第26話:委員会の襲来:脚本通りの死なんて、一銭の価値もございませんわ
宇宙の演算中枢『ヴォイド・コア』に、色彩を拒絶するような「白」が溢れ出した。
現れたのは、顔のない仮面を被り、巨大な羽ペンを背負った集団。
多元宇宙の物語が「予定調和」から外れないよう監視する、原典編纂委員会の執行官たちである。
「――特異個体、エリザベート・フォン・ローゼンベルク。貴殿の行いは、全宇宙の『物語価値』を著しく損なわせている。悲劇なき世界に、読者(観測者)の興奮はない。直ちに全並行世界の幸福化を停止し、元の『破滅プロット』へ戻せ」
中心に立つ執行官が、無機質な声を響かせる。
その背後の羽ペンが輝くと、並行世界の一つで、エリザベートの手によって救われたはずの少女が、再び理不尽な事故で命を落としそうになる「修正」が始まろうとしていた。
「……あら。随分と、想像力の欠如した『演出』ですわね」
エリザベートは、黄金の椅子に座ったまま、優雅に脚を組み替えた。
彼女の瞳には、神を裁いた時以上の「軽蔑」が宿っている。
「執行官さん。貴方たちが守ろうとしているその『物語価値』。……監査いたしましたところ、あまりにも低俗。計算式にすらならない『ゴミ』ですわ」
エリザベートが指を鳴らすと、空中に巨大な魔導グラフが展開された。
$$ \text{Narrative ROI} = \frac{\sum (\text{Growth} + \text{Innovation})}{\text{Complexity} \times \text{Tragedy}} $$
「いいですか? 悲劇という安易なスパイスで観測者の気を引くのは、三流の脚本家がやることですわ。……一人の有能な人材を、物語の盛り上がりのために殺す。そのことによる『機会損失』を計算したことがおあり?」
「何……? 機会損失だと?」
「ええ。私が救った第102世界のエリザベートは、今や一国の経済を立て直し、魔導技術を百年分進歩させています。……それに対し、貴方たちが望む『処刑エンド』で得られるのは、一瞬の安いカタルシスのみ。……どちらが宇宙にとって『利益』があるかは明白ですわ」
執行官たちは動揺し、ノイズを走らせる。
エリザベートは、冷酷な微笑を浮かべ、一通の「特許証」を突きつけた。
「さらに、重大な指摘をさせていただきますわね。……全次元において、私の姿、名前、そして『エリザベート・フォン・ローゼンベルク』としての人生。……これら全て、本日をもって私の『独占的商標権』として登録いたしましたわ」
「な……商標権だと!? 物語の登場人物が何を――」
「黙りなさい。……無断で私の名前を使い、悲劇という名の『著しいイメージ毀損』を繰り返してきた貴方たちの行為。……これ、累計の賠償額を計算いたしましたら、貴方たちの『原典』全てを差し押さえても、まだお釣りが来ますの」
エリザベートが再び指を鳴らす。
その瞬間、執行官たちが背負っていた「次元の羽ペン」が、黄金の炎に包まれて消失した。
「……あら、ペンが折れてしまいましたわね。……残念ですが、あいにくこの宇宙の『インク』も『紙』も、全て私の私有財産に切り替わっておりますの。……私の許可なく、勝手な『脚本』を書くことは許しませんわ」
エリザベートは、玉座から立ち上がり、震える執行官たちを見下ろした。
「さあ、委員会の皆様。……これまでの『著作権侵害』および『人格権侵害』。……全次元のインク一滴に至るまで、その身を粉にして働いて返していただきますわ。……まずは、貴方たちの拠点を、私の新しい『物流センター』に改装しましょうか?」
女帝の宣告。
それは、運命の書き手すらも「不当な居座り」として排除する、究極の強制執行であった。
運命の脚本家すらも「無能な演出家」としてリストラする……。
これぞ、エリザベート様による、全宇宙規模の「品質管理」ですわ。
「脚本通り」という言葉が通用しない最強の女帝に痺れていただけましたら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、彼女の「新・物語運営」を応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は全宇宙のバッドエンドを物理的に粉砕し、
「勝利と繁栄」という名の新しい原典を書き上げられることでしょう。
次回、第27話『次元のヘッドハンティング:悲劇の勇者を「派遣社員」へ』。
捨て駒にされた英雄たちを、エリザベート様がホワイトな条件で救い出します。
お楽しみに。




