一王子ジュリアンであった。
「くそっ、どいつもこいつも……! 俺を誰だと思っているんだ! 私はこの国の王――」
「あら。……随分と、市場価値の低い独り言を仰っていますのね」
銀鈴を転がすような、しかし絶対的な強者の響き。
ジュリアンが顔を上げると、そこには彼が一生かかっても買えないほどの魔石を散りばめた、純白と黄金のドレスを纏う女帝の姿があった。
「エ、エリ……ザベート……?」
「お黙りなさい。……気安く私の名前を呼んで良いのは、帝国の株主(国民)だけですわ」
エリザベートは、膝をつくジュリアンを、汚物を見るような目ですら見ず、ただ「無」として眺めた。
彼女の隣には、漆黒の軍服に身を包み、一振りで国を滅ぼす覇気を放つカエルス皇帝が立っている。
「ジュリアン。……貴方の『労働効率』を監査させていただきましたが、極めて劣悪ですわね。一日の稼ぎが銅貨五枚? ……私の愛馬の蹄鉄を磨く費用にも足りませんわ」
「そ、そんな……! 助けてくれ、エリザベート! 俺が悪かった! 偽聖女のリリアンに騙されていたんだ! 今なら君の価値が分かる、もう一度やり直――」
「――査定、終了ですわ」
エリザベートは扇を閉じ、冷酷な微笑を浮かべた。
「貴方の『価値』を再計算いたしましたが……。残念ながら、私の靴に付いた泥を落とす『布』以下の資産価値しかございません。……セレーネ、この男の『存在権』、今すぐ負債として全額焼却なさい」
「御意、お嬢様。……ジュリアン氏の『人間としての登録』を抹消。本日より、帝国の『自動靴磨き機』の動力源(電池)として、永久雇用いたしますわ」
「な……電池!? 待て、嫌だ、離せえええ!」
ジュリアンは、帝国の魔導技術によって「魂」だけを抽出され、道端の機械へと組み込まれていった。
かつて彼が愛を誓った偽聖女リリアンもまた、隣の機械で「街灯の燃料」として永遠に燃え続ける運命にある。
「……陛下。……これ以上、この場所を眺めるのは時間の無駄ですわね。……次は、どこの『ゴミ』を再利用しに行きましょうか?」
「ああ。……君の目に映る価値のないものは、私がすべて『ゼロ』にしてやろう」
女帝の馬車は、絶望の叫び声を上げる靴磨き機を背に、黄金の軌跡を描いて次元の彼方へと消えていった。
かつての元婚約者を「資産価値ゼロ」と断定し、
物理的に「電池」へとリサイクルする……。
これぞ、エリザベート様による、慈悲なき「格差ざまぁ」の完成形ですわね。
ジュリアン王子の末路に、至高のスカッと感を感じていただけましたら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、帝国の「再開発計画」を応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は全宇宙の「元・敵役」を余さず回収し、
エネルギー資源として有効活用されることでしょう。
次回、第32話『多次元エリザベート会議:私の恋バナ、利回りいくらですの?』。
救い出された自分たちが集まり、女帝に「恋愛の収支報告」を行う優雅な女子会が開かれます。
お楽しみに。




