第25話:新世界のCEO、あるいは運命の再開発
かつて「神」が座していた、宇宙の演算中枢『ヴォイド・コア』。
そこは今、クリスタルの壁に無数のホログラム・モニターが浮かぶ、極めて現代的かつ豪華な「女帝の執務室」へと変貌していた。
エリザベートは、黄金の椅子に深く腰掛け、手元の魔導タブレットで次々と「次元の修正」を承認していく。
「――セレーネ。第412並行世界における『聖女の処刑イベント』、まだ実行待ち(キュー)に残っておりますわね。……即刻キャンセルしなさい。代わりに『全聖職者の給与未払いによるストライキ』を発生させて、教会の資産を国庫へ強制回収。やり直しですわ」
「御意、お嬢様。……既に、あちらの世界の執行官(死神)には、帝国への『出向命令』を出しておきました」
エリザベートは満足げに、極上のアールグレイを口に含んだ。
彼女が「宇宙のCEO」に就任してわずか三日。
全並行世界から「理不尽な不幸」という名のバグが、凄まじい速度で排除され、代わりに「努力が正当に報われる」という健全なガバナンスが敷かれていた。
「ふふ……。神の運営がいかに杜撰だったか、改めてよく分かりますわ。……魔力の分配効率が $12\%$ しかないなんて、経営破綻して当然ですわね」
そこへ、漆黒の外套を翻し、カエルス皇帝が入室してきた。
彼の剣には、まだ「次元のノイズ」を斬った際の発光が残っている。
「エリザベート、少し厄介な連中が現れたぞ。……宇宙の『外側』からだ」
「あら。……私の許可なく、この次元に『入室』しようとする不届き者がいらして?」
カエルスが示したモニターに、不気味なノイズを纏った白装束の集団が映し出された。
彼らは、これまでの「神」とは一線を画す、無機質で圧倒的な圧力を放っている。
「彼らは自らを『原典編纂委員会』と称している。……貴公がこの世界の『脚本』を書き換え、ハッピーエンドを量産していることが、多元宇宙全体の『物語の調和』を乱していると主張しているようだ」
「……物語の調和、ですって?」
エリザベートの瞳が、冷徹な紫水晶の光を放つ。
彼女は優雅に立ち上がり、扇をパチンと閉じると、画面の中の「侵入者」を見下ろした。
「他人の人生を『面白い物語』にするために、悲劇を強要する……。それが彼らの言う『調和』かしら? ……あまりにも傲慢。そして、致命的に『非効率』ですわ」
エリザベートは、空中に巨大な計算式を展開した。
$$ Profit = \sum_{world=1}^{N} (HappyEnd \times Resource) - \text{Interference}(Guardians) $$
「セレーネ。……この『原典編纂委員会』とかいう団体。……彼らが保有する『次元の筆(記述権)』、今すぐ『知的財産権の侵害』で訴えなさい。……それと同時に、彼らの拠点を物理的に特定。……陛下、出番ですわよ」
「ああ。……『物語の終わり』を望む奴らには、私が本当の『終止符』を刻んでやろう」
エリザベートは、次元の壁の向こう側にいる「見えない敵」に向かって、不敵な笑みを浮かべた。
「私の人生を勝手に脚本化した損害、全次元のインク一滴に至るまで、利息を付けて差し押さえさせていただきますわ。……さあ、始めましょうか。宇宙規模の『不当解雇』に対する、大反撃を」
「神」を倒したのは、あくまで序章。
物語はここから、運命の脚本家たちを監査し、
全宇宙の「ハッピーエンド」を私有化する第ニ部へと突入いたします!
エリザベート様の覇道は止まりません。
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次回、第26話『委員会の襲来:脚本通りの死なんて、一銭の価値もございませんわ』。
次元の筆さえもへし折る、女帝の執念をお楽しみに。




