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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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9/13

第九話 これって宣伝?

「今度ね、化粧品屋さんから、商品提供の話きたのよ」


 楽屋で、あたしはノエルに、そう自慢げに報告した。


「え、すごいじゃないですか! 企業案件ってやつですか」


「そう。ついに、あたしも、そういう規模の話が来る女になったってわけ」


「おめでとうございます!」


 あたしは、早速もらった化粧水を使い、その日の夜、映え板に投稿した。


『最近のお気に入り、この化粧水。肌の調子が全然違うの♡』


 コメントは、すぐについた。


『これ企業案件ですよね?』

『提供って書いてないのおかしくないですか』

『まるで隠れて宿題写してるのに、堂々と手上げてる感じ』


「な、何がおかしいんよ! これはあたしの正直な感想やねん!」


『正直な感想にしては、タイミング良すぎません』

『さっき別の投稿で「頂き物」って書いてたのバレてますよ』


「……あ」


 あたしは、思わず自分の過去の投稿を見返した。たしかに、数時間前、別の投稿で「素敵な頂き物」と、うっかり書いてしまっていた。



 翌日、この件が、劇団内でも話題になっていた。


「ヴィクトリアさん、ステマ疑惑で、ちょっとした騒ぎになってましたね」


 ノエルが、心配そうにそう言った。


「まるで、犯行現場に指紋どころか、顔写真付きの名刺置いてきた泥棒やわ」


「例えてる場合じゃないですよ」


 バロウも、呆れた顔で口を挟んできた。


「お前、隠す気あったのか、それ」


「隠す気はあったんです。ただ、宣伝したい気持ちが、隠す気を上回っただけで」


「それ、隠す気なかったって言ってるのと同じだからな」



 その夜、あたしは、開き直って、正直に投稿することにした。


『みなさんの言う通り、企業案件でした。でも肌の調子がいいのは本当』


 コメントは、意外にも、好意的なものが多かった。


『正直に言い直すの偉い』

『開き直り方に清々しさすらある』

『バレた瞬間の反応が一番面白かったです』

『化粧水より、その反応の方が商品として売れそう』


「誰が一番面白い人じゃ! あたしは真面目に商品紹介してんねん!」


『その化粧水、パッケージにヴィクトリアさんの今の顔写真使った方が売れますよ』


「誰の顔が商品になっとんねん!」


『いっそ商品名も「ヴィクトリア水」にしません?』


「勝手に改名すんな!」


『でも売れそう』


「それはその通りやろうけど!」


『企業に謝れwww』


 あたしは、少し不服そうな顔をしながらも、フォロワー数が、いつもより多く増えていることに気づいた。


(まあ、結果的に注目されたなら、それはそれで良しとしとくか)


 あたしは、そう自分を納得させることにした。

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