第2話
「これが……ギター?」
「そうだよ。ていうか嶼言、お前あれできるだろ?これならすぐ覚えられるんじゃねえの」
「それは別だって!」
古斗の意見はすっぱりと否定された。
「ギターが弾けたら、少なくとも本土の人たちと話が合うだろ。」
嶼言は窓の外へ、果てしなく続く遠くを見やった。古斗も思わず眉をひそめた。
「音楽好きなのは知ってるって。弾きたいなら貸してやるよ。」
古斗は嶼言の肩を叩いた。
「え?マジで?」
大きく目を見開いた顔を古斗に向ける。確かに、延波島ではこうした楽器に触れる人間はほとんどいない。だが、古斗なら——
「うんうん、夏休みに親父が持って帰ってきたやつなんだ……まあ、夏休みはめちゃくちゃ忙しくて、俺もいじる暇なかったけど。」
「またカニ捕りに行ってたのか?」
古斗が夏休みに忙しいと言えば、 多分、南の蒼島湖までカニ捕りに行っていたということだ。毎回嶼言も誘ってくるのだが、いつも断っていた。嶼言にはあれのどこが面白いのか、まったく理解できなかった。何時間も日差しの下にいても、カニなんて数匹しか見つからないし、それに——
「大きなハサミに囲まれなかったか?」
嶼言は両手でチョキを作り、古斗に意地悪く笑いかけた。
「してねえよ!」
黒歴史を暴かれ、古斗はむっとした。
「……」
「今年はあんまり行ってないんだ。ほとんど家にいた。」
机の上の小さな白い紙の束を掴み、古斗は顔を仰ぐように扇ぎ始めた。
「家に……え??ちょっと待って待って!まさか、ちゃんと勉強しようと決心したとか?」
「お前に敵うわけねえだろ。へへ、実は携帯で遊んでたんだ。」
古斗はまた、手に持った「携帯」とやらをひらひらと揺らした。
「携帯?そんな形してなくないか?」
古斗の携帯は、嶼言の印象にあるものとは大きくかけ離れていた。
「昔の携帯とは違うんだよ、これはスマホ。」
「前に親父が中古の携帯をたくさん持って帰ってきただろ?」
「ああ。」
「それは本土の人たちがスマホに買い替え始めたからなんだよ。」
「へえ、すごいな!」
二人は頭を寄せ合った。古斗は楽しげに嶼言にスマホの様々な機能を見せていく。
古斗が次の機能へ切り替えようとしたとき、教室の入り口から足音が聞こえてきた——一人ではなく、しかも足取りが速い。




