第28話:福利厚生は「神殺し」:勇者たちの社員研修
宇宙の心臓部、黄金の魔力が循環する『ヴォイド・コア』の演習場。
そこには、各次元からエリザベートによって「買収・救済」された英雄たちが集められていた。
第7世界の勇者アリス、第102世界の毒殺未遂令嬢、第514世界の幽閉聖女……。
かつては「悲劇の主人公」として使い潰される運命だった彼らの瞳には、いまや絶望ではなく、帝国の社員としての「プロ意識」が宿りつつあった。
「――皆様、おはようございます。……お顔の色が随分と良くなりましたわね」
浮遊するバルコニーから、エリザベートが優雅に彼らを見下ろす。
彼女の隣には、鬼教官のごとき威圧感を放つカエルス皇帝が、腕を組んで立っていた。
「さて、本日の研修内容は『因果律の物理的解体』、および『神格存在への債権回収プロトコル』ですわ。……アリスさん、貴方の持っているその聖剣、まだ『神の加護(呪い)』が付着したままですわね?」
「……はい。この剣を振るうたびに、僕の寿命が削られる設定になっています」
「あら。……そんな非効率なエネルギー消費、私の帝国では『労働基準法違反』で即刻却下ですわ。……陛下、見本を見せて差し上げて?」
カエルスが音もなく跳躍し、アリスの前に降り立つ。
彼は漆黒の剣を抜き放つと、アリスの聖剣に刻まれた「神の紋章」を、紙細工のように容易く斬り裂いた。
「――運命という名の鎖は、こうして断つ。……加護などという不透明な契約に頼るな。……これからは、エリザベートが提供する『魔導メンテナンス(福利厚生)』のみを信じろ」
カエルスの一撃により、アリスの聖剣は「寿命を吸う呪い」から解放され、純粋な「高効率魔導兵器」へと新生した。
英雄たちの間に、戦慄にも似た感動が走る。
「いいですか、皆様。……これからの貴方たちの仕事は、魔王を倒すことではありません。……『悲劇の脚本』を無理やり押し付けてくる不当な神々を特定し、彼らの『管理責任』を法的に、そして物理的に追及することですわ」
エリザベートが指を鳴らすと、英雄たちの手元に、黄金に輝く「監査用タブレット」が配布された。
「その端末には、全次元の『因果律の穴』が記録されています。……悲劇が起きようとしている現場に乗り込み、まずは『規約違反の是正勧告』を。……聞き入れない場合は、陛下直伝の技術で、その世界のシステムごと『強制執行』なさいな」
その時、第33世界のモニターが赤く点滅した。
そこには、今まさに「生贄の儀式」で処刑されようとしている無実の聖女の姿が映し出されていた。
「あら。……ちょうどいい『実地訓練』の案件が来ましたわね。……アリスさん、貴方の初仕事ですわ。……あの聖女を救い出し、その世界の神に『営業停止命令書』を叩きつけていらっしゃい」
「……了解しました、ボス。……僕を裏切った『脚本』に、きっちり違約金を支払わせてきます」
かつての弱々しい勇者は、女帝から授かった「最強の就業規則」を胸に、次元の彼方へと跳躍した。
その背中を見送りながら、エリザベートは扇で口元を隠し、満足げに微笑んだ。
「ふふ……。悲劇を売る神々(ライバル)を駆逐し、全宇宙を私の『優良物件』に書き換える。……これぞ、経営者としての最高の愉悦ですわね」
「悲劇の勇者」を「最強の監査官」へ……。
これぞ、エリザベート様による、宇宙規模の「リスキリング(再教育)」ですわ。
ブラックな運命を断ち切り、女帝の右腕として覚醒する英雄たちに痺れていただけましたら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、帝国の「人材育成」を応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は全宇宙の不条理を「法と暴力」で論破し、
「幸せになれない者など一人もいない」という究極の独占市場を築かれることでしょう。
次回、第29話『聖域の倒産:生贄を拒否された神の末路』。
アリスが突きつける「損害賠償請求」に、旧時代の神々が泡を吹いて倒れます。
お楽しみに。




